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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter22 決戦のクロスロード
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†chapter22 決戦のクロスロード03

 スクランブル交差点の中央に、1人佇む鳴瀬光国。他のB-SIDEビーサイドメンバーは、それを見守るように後方に下がっている。


 「それじゃあスターダスト側は、誰が出ますかぁ? リーダーの上条くんですかぁ?」

 中央で仕切るファンが、首を大きく傾げて聞いてくる。上条は振り返り、背後にいる仲間の顔を見渡した。

 「いや、うちのエースは拓人や。鳴瀬の相手は山田拓人がする」


 それはチームを組んだ時から決めていたことだ。上条でも雫でもなく、鳴瀬を倒すのは拓人だと。本人もそれは理解しているので、文句も言わず前に歩み出てきた。いつになく堂々としたその後ろ姿。ここ数カ月で、彼もだいぶ成長したように思える。


 「それじゃあ、始めましょうか。この勝負に勝った方が、この街の覇者です!」

 高らかにそう宣言するファン。そして拓人は、目の前にいる鳴瀬を見上げるように睨みつけた。


 「半年前の喧嘩のけりをつけようか」

 「あの花火の時の話か? いいだろう、今度は逃げ出すなよ」

 鳴瀬はポケットに入れていた左手を表に出した。その中には大量のパチンコ玉が握られている。


 鳴瀬光国は、意志の力だけで物体を動かす『サイコキネシス』と呼ばれる能力を持っている。全方位からの攻撃が可能な相手に、拓人はどう戦えばよいか……。

 争いが始まる緊張感で、周りが一気に静まりかえった。キャピタル電力のビルの巨大モニターから流れるクリスマスソングだけが、ビルの谷間に反響している。


 「SHIBUYAシブヤ SCRAMBLEスクランブル……。FACEフェイス OFFオフ!!!」

 開始を告げたファンがその場から離れると、亜種の放つ特殊な波動が交差点を包み込んだ。


 「行くぜ、『風斬り』!!」

 鳴瀬の手の中のパチンコ玉が、一斉に前方に散った。彼の持つ『サイコキネシス』の能力だ。しかしそこから一歩も動かずに、足元から上昇気流を起こす拓人。飛んできた銀色の玉は風の力により、その全てが上空へと舞い上がった。

 「こんな子供騙しが通用するかよ。『鎌鼬かまいたち』!!」


 反撃の狼煙のろしを上げる拓人は、腕を振る勢いで鋭利な風を発生させた。だがその時、上空に散らばっていたパチンコ玉が磁力でくっつくように1つにまとまると、大きな塊となって勢いよく降下してきた。


 「上やっ! 拓人!!」

 上条の言葉の前に、拓人は左方向に避けていた。落下してきた銀色の塊は地面にぶつかる直前にぴたりと止まると、今度はギャラリーの中にいる上条に向かって飛んでくる。


 アカン!! そう思ったが、反射的に目を瞑ってしまう上条。だが、自分に対する被害は特に感じられない。

 瞼を開けてみると、目の前に半透明の壁のようなものが存在していた。横にいる雫が、三浦蓮の『障壁』の能力をコピーし守ってくれたようだ。


 流石にこの場所では近すぎると感じたのか、周りのギャラリーたちがぞろぞろと後退していく。上条たちもそれに合わせ、歩道のあるところまで下がった。激しい戦いになることは間違いないので、この位置でも危険はあるだろうが、雫の隣をキープしておけば大丈夫だろう。仲間って大事だ。


 「当然、こんなもので勝負がつくとは思ってない。全力で戦いたいからポケットの中をスッキリさせただけだ」

 空になった手のひらを見せ、おどけた仕草をする鳴瀬。それに対し拓人は、いらついたように大きく息を吐いた。

 「どんな捨て方だよ。迷惑防止条例違反じゃねぇか!」


 「渋谷の街の電力を遮断して、無許可で花火を打ち上げた連中に言われる筋合いはないな」

 そう言って、あごの髭をさする鳴瀬。これは正論過ぎて、聞いていた上条も耳が痛いところだ。


 「所詮、チンピラ同士の喧嘩だ。せいぜい迷惑が広がらない内に、今日で全てを終わらせてやるよ」

 拓人は体の周りに旋風を巻き起こした。


 「それはこっちの台詞だ。B-SIDEビーサイドは、この街の自警団でもあるからな」

 鳴瀬が目を光らせると、背後に転がっていたネオン付きのいかがわしい看板が宙に浮き上がった。すっかり荒れ果てた渋谷の街には、道路の真ん中にも関わらずあらゆるものが落ちている。


 重力を無視して浮遊している大きな立て看板。鳴瀬が右腕力強く振ると、看板は拓人の足元目掛けて真っすぐに飛んできた。

 ガシャンと地面にぶつかり、粉々に割れるアクリル板。拓人自身は高く空に跳び、その攻撃を避けていた。あれが直撃していたら痛いでは済まされない。


 宙に浮く拓人には目もくれず、壊れた看板に視線を落とす鳴瀬。彼が下ろした腕を真上に振り上げると、骨組みが折れまがってしまった看板が、ボンッと音を立てて空に打ち上がった。


 風を利用して空中で移動する拓人。飛翔する壊れた看板がその後を追いかける。

 鳴瀬はその様子を眺めつつ、腕を水平に払った。壊れた看板は弧を描くように進行方向を変えると、矢のような速度で拓人に向かって飛んでいった。


 「『柳に風』っ!!」

 拓人は風を感知して攻撃を避ける技で、高速で飛んできた看板をかわした。そしてその看板は、勢いそのままに地下鉄入口の屋根に飛んでいく。そこに座っていたのは元夢魔サッキュバスの溝畑と乙村おとむら


 「あっ!!」と声を上げた時には、すでに乙村に看板が直撃していた。


 「グッ……、ケケケケケケケケケッ」

 不気味な笑い声と共に、乙村の体から黒い影が排出される。あれは彼女の持つ『デコイ』という、おとりを犠牲にして攻撃を無効化する能力だ。そういえば、そんな能力持ってたな。


 かなり離れた距離から観戦している我々だが、あまり安全ではないことが示されてしまった今、周りからは戸惑いの声がひそひそと聞こえてきた。

 これは、覚悟の無い奴らは帰れという、鳴瀬の警告なのかもしれない。

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