第447話・世界公認カップル誕生
【我々視聴者は説明を要求する!】
【いつから付き合ってたんですか!?】
【マジで恋人だったんだ……、どうりで最近距離が近いなと】
煙が立ち上る森林のド真ん中で、透と四条は横に並ばされていた。
もはや言い逃れは不可能、四条は久しぶりのやらかしを超後悔しつつ、真っ赤な顔で答えた。
「夏の終わり頃に……、お付き合いを始めました……」
「隠してて、すんません…………」
2人揃って頭を下げる。
日本の英雄たちの、まさかのイロコイ話。
”大炎上”というワードが思わず浮かんだが……。
【おめでとうございます!!!】
【すっごいお似合い! 逆に他の人だったら解釈違いだった】
【良いんじゃないですかね、新たな属性追加だ】
予想に反して、コメ欄の反応は大盛況だった。
最悪の場合に備えてコメ欄閉鎖の準備をしていた久里浜は、ホッと一息。
「よかったぁ~、なんとかなったみたい」
「だな、僕らは気を付けよう」
自分たちは絶対にバレぬようにと、お互いに注意しあう坂本と久里浜。
この事実は世界中にワールドニュースとして報道され、並みのハリウッド俳優を超える注目度を集めた。
いかんせん、透と四条はビジュアルが良い上に功績もデカい。
もちろん悔しがるものもいたが、後の街頭インタビューでは。
「本人たちが幸せならそれでオッケーです!!」
っと、心から祝福する声が大多数。
こうして、世界公認カップルとなった透と四条だが……2人の知らぬ間に、”最大の危機”が迫っていた。
◇
「お待ちください四条陸将!! どこへ向かうつもりですか!?」
朝霞駐屯地内で、陸上総隊司令官の四条陸将は歩いていた。
いや、歩くというより地面を踏み砕きながら進んでいた。
普段こそ穏やかだが、強面の顔はまるで般若のようだ。
「新海透3等陸尉に話があってな、悪いがこれは全ての任務に優先される。統幕には適当に言い訳を作っておいてくれ」
「そういうわけにはいきませんよ!! なにも陸将自らダンジョンに赴かなくても……!!」
「俺が自身の目で確かめねばならんのだ、わかったら通せ」
四条陸将は、この後に離陸するダンジョンへの定期便に乗ろうとしていた。
先の本土奇襲でてんてこまいだったが、始末書など今はどうでもいい。
とにかく、彼はダンジョンへ向かおうとして――――
「悪いですが四条陸将、ここから先は通行止めです」
「うん?」
ヘリポートへ出た四条の前に、5人の屈強な自衛官が立ちはだかる。
明らかな阻止行動に、四条が問いかけた。
「なんだ、錠前の指示か?」
「その通りです」
中央で答えたのは、特戦第1中隊第4小隊長のキャスター。
他4名は、緊急で掻き集めた朝霞駐屯の空挺レンジャーたち。
特殊作戦群ではないが、世界屈指の実力者だ。
「貴方をダンジョンへ行かせるわけにはいきません、申し訳ありませんがお引き取りを」
「階級章が見えないか? 命令だ――――どけ」
「お断りします。錠前1佐の権限はご存じでしょう? いくら陸将の貴方でも……上回ることはできません」
「はっ、あの不良め……見ない間に随分と偉くなったようだな。どうしても新海透3尉の元へは行かせんつもりか」
「最後の警告です陸将、お引き取りください。我々は実力行使も許可されておりますが……そんな見えた勝負をしたくはありません」
数秒が経過する。
さすがにこの戦力で脅せば、あの鬼と言われる四条も引き下がるだろう。
キャスターがそんな楽観を胸に抱いた時だ。
――――ゾッ――――
「ッ!!?」
眼前の四条陸将から、衝撃波のような殺意が広がった。
「ガキ共め……、”その程度”の戦力で俺を止めれると思ったのかッ」
四条はあの錠前、真島、秋山を育て上げた偉人にも等しい自衛官。
鬼となった父親に、そのような脅しは効かなかった。




