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魔法人  作者: ケシゴム
一章
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最強タッグ

「……それにしても、何故こんな場所でお話なされているんですか? 捜査本部はまだ設置が終わってないんですか?」


 正式な協力要請を受け説明が終わると、霧崎が言った。


「あぁそれかい? 車の中なら例え犯人が透明でも直ぐに分かるからね」

「おお! なるほど!」


 坂口が捜査本部長と知り、より緊張していた霧崎だったが、優しい口調の坂口とコミュニケーション上手の優樹が冗談が出るほど穏やかな場を作ってくれたお陰で、今では喋り易い環境が出来ていた。

 ただこれは、優樹と坂口が互いにより多くの情報を引き出すための最初の駆け引きだったとは、霧崎は全く気付いていなかった。

 そこが優樹を不利にさせた。


「二人はこっちにとっては”大きな”切り札だからね。君たちの存在は犯人に知られるわけにはいかないんだよ」

「おお! ありがとう御座います! 精一杯頑張ります!」


 坂口はインビジブルの情報と、優樹が犯人と通じている可能性を知りたかった。一方の優樹も、犯人に関する情報と、警察がどれほどこちらを疑っているかを知りたかった。

 しかし双方初手の探り合いで相手の懐の深さを感じ、かなりの長期戦を覚悟していた。そんな中霧崎という存在はとても大きく、坂口はそこから崩しを掛けるつもりだった。

 

 それを敏感に、というより、元よりこうなるだろうとは察しが付いていた優樹は、これ以上霧崎に余計な事を喋らせないよう、話題を反らしに掛かる。


「でも坂口さん。ここは安全でも捜査本部の方は大丈夫なんですか? 中に入られたらここで得た情報とか盗まれるんじゃないんですか?」

「あぁそれなら”一応”大丈夫だと思う。署の入り口にサーモカメラと金属探知機を設置しておいたから」

「金属探知機ですか?」


 インビジブルを良く知る優樹は、サーモカメラであれば看破できる可能性は感じていた。だがそれは犯人がその対策をしていなければの話だった。それを理解しているかのような坂口の口ぶりには納得した優樹だったが、ほとんど意味をなさないと思われる金属探知機には釈然としなかった。


 この優樹の問いに、今まで口は出さないがうんうんと頷いていた藤原が答える。


「各入口の前に分からないように鉄粉を撒いたんだ。だから犯人が金属を身に着けていなくても、それを踏んでゲートをくぐると、センサーが反応して透明人間の足取りが分かるんだ。もちろんセンサーは反応しても通過者には分からないようにしてある」

 

 これを聞いて、金属探知機を設置したのは藤原だと分かると、ガサツそうに見える藤原も油断できないと優樹は思った。


 上流階級で育ったスマートなエリートが坂口。負けん気の強さで後天的に才能を開花させたのが藤原。優樹が抱いた二人のイメージはまるで高貴な花と雑草という感じだった。そしてそう感じるからこそ、歪と感じた二人の組み合わせは最強のタッグだと身が引き締まった。


 そんな中で唯一イレギュラーな霧崎が優樹を悩ませる。


「おお! さすがです!」

「それほどでもないよ。まぁ予算もあるし、急遽だから今はその場しのぎだけどね」

「そんな事はありませんよ本部長! これなら私が犯人でも近づこうとは思いませんよ!」

「ははは、そうかい?」

「はい!」


 この時優樹は、煙草が吸いたくなるほど落胆していた。


「まぁそれはそうとして。この魔法陣、インビジブルについて何だけど、一つ良いかい?」

「え、えぇ。どうしました?」

「これなんだけど、新垣君に貰った魔法陣から複写を取ろうとしたんだけど、どうしても中心の図形が見えなくて取れないんだよ。悪いけど目視できる図形を作ってもらいたいんだけど頼めるかい?」

「えっ?」


 これには優樹も驚いた。妹の話では魔法陣は約半分隠せば効力を失うと言っていたし、実際確認した時も大凡半分で魔法陣は現れていた。そして魔法陣は一度全形を目視しなければ消えないと思っていただけに頭を捻らせた。

 しかしよくよく考えると、自分が全形を知っているのは、妹に目の前で描いてもらっていたのを見ていたからだと思い出すと、さらに頭を捻らせることになる。


「コピー機で複写は取れても、実際の図形が欲しいんだよ」

「え……でも、それって必要なんですか?」

「もちろん。それを知っておかなきゃ犯人を捕まえたとき困るだろ?」


 妹がきちんと魔法陣にセキュリティを掛けていた事を知った優樹は、例え警察でもインビジブルの全形は知らせたくはなかった。


 そこで優樹は頭を下げてストレートに断る事にした。


「……言いたい事は分かりますが、それはやっぱり教えられません。すみません」


 協力すると言った手前、これがどんなに矛盾した事かは理解していた。しかしそれでも妹の大発見を悪用させるわけにはいかなかった。


 そんな優樹を前にしても、坂口は一切口調を変える事無く問う。


「何故なんだい?」

「もしここでインビジブルの全形を教えれば、必ず漏れます。それはインビジブルを良く知る俺だからこそはっきり言えます。あれは俺から見ても完ぺきで、使い方一つで水素爆弾なんて比じゃないほどの人を殺します。だからそれだけは絶対に教えられません」

「…………」


 坂口も藤原も、優樹がきっぱり信用しないと言った事で、どうこれから情報を引き出すか猛烈に頭をフル回転させていた。その中で唯一霧崎だけが声も出ない程ただただ驚愕していた。


 そんな沈黙はしばらく続くと思われた。


「そうか、分かった。無理を言ってすまないね。じゃあ”今は”これ以上聞かない。じゃあ先ずは今までの犠牲者と思われる人に付いて話すね。藤原君データ出して」

「はい」


 完全に守りに入られてしまっては優樹からこの先情報を引き出すのは難しいと判断した坂口は、先ずは信用を得る手段を選んだ。藤原も優樹から何かを守るという意思を感じた為、空気を切り替える事を得策と判断した。


 これによりほとんど間を置かず再び穏やかな空気へと場は変わるのだが、霧崎だけがしばらく口を尖らせ優樹を見ていた。

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