好奇心
「やっぱ……、あっ! 脅かしてごめんね……」
声を出さずに気を付けていたが仮説の立証に思わず漏れた声に驚き、慌てて逃げ出した雀たちを見て舞は申し訳なさそうに言った。
「でもありがとう。これでまた一つ分かっちゃった!」
インビジブルを発見してから、舞は日々熱心に魔法陣の研究を続けていた。
一、魔法陣は約半分の面積が隠れれば効力を失う。
二、魔法陣は細部まで見えなくとも特定のラインが見えていれば目視さえできれば小さくとも効力を発揮する。
三、実体は存在するため、声や衣擦れ等の音は消えない。
四、人間だけでなく魔法陣を目視できる生物なら動物でも効果を発揮する可能性がある。
大まかではあるがインビジブルについてここまで舞は調べ上げていた。
「ん~……やっぱり魔法よりも催眠術に近いのかな~?」
インビジブルを発見した際は大喜びする舞だったが、空を飛んだり野菜を別の物に変換させたりするという魔法を求めていた彼女にとっては、インビジブルは大発見である物のあまり好ましいものでは無かった。
「ん~……」
舞は今まで魔法が存在するのならば、原理は生物が出す微細な電力によるものだと考えていた。しかしインビジブルの研究を重ねていくにつれ、次第に自分の求めていた答えとは違う可能性に気付き始めていた。
「ん~……」
新たな発見には喜びがあった。だが本心としてはあまり受け入れたくない事実だった。
舞の見立てでは、現在インビジブルは魔法というよりは目視した生物の脳に何かしらの作用をもたらし認知させない催眠術というのが正解に近かったからだ。
「ん~……」
沸き上がる光、迸る電撃、巻き起こる風、舞が求める魔法とはもっと神々しく派手だった。そのギャップともし魔法の原理が催眠なら空は飛べないという思いが、透明化する舞を唸らせていた――
それからというもの舞は研究と称し少しずつインビジブルを使い悪戯をするようになり始めた。
地面を啄む雀やカラスに触れてみたり、面倒な母の手伝いを察し隠れてみたりと小さな悪戯を繰り返した。それは全て自宅から僅かな範囲での行動で、可愛い物だった。だがそんな事を繰り返すうちに次第にインビジブルの力に憑りつかれた舞の好奇心は膨れ上がっていった。
「ふぅ~……よし! いくか!」
この日、舞は遂に好奇心に耐え兼ねて深夜の街へと繰り出す決意をした。
研究を重ねた舞は、この日の為に水玉模様のようにインビジブルの魔法陣を施し、全方位からでも姿を透明化できるポンチョを作成していた。
それを羽織った舞はいよいよ夜の世界へと飛び出した。




