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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter21 12月のホーリーウォー
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†chapter21 12月のホーリーウォー35

 まことは眉間に皺を寄せ、顔をしかめさせる。特殊警棒による電撃はかなり有効のようだが、それは彼女の怒りの引き金にもなってしまっていた。


 特殊警棒を持った雫の目の前に瞬時に移動したまことは、手元に向かって素早く手刀を放った。雫はさっと右手を後ろに引き、己の武器を必死に守る。

 その間、拓人と上条は左右からまことに襲いかかったが、それぞれ高速で蹴りやパンチを受け、吹き飛ばされてしまった。


 「超人は人を超える存在。ただの人間の亜種とは、比べること自体がナンセンスってわけ」

 落ち着きを取り戻したまことは、目の前の雫に向けて素早い拳を飛ばした。雫の鼻先から微かに血が飛んだが、超反応で後方に跳び退き、直撃は免れることが出来た。


 だが雫の跳び退いたその背後には、B-SIDEビーサイドの岸本が立ち尽くしている。

 「てめー、『黒髪』……」


 すぐに攻撃態勢を取る岸本。いち早くそれに気付いた雫が体を屈めると、俊足で駆けてきたまことのパンチと、『ドーピング』の能力で強化した岸本のパンチが、雫の頭上でぶつかりあった。


 「ぐあっ!!」

 呻き声を上げる岸本。彼はぶつかった拳をゆっくりと下ろし、苦しげに体を前に傾けた。


 「岸本っ! 今は黒髪に構うな。八神を倒すことに集中しろっ!!」

 辻堂の怒声が響く。岸本はしゃがれた声で「……了解」と答えたが、右腕を破壊され戦闘を続けるのは厳しい状態だろう。


 「スピードが違い過ぎるやんけ! どうやって戦ったらええんや!?」

 上条が叫んだ。本来なら戦い方や相手の弱点を調べるのは『暴露』の能力を持つ彼の仕事なのだが、今はそれを完全に放棄してしまっている。超人に弱点など無いということか?


 イラつきの表情を見せるまことがこちらに振り返ると、突然彼女の足元で大きな爆発が起きた。続けて2度3度、爆発が起きると、まことの膝が崩れ地面に手を付けた。爆発を起こしたのはスコーピオンの梶ヶ谷。『チューンナップ』の能力で投げられた強化された爆竹を投げつけたようだ。


 「大した威力じゃないんだけど、あんたの能力が一番うざいかも……」

 一瞬で距離を詰めたまことは、梶ヶ谷の胸倉を掴み、それを強引に頭上に掲げた。


 「うっ……、放しやがれ」

 梶ヶ谷は掴まれながらもベルトのバックルに手をかけた。再び発動する特撮ヒーロー物の変身ベルト。だがまことは、梶ヶ谷の体を片腕で掲げたまま、飛び出すバックルをひらりとかわしてみせた。


 「超人の私が、何度も同じ技喰らうと思ってるの?」

 怒っているのか笑っているのか判断のつきにくい表情を浮かべるまことに対し、襟首を掴まれた状態の梶ヶ谷は、空を見上げ顔を青褪めさせた。それは天から何かが振ってきたからだ。


 「月面落下っ!!」

 空から落ちてきた男はそう叫び、まことの背中にニーキックを喰らわせた。掴んでいた梶ヶ谷ごと地面に突っ伏すまこと。すると今後はそこに、灰色の毛に覆われた亜人が現れ、まことの背中目掛け鋭い爪を突きつけた。


