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魔法人  作者: ケシゴム
一章
22/69

逆転の発想

 ある日の午後。夏休みに入り、午前中で部活が終わった舞は、順子たちとある場所を訪れていた。


「もう一年になるのか……」

「うん……」


 国道沿いに供えられた献花に花を添えた舞たちは、寂しそうに昇る線香の煙を見つめていた。


「もしかしたら、私たちと同じ学校だったかもしれないのに……」

「そうだね……同じブラスバンド部だったかもしれないね……」

「うん……とにかく手を合わせよう?」

「うん」


 ここは去年、飲酒運転をする車が警察から逃走した末、他車を巻き込んで追突事故を起こした場所だった。

 この事故で、追突された車と、巻き込まれた歩行者の合わせて三名が死亡し、二名が重軽傷を負った。その中には舞たちと同じ年の少女も含まれており、その衝撃的な事故に舞たちは供養に訪れていた。


「…………」


 この事件は当時のマスコミを大いに賑わせた。警察は行き過ぎた追跡はしていないと主張していたが、あまりに凄惨な事故にメディアは挙って取り上げ、飲酒運転の罰則が強化されるほど世間を騒がせた。しかしそれもタレントの不祥事や総選挙の前にあっという間に忘れ去られ、今ではごく一部の人間だけが深い傷を負った悲しいものとなっていた。


「よし! じゃあみんな帰ろうか?」

「うん」

 

 特に舞はこの事件に深い衝撃を受けていた。それは同い年の同姓ということもあるが死亡した女子中学生の名が、自分の好きなアニメ”魔導の世界”に登場するキャラクターと同じだったからだ。


「じゃあまた来るね。“リリア”さん」


 面識はなく、アニメとは全く関係ないことくらいは理解している舞だったが、それでもとても他人事とは思えなかった舞は、安らかに眠れるよう祈りを捧げ順子たちと共にその場を去った。




「――ねぇちょっとお兄、何勝手に私の部屋にプラモ飾ってるの? またぶん投げるよ?」

「いやだってさ、もう俺の部屋置くとこ無いんだよ。それにそれ、一番良いやつだからさ、暫く置かしてくれよ?」

「一番良いって何? これほんとぶっ壊すよ?」

「頼むって! 忙しい中必死に作ったんだぞ? 多分売ろうと思えば売れるくらい本気で作ったやつなんだよ! だから頼むよ」

「なら自分の部屋に飾ってよ!」


 あれから舞は、インビジブルの魔性から解放され、以前のような明るさを取り戻していた。それどころか、佐藤との約束を果たす目的ができたことで、以前以上に力強くしっかりとした逞しさを手に入れていた。

 そんな舞だったが、兄の優樹は相も変わらずだった。


「それよりさ、インビジブルの方どうだ? 何か分かった?」

「ううん。まだなんにも」


 優樹は警察に協力するにあたり、舞へ自分がパチンコ屋で遺体を発見した事や、捜査に協力する事を全て伝えていた。それは口裏を合わせるためであったが、妹を守るためでもあった。そしてそれに伴い、優樹は舞へインビジブルの効力を打ち消す新たな魔法陣を発見するよう依頼していた。

 舞もまた、全ては自分の失態から起こった事を知り、出来る限り兄に協力しようとしていた。


「真ん中のこの雷みたいな模様はどうだ? やっぱりどうやっても見えないのか?」

「うん。多分これ、やっぱり催眠とは違うみたい。魔法陣として完成すれば力を得るみたいで、ここだけは見えないようになってるみたい」

「なってるみたいって、お前が作ったんだろ?」

「だから違うって。私は発見しただけ」


 優樹からの依頼で再びインビジブルの研究を始めた舞は、目的を聞いて前回とは違い、インビジブルの性能ではなく、原理を解明することに重点を置いていた。そんな舞であったが、自身で作り上げたのではなく発見したと思っているため、ほとんど何も分からない状態だった。


「でもこの文字はお前が作ったんだろ?」

「うん……まぁ……でもこれ、ルーン文字をいじっただけだから……」

「じゃあこれが何かあんじゃないのか?」

「多分……」


 魔法陣には、舞が独自に作り上げた文字で呪文が描かれていた。


“雨に笑い風に歌う、古に還る水の音。地を行き海を渡り、天にかける虹の橋。此処に廻る息吹の源、死を超え谷を駆ける”


