第184話・隠蔽用クリスタル破壊任務
コミカライズについてですが、まだここでお話できないだけでちゃんと進んでおります。
ただやはり漫画化ということで大きい企画なので、まだ皆様にお見せできるのはもう少し掛かりそうです。
楽しみにお待ちいただけると幸いです
––––第3エリア某所。
寒い雪山の道に展開する形で、四条は1人歩いていた。
周りに他の自衛官の姿はなく、いわゆる単独行動というやつだった。
「はぁっ、ふぅ……」
もうかれこれ3日は駐屯地に帰っていないが、陸上自衛隊にとって5日超えの任務はわりとよくある話。
なので、特段嫌気は差していなかったが……。
「野外炊具から離れての行動……これは心身に来ますね。しかも周囲はわたし1人。こういう時は普通の連隊に入っていたかったとちょっと思ってしまいます」
第1特務小隊の彼女は、現在––––たった1人で偵察活動を行なっていた。
通常ならあり得ないが、配信小隊という異例の枠組みがそうさせていた。
指揮系統が通常の連隊と若干違うため、極少ない確率ながらこうして単独での任務を背負うこともある。
周囲を覆う雪と風の音だけが、さっきから四条の耳に響いていた。
彼女の視界は厚い雪が降り積もり、冷たい白で覆われている。
足元は不安定で、一歩一歩が重く……心も体もすり減っていく感覚に苛まれていた。
やはり東北・北部方面隊の人間は凄いと、改めて感じさせられる。
しかし、彼女は決して抗うことをやめなかった。
そんな中……ふと、風向きが変わるのを感じ取る。
四条は立ち止まり、周囲を慎重に観察した。
その時、遠くに異常な黒い影が動いているのが目に入る。
どうやら、あれが彼女の探していた対象のようだ。
目標を視認した四条は、ひそかに位置を移動し、隠れながら観察。
「見つけた、テオドールさんの言っていた魔法クリスタル……」
彼女は独り声を漏らした。
第3エリアのどこかに巨大な敵拠点があるのだとされていたが、テオドールいわくあちこちに隠したエネルギー体によって隠蔽されているとのこと。
眼前に見える物がまさにそれであり、人間よりずっと大きいサイズのクリスタルが浮かんでいた。
同時に、避けては通れない障害も目に映る。
「グルルルッ……」
クリスタルを取り囲む形で、4体の獣人が立っていた。
いずれも容姿を一言で表すなら、“狼男”と言った方がわかりやすいだろう。
エルフ以外がここにいるのは薄々察していたが、四条は微塵も慌てず銃を握った。
「バレてはいないようですね……、匂いで察知される前にサッサと片付けますか」
20式小銃を構え、ドットサイトの中央に狼男を捉えた。
これがもし勇者の剣で戦えと言われたら、それなりの覚悟が必要だっただろう。
しかし––––
––––ダンダンダンダンッ––––!!
発射された5.56ミリ高速ライフル弾は、狼男の脳天を次々に撃ち抜いていった。
その弾丸に温もりや物語などはなく、ただ事務的に駆除作業が行われた。
護衛部隊の全滅を確認した四条は、次にクリスタルの破壊を行う。
黒くずっしりとした銃を握りながら、四条はクリスタルに接近した。
その表面は、蠢くような光を放ち、獣人たちを魅了していたのだろうか……。
その美しさに心奪われることなく、彼女は任務の遂行に集中していた。
「確かC4がここに……」
クリスタルの前に立つと、四条は小型のプラスチック爆薬を取り出した。
これは特殊部隊や工兵でしか扱えない高性能な爆薬で、小型ながら強力な爆発でダメージを与えることができる。
彼女はそれをクリスタルの基部に設置し、安全距離を確保するために後退した。
「これでおしまいです」
彼女がC4爆薬のスイッチを押すと、衝撃が周囲の空気を震わせた。
一瞬の閃光の後、クリスタルは無数の小片に分裂し、その輝きを失った。
その瞬間、何かが変わったような感覚がした。
空気が澄んでいくのを肌で体感させられる。
クリスタルの持っていた魔力が消え去り、周囲の自然が本来の姿を取り戻していく。
雪の中で、小鳥がさえずる声が聞こえてきたように思えた。
おそらく、これでオーケーのはずだ。
「任務完了、帰還しましょう」
っと言ってみたものの、四条のお腹は正直だった。
––––グゥウ……––––
「ッ…………」
昨日から何も食べていなかったため、さすがにお腹が空いた。
野外炊具がいる場所までは、まだかなり距離がある。
「仕方ありません、敵はもういなそうですし。30分ほど歩いたら食事にしますか……」
その場を離れ、良い感じの広場を見つける。
いつでも撃てるよう、20式を近くに置いてそこに座った。
周囲に敵影が無いことを再度確認し、彼女はバックから戦闘糧食を取り出した。
ようやくの食事……、求めていたご対面に心が安堵する。
これは軍隊用のインスタント食品で、基本的に市販はされていない。
「どれにしましょう……、『さんまピリ辛』。『チキントマト煮』。『豚肉と里芋煮』。ちょっと持って来すぎちゃいましたね」
思わず苦笑。
どれも四条の好物であり、しかし全部は食べ切れない。
食事の配分スケジュールを間違えたなと思った時、背後から透き通るような声が届いた。
「どれも美味しそうですね、四条」
「うわああぁぁあッ!!?」
突然背後から声を掛けられたことで、ご令嬢にあるまじき絶叫を上げる。
振り返れば、確かに1分前には誰もいなかった場所に、1人の少女が立っていた。
「わたしも食べてみたいです、四条!」
いきなり現れた少女は、校章がついた金色のブレザーを身にまとい、清潔感のある白のドレスシャツと締められた紺のネクタイを着用。
そのブレザーの下には、ダンジョンの景色でも映えるタータンチェックのプリーツスカートがあり、膝下まで伸びる濃紺のソックスが整然と並んでいる。
細い太ももは色白で、誰が見てもアイドルのようだと言うだろう。
そんな執行者テオドールが、お腹を空かした表情でこちらを見つめていた。
184話を読んでくださりありがとうございます!
「少しでも続きが読みたい」
「面白かった!」
と思った方は感想(←1番見ててめっちゃ気にしてます)と、いいねでぜひ応援してください!!




