ラプンツェル
王子の変態率の高さに畏れおののきながら柿ピーを食しております。
おののいていても美味しさは変わらないようです。
さてラプンツェルですが、これまた暗い話です。今回も初版グリム童話集を参考にしますので、まー暗いのなんの。
一応4回目にして初めてあらすじを載せますと
長年望んだ子を漸く授かった夫婦。妊娠中に、手出しが禁じられている妖精の庭からラプンツェルをとって食べ、その事が妖精に知られてしまう。産まれた子を引き渡すよう約束させられた。
連れて行かれた子は日を浴び美しく育ち、12歳になると塔に閉じ込められ、毛を垂らして云々。妖精の目を盗んで王子とよろしくやって楽しく過ごし、妊娠が発覚して荒地に放置され、双子を出産。
彼女が放逐された事を知った王子は投身自殺。生き残るも目が無くなる(!)。何年か彷徨い歩き、荒地でラプンツェル達と再会、王子の目は、ラプンツェルの涙で見えるように——というお話です。
とても端的に纏まっていて、実は突っ込みどころの少ないグリム童話ですが、今回はなるべく明るい要素を探して行きたいと思います。
やっぱり一番はアレですよね。タイトルロールの彼女は、全男性憧れの(毛根を持つ)女性と言っても過言ではありません。
魅力はそれだけじゃないんですよ!首の強さも必見です。超ロングな髪の毛の重量と男性一人支えちゃいます。
鍛え上げられたその首筋は、「今日ちょっと暑いよね〜」などとほざきながら髪を纏めて見せつけてやれば、皆さん噛み付きたくなっちゃう事間違いなし!
「え! ダメよそんな事しちゃ。痛いじゃない」という心優しい貴方。ご安心ください。そこは貴方の歯が立つほどヤワじゃありません。
窓の留め金に髪を巻きつけるだけで! たったそれだけで9〜10メートルほどの高さから人を引き上げちゃうのです。
どう考えてもムッキムキです。踏ん張る下半身だって相当なものでしょう。
そして巻きつける留め金がどのようなものかは分かりませんが、まとめて巻き付けるなら薄毛の可能性が高いです。む? 男性憧れの要素がいささか減じてしまいましたか。
美しくも逞しいラプンツェルですが、妖精によって監禁されております。彼女の成長を待ってモノにするつもりだったのでしょう。
明るさが消滅しましたね。
いやまだ負けませんよ。
少なくとも人に近い倫理観があったので、子供の頃は手を出さなかったのでは。
ラプンツェルの心と体を守ろうという姿勢には、愛が感じられます。
それ故に裏切りが許せなかったという……のは書いて無いけど、読めばそうかなと思うのです。グリム、スゲーな。
……ああっ!! そうじゃなかった。私はこの話でホンワカ探しをしたかったのでした。
私なりにどうしたらホンワカ出来るか必死で考えたのですが、そもそも前提に誤りがあったような気がして参りました。
出てくるのが美人と王子、そして妖精が加わって、無意識にロマンチックな展開を期待していたのでは、そんな疑念が生まれたのです。
童話は教訓めいた話が多いと私は思っております。イソップ物語もそうですが、日本の昔話も子供の読み聞かせ良いと耳にしました。子供に伝えたい大切なものが含まれているのでしょう。元々人生の光と闇が織り込まれているのです。
しかし、王子様(美醜は不明)と綺麗なお姫様、この単語の印象はお花畑です。バックに花が散りばめられている図が思い浮かびます。子供向けのアニメや少女漫画の影響でしょうか。※私はどちらも大好きです。絵はキラキラしていても内容は骨太なベルばらは、いつ読んでも名作だと思います。
その為、童話に出てくる彼等にそんなロマンチックな展開を期待していたのではないかと愚考致しました。
まさに愚考!
