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魔法人  作者: ケシゴム
一章
32/69

悩み

 ある日の午後、舞たちはいつものように四人で昼食を取っていた。


「舞、どこか調子悪いの? 今日ずっとぼーっとしてるよ?」

「え? ううん、別にそういうわけじゃないよ?」


 その日の舞は、朝からずっと暗い顔をしていた。順子たちは心当たりがあり、舞の口から出るまでは触れないようにしていたが、全く弁当に手を付けない姿には順子も口を開かずにはいられなかった。


「そんなに気にすることないよ舞。妃美ちゃんだって舞がそんなに心配してたら、余計に学校来づらくなるよ?」

「わ、分かってるよ。でもそういうんじゃないの……」


 舞は昨夜、優樹から今起きている連続殺人の犯人が妃美華である可能性を告げられた。そしてそこには昨年起きた事故が起因していることも告げられた。

 それは大嶋君が教えてくれた内容と一致しており、警護が付いていることや自分の命が狙われている可能性よりも大きなショックを与えていた。


 それに対し順子たちは、事件をニュースでは知っていたが詳細は噂程度にしか知らず、舞がいつも以上に暗い表情を見せているのは、妃美華がなかなか学校へ来ないことが原因だと思っていた。


「そうだよ舞。悪いのは全部大嶋君なんだから、別に舞はいつも通りにしてればいいんだよ? そしてさ、それでもどうしても納得がいかないんだったら、妃美ちゃんが学校に来たときにちゃんと伝えればいいんだよ」


 大嶋君から聞いたことは、順子たちに伝えてあった。順子たちもそれを聞いたとき大きなショックを受けたが、彼女たちは既に妃美華に対し強い絆を感じており、いずれ妃美華は自身の力で苦境を克服できると信じていた。


「うん、それは分かってるよ瞳。大嶋君に聞いたのは私だし、妃美ちゃんに“もう一度会ったら”ちゃんと言って謝る」


 瞳の問いに、隠し事はせずきちんと全てを妃美華に伝え謝ると言った舞に、順子たちはやはり舞は頼れるリーダーだと再認識した。すると舞に対する垣根はなくなり、安心させるように話題は明るい方向へ向かう。


「だったらそんなに落ち込まなくても大丈夫だよ舞。元はと言えば大嶋君が勝手に女子の秘密を喋るからいけないんだから」

「そうだよ。なんで男子って勝手に人の秘密喋っちゃうんだろうね? 折角大嶋君カッコいいと思ってたのに」

「あ~、佳代って大嶋君の事好きだったんだ?」

「べ、別にそういうわけじゃないよ!」


 大嶋君は順子たちにも人気があった。今回の件で多少は失望させた面はあるが、それでも大嶋君の話題は順子たちを明るくさせた。それに比べ舞は全く心躍ることなく、食事の手が進むことはなかった。

 

「ねぇ舞? 一体どうしちゃったの? 何か悩みがあるなら聞くよ?」


 いつもなら暗い顔をしていても、場が明るくなると空気を合わせてくれる舞が、今日は疲弊したかのように覇気がない姿に、何か他の原因があるのではないかと思った順子は心配になった。


「ううん。そういうわけじゃないよ」

「ほんとに?」

「うん……ただ、今日は部長のとこに行かなきゃならないから、ちょっと考えてただけ」


 自分の態度のせいで、順子たちが心配そうな顔を見せたことで、舞は咄嗟に辻褄を合わせるように嘘を付いた。


「あ、そうだったね舞。今日は舞、部活休むんだっけ」

「うん。ごめんねみんな」

「気にしなくても大丈夫だよ舞。舞がいなくてもちゃんと練習するし、私たちの方が早く舞に合わせられるようにしなくちゃならないんだから」


 三年生は既に引退し、ブラスバンド部は新体制へと変わっていた。舞たちは部長や副部長などに任命されるようなことはなかったが、来年こそは全国へという意気込みを持ち、四人で日々精進していた。

 そのことを理解する三人は、舞が暗い顔をしているのは、部活を休むことや、怪我をしてしまい大会にも出場できずに引退した部長へ会いに行くことへのストレスで悩んでいたのだと推察した。


「そんなことないよ。順子たちは上手くなってるし、リズム感は瞳の方が良いもん。だから私は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。でも佳代はもう少し肺活量増やした方が良いから、佳代だけはちゃんと練習してね」

「え~私だけ? 高音は私が一番安定してるんだよ?」

「でも音量は一番小さいのは佳代だよ? 佳代走り込み足りないんだよ?」

「そうだ。だから今日はマスクして走ろうか?」

「え~!」

「安心して佳代。今日は坂道ダッシュもさせてあげるから」

「そんなにしたら私明日学校休まなきゃならないじゃん!」


 事情を明かせないだけに、三人が自分を心配する顔は舞には辛かった。そこで少しでも安心させるため冗談を言った。そんな舞の笑顔を見た三人は、自分たちが暗い顔をしては余計に心配させると感じ、自分たちは大丈夫だと応えるように明るく振舞った。


 その時間は舞のストレスを和らげ、舞もまた順子たち三人は掛け替えの無い友であることを再認識した。そしてこの輪に再び妃美華を入れたいと強く願った舞は、事実を受け止めながらも、妃美華ともう一度会い、言葉を交わすことで何か解決策があるのではないかと思うようになっていった。


 ピ~ヨピ~ヨピヨタケノコ~。ピピピヨ、ピヨ、ピピピピヨ~。何とか週刊連載!

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