 ガッと音が鳴り響く。

 だがまことは素早く立ち上がりその攻撃を逃れ、灰色の毛の亜人はアスファルトを爪で削っていた。


 「所詮は野良犬ね。お前らが裏切るのは想定内だよ、ボーテックス」まことは言う。


 そこに現れた2人は、VOLTボルト所属、元ボーテックスの頭『月狂げっきょういぬい信悟と、同じくボーテックスの佐伯だった。


 「クーデターだ、會長かいちょう。覚悟して貰う」

 普段は大人しい佐伯だが、今は険しい表情でガルルルルと唸っている。


 「八神……、お前に人を束ねる人徳は無い。VOLTボルトは今日で潰させて貰うぞ!」

 乾がそう宣言すると、元ボーテックスメンバーが一斉になだれ込み、事態は一気に修羅場と化した。


 次々に倒れていく元ボーテックスメンバー。人外の能力を持つ者たちはそれでも何とか喰らいついていたが、それでも時間が過ぎていくと、まことの圧倒的な力の前に次々とひれ伏していった。

 まずは岸本が倒され、そして上条、佐伯、辻堂、乾が次々と倒されていく。


 そして現在残っているのは拓人と雫、それと梶ヶ谷の3人だけ。しかも梶ヶ谷は激しい戦闘のため、すでに虫の息だ。


 「雑魚の相手でも多少は疲れるっていうのに、ほんと面倒臭い連中だわ……」

 肩で息をしながら愚痴をこぼすまこと。やはりあの『超人』の能力は、体力、精神力の負担が激しいのかもしれない。後は残る3人で、どう戦っていけばよいか……?


 激しい息遣いのまことを囲み、拓人、雫、梶ヶ谷が様子を窺っている。


 最初に動いたのは拓人だった。疾風を巻き起こし、まことに詰め寄る。その間に梶ヶ谷が点火した爆竹を投げつけると、まことはその瞬間に姿を消してしまった。梶ヶ谷の強力な爆竹の爆風を利用し、空へと舞い上がる拓人。高所恐怖症のため足の裏がうずいたが、今はそれどころではない。


 真下を確認すると、消えたと思っていたまことは梶ヶ谷の背後から首を絞め、背中に膝蹴りを入れているところだった。下降気流に乗って降下する拓人。


 「山颪やまおろしっ!!」

 それは天空から振り下ろす踵下ろし。だがインパクトの瞬間、まことは紙一重で横に移動し、その攻撃はかわされてしまった。


 「さっき似たような技を使った人がいたから、上空の警戒も怠っていないわ」

 まことは目を光らせて、弾丸のように突っ込んでくる。だが未だ足の裏が疼く拓人は、身動きを取ることが出来ない。


 ボコッと鈍い音が鳴る。

 だがそれはまことの攻撃が拓人に当たったわけではなく、駆けてきた雫がまことの体に飛び蹴りを喰らわせたからだった。


 体勢を崩したまことは、雫の顔を憎悪に満ちた顔で睨みつける。

 「邪魔をするなっ!!」

 言葉も終わらぬ内に跳び込んだまことは、雫にボディーブローを喰らわせた。


 「し、雫っ!!!」

 拓人の悲痛な叫び声が、バスターミナルに響く。


 雫の手からは特殊警棒がこぼれ落ち、重苦しい音を立ててアスファルトを跳ねた。


 拓人は雫の元に跳んでいく。まことは追撃もせずに落ちた特殊警棒を追いかけた。彼女にとっては、あの武器こそが唯一恐れている物なのだ。


 だがアスファルトの上を転がる特殊警棒は、ある男の足元に辿り着いた。それはスコーピオンの梶ヶ谷だった。

 「俺の能力は『チューンナップ』。手にした道具の効力を、飛躍的に向上させることが出来るんだ」


 梶ヶ谷が拾い上げた特殊警棒を掲げた瞬間、まことが血相を変えて突っ込んできた。しかしそれが彼女の失敗だった。梶ヶ谷はその時すでに特殊警棒のスイッチを入れており、『チューンナップ』の能力によって増幅された電流が八方に広がり、夜の落雷のように一瞬だけ眩い光を放った。


 その中央にいた梶ヶ谷は電撃を受け勿論倒れたが、誘蛾灯のように吸い込まれたまことも、体を反らせ大きく痙攣すると、意識を失いその場に倒れてしまった。

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