鶴の恩返し
好き勝手に書くシリーズではあるのですが、なんとなくスッキリしないので書き直すかもしれません。
は〜お腹いっぱい。ポテト揚げようかな。でも面倒臭い。と食欲の覚醒を抑える為に多大な努力を強いられる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
と呑気な冒頭で始まりましたが、これを書いている間にも世情は変化し続けております。なんとか乗り切っていきたいものですね。
さて、七話目に取り上げましたのは問題作『鶴の恩返し』です。皆様ご存知の通り、この作品には突っ込みどころが山程ございます。かなり早い段階から書き進めていたのですが、あまりの突っ込みどころの多さに、何度も書き直し現在に至っております。
異類婚姻譚が意外に多い日本の昔話。童話であれば、異種属であるのがバレると、大体そのままお別れです。これが良く目にする外国の話だと、逆に呪いが解けて人間の姿に戻りハッピーエンド! ですが……結婚してから『コイツは昔カエルだった……』ってな感じに、不和の原因になったりしないんですかね。まあどうでもいいですね。
そして今回は『鶴女房』ではなく、爺さん婆さんの『鶴の恩返し』です。尚更どうでも良かったですね。
お話は爺さんが罠にかかった鶴を助けるところから始まります。
――え? 勝手に外していいの? 猟師さんの獲物じゃないの?
そう思われる方もいらっしゃることでしょう。
恐らくお爺さんは、罠を仕掛けた人を知っていたのです。そしてその人は長期に渡り放置したままだったのではないでしょうか。
心配になりますよね。猟師はその日思い出した筈です。一つの罠の存在を。ずっと食べずに置いてあるお菓子。きっと忘れているのだろうと手を出した日に限って「あれ? お菓子は?」とか言い出すんです。いえなんでもないです。
爺さんは大丈夫です。その豊富な経験を生かし、鶴を外した後は自分に出来る限りの偽装工作を施した事でしょう。意外に黒い、いや知恵の回る爺さんです。流石の年の功。
でなければ、爺さんの仕掛けた罠だった。こちらの方が納得いきますね。美味しくない鶴だったのでは。
助けてもらい恩返しの為どうにかして人の姿になる鶴ですが、これはどうにかしたんでしょう! 詳細は後半で触れたいと思います。
次に、家事はどのようにこなしているのか――です。
人の姿をしていても水鳥(?)です。火は苦手にしていてもおかしくありません。かと言って近寄らなければ不審に思われます。それとも水鳥だって「てやんでいチッキショーさみぃんだよ」と思っているのでしょうか。じゃあ更に暖かい地方へ飛んで行くはずです。まさか人の姿をしている時は平気とか? 御伽噺かよ!
御伽噺でしたので、それでいきましょう。
実はここ、猟師よりも巧妙な罠で、追求すると本当に終わらないのです。昨年の五月から一向に進まない原因ですので、得意の割愛によって排除します。
ではどうやって鶴の姿で機織りするのか。
当初は、ここでもゴチャゴチャ言っていたのですが、やはり終わらない事が判明しました。よって大幅に割愛します。
挿絵では羽で織っているように描かれておりますが、嘴です。以上。
端折り過ぎたでしょうか。人の姿からあえて機織りし辛い鳥の姿になったのは、羽根を抜かなくてはならないからか、幻術で姿を偽っていて、機を織る力を使う為に術を解かねばならなかったから。幻術でない理由は後に述べます。
羽根を抜く場合だと「最初に羽根を抜いて置けば良いのでは無いか」と言う疑問が出て参りますが、ここでは鮮度が大事であった! という事にしておきたいと思います。
ええーと、何か裏付けるようなテキトーな事は…………この鶴、抜いた羽根を洗ってません。貧乏ですし、風呂にも入っていないでしょう。汚れは付いている。でも洗わない。
加工せずに使う理由、『鮮度』ですね。抜ける状態にない物を無理やり毟るのです。恐らく目当ては血液です。織り込むための媒体として使われているのではないでしょうか。血が出るかどうかですが、むしろ出るように乱暴に毟ったのでしょう。
酷い話になって参りました。鶴が弱るのも当然です。
最初はふわふわした設定に感じられ『現実ってもんを見してやんよ』と言わんばかりのグリムを見習ってもらいたいと思っておりましたが、こちらも過酷です。
そうして出来上がった反物ですが、私の読んだ物には見事な鶴の模様が織られていたとありました、ような気がします。それはまあ良いです。問題は、織り込んだ羽根がどのような状態になっているのかです。
え? 羽毛を使ったんじゃ無いかって? 羽根と言ったら羽根なのです!! 羽毛も使ったかもしれません。しかしメインは羽根。
反物からワサワサと羽根が飛び出している、これが正解です。
ではそんなモノに需要があるのかと言えば、勿論あります。
リオのカーニバルや宝塚のフィナーレを観て分かる通り、大変華やかで、祝い事や祭り、ハレの日にピッタリです。高額で取引される所からも日常使いで無い事が分かります。高額な日用品の存在など無い! ――え? どっかの紬? 素敵ですね。なんとか人の器? 何枚か欲しいです―― 無い!!
