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魔法人  作者: ケシゴム
一章
14/69

疑い

 黄ばんだ天井、黒ずむ床、くすんだ椅子。壁を覆い尽くす草臥れたキャビネットは空間を圧迫し、さらにそこら中に乱雑に押し込められた書類は、電気を付けていても深夜のような暗さを作り出す。


 第一発見者として事情を聴くため案内された倉庫のような部屋は、優樹が映画やドラマで知る物とは全く違い、刑事より刑事だった。


「それで、新垣さんは何故あの場所に車停めたの?」

「いやだから! 駐車場探してたらたまたま親から電話あって、電話出ようと思ったら丁度後ろから車来てたから邪魔になんないようあそこに停めたんです!」

「わざわざあんな隅っこにね~?」

「刑事さんだって見たでしょ! 今日めっちゃ混んでたでしょ!」


 当初は第一発見者として事情を聴かれていた優樹だったが、時間が経つにつれ透明な遺体を発見したという矛盾点が警察に不信感を抱かせ、既に容疑者として疑われているという事態に陥っていた。


「でもわざわざあんな隅っこに停めなくても、他にもいっぱい場所あったよ?」

「それは、俺はいつも西側か北側にしか車停めてなくて、ぶつけられるの嫌だからいつも端っこの方に停めてたんですよ!」


 遺体を発見したパチンコ屋は、あまり評判は良くなく普段から客は少なかった。もちろん優樹もほとんど勝つことが無い店だったが、人ごみを嫌う優樹には自宅からも近く行きつけだった。そしてジンクスなのか、優樹は”指定席”と勝手に呼ぶ駐車スペースを気に入り、そこにばかり車を停めていた。それが今日に限って繁盛していたのが仇となった。


 この事から、今回遺体を発見した場所に車を停車させたのはたまたまだが、優樹としては矛盾している点は無く、筋は通っていると必死に説明していた。


「端っこね~? 普段はあんなに空いてるのにね~?」


”クソ眼鏡っ!”


 警察の口からはまだ容疑者とは出ていないが、露骨な態度で言葉を返す警官には、さすがの優樹も苛立った。


 優樹自身こうなるとは察しが付いていた。しかし妹の為にも犯人を決して許すことは出来なく、ギリギリの範囲でインビジブルの情報まで提供していた。なのに警官は馬鹿にしたような態度を取り、挙句が犯人と決めつけたかのようにあしらう。そんな優樹であったが、彼を一番苛立たせていたのは親友の霧崎であった。


「本当ですって! なぁ霧崎、俺いつも空いてても端の方に停めるよな?」

「新垣、もう諦めろ。事情が事情だけに、流石に俺もお前の言葉には信用できない」

「何でだよてめー! お前だって第一発見者だろ!」


 霧崎は確かに第一発見者だった。だが同時に警察官でもあった。そして第一発見者とは呼ばれていても、実際優樹が発見してからの合流だった為、どちらかと言えば露骨な態度を取る警官寄りだった。


「確かにそうだが、俺だってお前に呼ばれてから知ったんだぞ? それは既にお前との通話の録音を提出してるから、警察だって知ってる」

「てんめ~!」


 霧崎は職業上、通話での会話は録音する癖があった。


「それでも死亡推定時刻分かってないだろ! そんなもんアリバイにもなんねぇよ!」

「まぁ、それもそうだが……」


 優樹の言っている事には一理あった。だが勤務態度は良好で、署でもかなり良い評判を得ている霧崎だけに、警察としてはそれほど疑いを持っていなかった。また霧崎もやましい事は一切無く、警察の高い捜査力を信用していた。

 

「だがあれを見つけるとなると奇跡に近いぞ?」

「だから、それはインビジブルを知ってたからだよ!」

「インビジブルって言われてもな……」


 この時霧崎は、優樹が殺人を犯すとは思ってはいなかった。だがあの不可思議な現象は”新垣ならあり得る”と思っていた。

 その読みは当たらずとも遠からず優樹が口にしてしまったため、何かしら事件に関与しているという確信があった。


「まぁまぁ落ち着いて新垣さん。そのインビジブルとか何だけど、こちらとしてはやはり信用できないんだよ。何度も言うようですまないが、何かそれを証明する事が出来るかい?」

「い、いや……それは……」


 証明する方法はあった。だがそれをしてしまうといくら上手く隠せてもいずれは妹の存在が露見してしまう。今現在でギリギリの情報を与えている優樹としては、これ以上は限界だった。


「じゃあ、まぁ、悪いけど今日は二人とも泊って行ってくれるかい?」

「えっ!? 泊まるってまだ夕方ですよ!? 何で!?」

「仕方ないでしょう? まだ現場の方から連絡来てないし、そのインビジブルとか言うやつが本当に新垣さんの言った通りか分からないんだから」

「そ、それはそうですけど……でででも、それなら明日でも良くないですか? おお俺、仕事休んで明日も来ますから」


 言葉の意味を察した優樹には最悪の事態だった。

 そんな優樹に霧崎が肩に手を乗せ優しく言う。


「諦めろ新垣。今日は泊りだ」

「やめろ気持ちわりぃ! 誰がてめぇと寝るかよ! 寝るなら一人で泊ってけ!」

「そう言っても仕方ないだろ新垣。ならせめてインビジブルとか言うやつを見せてくれ?」

「…………」

「なら今日は泊りだ」

「分かったよ!」


 妹は可愛い、だけどこのままでは強盗殺人の罪を着せられると悟った優樹は、背に腹は代えられなかった。


「あの、すみません。家に電話させて貰えますか?」

「あぁ構わないよ。ただし電話は署の物を使ってもらうよ?」

「えぇ構いません」

「じゃあ今持って来てもらう必要な物を教えるから、ちょっと待ってて」

「俺別に泊る為に電話するんじゃないんですから! インビジブルを証明するために電話するんです!」


 結局優樹は、この後妹の舞へ助けを求めた。

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