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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter10 空中公園の隠者
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†chapter10 空中公園の隠者04

 「喧嘩買うなって言ったって、それじゃどうしろっていうんだよ……」

 拓人の目の前には、黒いスウェットを着た六角が腕をだらりと伸ばした状態で立っている。


 「行くぞっ!」

 六角は小さく口を開くと、身体を回転させバックスピンキックを放つ。拓人はそれを避けたのだが、続けざま六角が回転した勢いで繰り出した側宙からの上段蹴りが後頭部に命中してしまった。


 拓人の膝が崩れると、上条が大きな声で訴えた。

 「もうやめてくれ! 俺らは喧嘩しにここに来たわけじゃあれへんねん!」

 六角と飛澤とびさわが顔を見合わせる。

 「では何をしに来たのか聞いてあげましょう」そう言ったのはグレーのジャージを着た飛澤の方だ。


 「俺らはあんたらの代表のファン氏に用があって来たんや」

 それを聞いたところで、六角も飛澤も表情は変わらない。ただその場で腰を低く構えた。

 「もしも僕たちを倒すことが出来たら、あなたたちをファンのところに案内してあげますよ」


 「ほんまか?」

 上条は額の血を手で拭った。どうやら戦うことは避けられないようだ。

 「勿論、二言はありません。なあ六角君?」

 飛澤に振られると六角は低いトーンで答えた。

 「スターダストの実力を見せて貰おう」


 どうやら俺たちが何者なのかは、十分知っているようだ。わかった上で攻撃してくるこいつらの目的は一体何なのだろう?

 しかしそんなことを考えている余裕などなかった。六角と飛澤は一斉に攻撃を仕掛けてきた。


 「どうする? こいつら直接攻撃が効かねえんだろ?」攻撃を防ぎながら拓人が聞く。

 「少し待っとけ、今こいつらの弱点を暴いたる!」

 そうは言ったが、やはり攻撃が激しいため暴露の能力を使うことが出来ない。せめてどこかにデッキブラシのようなハンドル部分の長い道具があれば得意の棒術で攻撃を凌ぐことを出来そうなのだが、生憎そのような道具は近くに見当たらなかった。


 「とにかくフェイントを使うんや! こいつらの能力が発動しているのは一瞬だけやと思う。タイミングさえずらして攻撃すれば恐らくは……」

 六角の拳が上条の頬をよぎる。カウンターでひざ蹴りを繰り出すも、硬化によって防がれてしまう。


 「タイミングをずらすって簡単に言うけどなぁ」

 拓人は飛澤に向かっていくと、殴ると見せかけて前から強い風を吹かせ自らの動きを止めた。更にそのまま後ろに回転すると、飛澤の顔目掛けて裏拳を放った。

 しかしその攻撃は結局読まれてしまっていて飛澤の身体を敢え無く通り抜けると、逆に飛澤の裏拳が目の横に飛んできた。


 「つっ!!」一瞬視界が歪み、慌てて左目を押さえる。

 「こんな運動能力の高い奴らに、どんなフェイントを使えばいいんだ!?」


 「そんなんは、自分で考えろっ!!」

 上条が無責任に言い放ったところで、六角が襲いかかってきた。


 「結局はそれかよっ!」

 それと同時に、拓人が強風に乗って前に突っ込んだ。直線状に居た飛澤は瞬時に透過の能力を使う。身体ごとぶつかっていった拓人が飛澤の身体をすり抜けると、丁度目の前に上条に攻撃を仕掛けようとしている六角の姿があった。

 死角から現れた拓人が六角の顔面を殴りつけた。思いがけない攻撃に硬化の能力を使うことが出来なかった六角は、反りかえる様に地面に倒れた。


 「それや、それ! やっぱり拓人はうちのエースやな!」

 「うるさいっ! もう1人いるんだから真面目に戦え!」

 拓人に言われると、上条は前を向き直した。

 「そうやな」


 飛澤は表情を変えない。いや、むしろ笑っているようにも見える。

 「透過の弱点を暴いてやるよ」

 上条は何度か攻撃を繰り出す。しかし当然普通に殴りかかっただけでは、飛澤に当てることは出来ない。


 攻撃の当たらない上条は、後ろに飛び一度その場を離れた。

 「なあ、何で六角は戦わないんや?」

 上条がそう聞くと、飛澤は少しだけ横に目を反らした。そこには地面の上で胡坐あぐらをかき、不貞腐れた様子で観戦している六角の姿があった。


 「別に喧嘩をしてるわけじゃないからね。六角君はダウンしたからそれでゲームオーバー。後は僕をダウンさせれば君たちの勝ちで良いよ」飛澤は至極爽やかにそう言う。

 「何や、ゲーム感覚かいな? せやけど俺たちがそのルールを守るつもりはないで」

 上条が言うと、飛澤は頬に皺を寄せて「ふふふ」と笑った。

 「勿論いいとも。丁度いいハンディキャップさ」


 「恐るべきチート軍団やな。せやけど、俺らをイージーモードやと思ったら痛い目みるで」

 そう言いながら上条は拓人の元に歩み寄る。

 「暴いたで、透過の弱点」上条は拓人に小声で呟いた。

 「ほんとか?」

 「ああ」そう言うと上条は、その弱点とやらを拓人の耳元で小さく囁く。


 「わかった。それじゃ圭介君がおとりになって、俺が止めを刺すってことで良いな?」

 「それでオッケーや。頼むで」

 上条と拓人は作戦の打ちあわせを終わらせると、上条だけが戦闘態勢を取った。


 「この二人、何か企んでるぞ。気をつけろ」胡坐をかいて座っている六角が口を出す。

 「どんな企みなのか、楽しみですよ」

 飛澤は地面を強く踏みしめると、全身の筋肉を硬く引き締めた。

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