注目を集める事間違いなしのこの衣裳。どんな時に使うのでしょうか。
成人祝いの線も考えられますが、鶴の模様といえばズバリ婚礼衣裳です。
もしかすると血塗られた衣裳を纏った花嫁が存在したのかもしれません。パッと見にはカーニバルな。
大分謎が解けて参りましたね。では最大の謎――何故正体がバレてはいけなかったのか――に迫りたいと思います。
最初に「恩返しにきました。機織り機を貸してください」では駄目だったのでしょうか。
駄目です。鶴は喋れません。幻術ではない理由はこれです。
そう、今更な事を最後に持ってきました。反省しております。
そもそも恩返しの内容に違和感があります。
通常誰かに御礼をしようとするならば『自分に出来る事』から考えそうなものです。
鶴は雑食らしいので、落穂や魚やネズミ等を獲って玄関前に置く、これが本来の姿のはず。
人の姿になって恩を返そうなど、鶴の発想とは思えません。そこに上位者の存在を感じます。
鶴の上位者…………「つる」の上……「ちり」?
つまり塵のように人の目には映らず、しかしあまねく所に存在し、力を集約すれば山となる。山と言えば霊峰不二。
イメージしやすいように、ここではその姿に富士山のゆるキャラを当てておきましょう。様々な種類があるようですが、シンプルに青いプリンに手足が付いたものが説明しやすいですね。より分かりやすく、仮にフジさんと名付けます。
隠れキャラ・フジさん(仮※なんか良い名前ありませんかね)は、口から茄子のヘタが覗き、頭は鷹が発着します。
世迷い言はこのくらいにしておきまして。
フジさん(仮)は逃げ出せて喜ぶ鶴に囁いたのでしょう。お前はあの老人に恩がある。恩を返せ。命を救われたのだから命を掛けて返すべきだと。
私は救われた命は大事にすべきだと思いますが、古い時代の話ですし、受け手も鳥ですので、すんなり受け入れたのではないでしょうか。
正体を話さない、そして命を対価に姿を変える力を貰ったのですね。う〜ん、なんか納得いきませんね。ここには違う結論が入るような……。でも思い付かないのでこのままで。来年に持ち越すのは嫌です。
機織りする際にこんな台詞を言いますよね「決して開けてはなりません」――――どう考えても「絶対に押すなよ」の仲間です。
どうして「開けたら側にはいられなくなるのです」と付け加えられなかったのでしょうか。
ズバリ、それでも開けられるからです。
フジさん(仮)はお見通しです。そうなれば命を落とした上に「私は必要ないのね」と無駄にダメージをくらう事になります。
欲求に勝てず覗いてしまった好奇心旺盛で長生きしそうな老夫婦は、やはり人の仕掛けた罠から勝手に鶴を逃したのかもしれません。約束事を守れない、軽率な人物像が浮かび上がります。
何故そんな夫婦に対して恩を返させたか。これは善行ではあった事と、鶴は本来捕まった時点で命を落とす予定だったからではないでしょうか。
帳尻を合わせる為、そして鶴の命を無駄にしない為にフジさん(仮)ガンバった!
変ですね。フジさん(仮)が、がめつい悪徳商人のようになってしまいました。
直ぐに去るのは優しさです。爺さん婆さんは美しい思い出、あるいは夢のように感じたはず。実際には労働力と資金源を失うというざまぁ要素もありますが、約束を破ったという罪悪感は大幅に減じた事でしょう。
心労少なく逞しく生き抜いたに違いありません。
日本人らしく無駄を抑えた美しいお話と言えるのでは無いでしょうか。
実は鶴の恩返しで一番印象に残っているのは“みそ”です。
挿絵で空っぽの味噌の入れ物を持っていたのですが、それがとても美味しそうだったのです。※中身は入っていないのですが。
ハイジのチーズと白パン。ぐりとぐらのカステラ。道に迷った人に老婦人が提供する、実際には素材の味しかしなさそうだけど温かなシチュー。
食べてみたい……。
これ↑どっかでも書いたような気がします。