普通に考えてシンデレラや白雪姫の影響ですよね……。
で、長々と何が言いたかったかというと、『メルヘン』と『ロマンチック』は違うという、当たり前のことを私が分かっていなかった為、この童話にありもしないホンワカを求め、負け続けているのではないか…………あ、負けを認めてしまいました。
例えるならば、ゴブリンはメルヘンになれどもロマンチックにはなり得ない。 ← 例え下手
それならば最初から童話は殺伐としているという前提(単なる事実)の元、ホンワカ探しをすれば、一つくらい見つかるのではないでしょうか。
ホンワカ基準を下げる作戦です。
(この作戦に至るまでの説明の殆どは不要であるという驚愕の真実に、恐れ慄いております)
作戦決行です!
…………
…………
ねえな。
いやいやまだ何かあるはず。
ええっと、ええと、こ、この話って悪役令嬢追放ものに似てると思います。なので、良く見かけるパターンである『追放されるように仕組んだ』を当てはめてみましょう。
窓一つの他には何もない部屋に、自分を監禁する妖精と一生暮らすのは嫌だった事でしょう。
毎日「外出たいな〜、暇だな〜」と思っていたはずです。
暇な人が身一つで出来る事といえば、筋トレですね。
妖精の体重は不明ですが、王子を引き上げる事が出来た説明にもなります。
いえ、その姿を見るまで重量の差に気付かなかったのであれば、妖精も王子と同等の質量を持っていたことに。頻繁に引き上げていれば、更に筋力は増したことでしょう。
荒地でもなんとかやっていけたのは、この筋肉支えられていたから。良し! ボンヤリと明かりが灯りましたね。ここから巻き返します!
ムッキムキにはもう一つ良い事があります。
のちに両想いになるとはいえ、性に無知なラプンツェルに手を出す王子には嫌悪を感じずにはいられませんが、少しは抵抗出来る手段があったかもと考えられる方が精神衛生に良いです。
王子と過ごすうちに、自身を囲う妖精の思惑にも勘付いた事でしょう。監禁妖精の嫁にされそうなラプンツェルは妊娠をもってそこから逃れるのです。
まるで悪者のような妖精ですが、実はお人(?)好しです。
庭のラプンツェルを盗まれても懇願により許し、対価の子供を長く健やかに養育しています。監禁状態になったのは、妖精と人間の生態・文化の違いではないでしょうか。
王子が何メートルもある高い塔から飛び降りても助かったのは、恐らく妖精の助力があったからです。
目は対価として奪ったのでしょう。しかしそれもラプンツェルの涙で回復しています。彼らを許したのですね。
長く共にいたラプンツェルは、勿論妖精の優しさを知っています。
王子の命を助けてくれると分かっていたのです。
しかしいくら優しさを持っていても、監禁するような奴と一緒にいたら、今後何をされるか分からない。長く苦労することになろうとも、どうやら分かり合えないらしい種と暮らすよりも、好きな人間と共にあれる可能性に賭ける——今かかっていたBGMがしっとりした感じのものだったので、いつの間にかしんみり路線に入り込んでいたようです。
これさえあれば何でもできちゃうと断言する男気溢れる人もいる程に必要とされている『元気』。再会後の描写はありませんが、意外に元気のあるらしい二人は結構上手くやっていけたのではないでしょうか。
王子には命懸けで塔から飛び降りる度胸。そして草や根を食べながら泣いてばかりいるくせに、(私の前向き解釈によれば)ラプンツェルを探してさ迷い歩く根性。
ラプンツェルには無謀なれど計画を実行する思い切りの良さと、双子を出産して生き抜く体力があります。
きっと日々を逞しく生きた、そう信じられる、幸せな結末でした。
※主に筋肉の補正効果によって、当方の認識が歪んでいる可能性があります。
書き終えて、あっれ〜? ラプンツェルってどんな話だっけ? と思いながら卵サンドを食しております。
どうやら途中で何かを見失ったようです。