 当初インビジブルは炎をイメージした魔法陣だった。それを敢えて水をテーマにしたことによってインビジブルは発現した。

 舞の中ではこの呪文と独自のルーン文字が大きな役割を果たしていると考えていたのだが、その法則まではいまだに理解できていなかった。


「だからそう思って真逆のっていうか、ゲームとかで弱点になる属性の魔法陣を考えてるんだけど全然ダメ」

「真逆って、見えない物を見えるようにするって事か?」

「ううん。これ元々炎の魔法陣だったから、今度は水とか氷とか」

「う~ん……そもそもその考えが違うんじゃないか?」

「違うって?」

「最初は炎だったかもしれないけど、現にこれ見えなくなってるじゃん?」

「うん」

「だったらもう炎とかじゃなくってさ、相殺し合うって感じにした方が良いんじゃないのか?」

「透明を透明にするって事?」

「う~ん……まぁそんな感じ」

「う~ん……」


 言っている意味は分かる、しかし優樹自身自分で言っていて良く分からなかった。当然舞も優樹が良く分かっていないものを理解できず、二人は首を捻らせた。


「やっぱお兄の言う、フィルターみたいな“風”に考えた方が良いのかな?」

「俺としてはそっちの方がありがたい。眼鏡とかに描いてそれ付けてれば俺だけ見えるみたいな」

「う~ん……」


 優樹のイメージは舞にも伝わっていた。もし魔法陣を通すことでインビジブルを無効にすることができれば、かなりの優位性を保てる。それに見えていれば最悪兄だけでも危険から遠ざけられる。

 優樹が舞を想うのと同じように、舞もまた優樹の安全を守りたかった。


 そんなこんなで答えが出ないまましばらく二人でインビジブルを前に格闘していると、悪い癖でもう飽きだした優樹がふざけ始めた。


「おぉ! これ見ろよ舞。ブルーアイズホワイトドラゴン!」


 真剣に向き合っていた舞が目をやると、優樹はインビジブルの上に絵を描き一人楽しそうにふざけていた。


「も~何やってんのお兄! っていうかどうやってそれ描いたの?」

「え? こうやって手で半分隠して、半分ずつ描いたんだよ。凄いだろ?」

「いや、バカじゃないの? よくそんな面倒くさい事するね?」

「もしかしたらブルーアイズ出てくんじゃないかと思って」

「出てこないよ! それでもし本当に出てきたら違う意味でびっくりするよ! とにかくちゃんとやって」


 魔法陣に関しては全く期待していなかった舞は、特に気にする様子もなくいつもの兄の態度を受け流した。

 そんな舞の態度が余計にやる気を削いだのか、優樹は遂に困らせるような事を言い始める。


「なぁ舞」

「何?」

「折角だからインビジブル、パワーアップさせようぜ?」

「はぁ?」

「パーフェクトインビジブル! あらゆる物を完璧に透明にする完全なるインビジブル!」


 そう言うと優樹は、ヒーローのようにポーズを取った。それを見て舞はまた始まったと思った。


「これ以上凄くしてどうするのよお兄? 本当に犯人捕まえる気あるの?」

「あるさ。でもこれでインビジブル完成ってわけじゃないんだろ?」

「完成っていうか、これそもそもが違う目的で作ったやつだから……でもまぁ、それもありかも……」

「だろ? こういう時は、押してダメなら引いてみろっていう逆転の発想が必要なんだよ」


 ふざけているはずの優樹の言葉だったが、その発想は全くなかったため舞は可能性を感じた。


「あ! そうだ! こういうのどうだ? 魔法陣の上に違う魔法陣を重ねると発動するっていうの! なんか必殺技みたいでカッコ良くね?」

「あ、なんかカッコいい」

「だろ? プラ板みたいな透明な板に描いてさ、それを犯人に重ねるとボーって燃えて倒すってみたいな」

「いやそれ犯人死んじゃうから。逆にそんなことしたらお兄捕まるよ?」

「え? う~ん……じゃあ氷漬けになるとか」

「それも結局死ぬから……まぁでも、なんかイケそう」

「だろだろ?」

「うん。じゃあ新しいの考えてみるから、お兄もう出てって」

「え~。なんかブルーアイズ出てきそうな感じしてたのに?」

「いいからもう出てってよ。あ、それと、そのプラモも持って行ってね」

「え~」


 優樹は相変わらずふざけているだけに過ぎないが、そのカッコ良いイメージと発想は舞に大きなモチベーションを与えた。

 これにより舞は、今までとは発想をがらりと変えて、インビジブルに対抗する新たな魔法陣の創作に入った。


 また投稿が空きます。最近だらけてきたようで、締め切りが無い分プラモデルを作ったり、パチンコへ行ったり、遊戯王を集めてみたりと遊び惚けているのが原因です。ある意味こういう面で素人は楽でいいです。というか投稿しないときPv0!

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