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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter21 12月のホーリーウォー
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†chapter21 12月のホーリーウォー34

 現在、渋谷駅西口バスロータリー内で戦う意思がある者は、拓人と上条とスコーピオンの梶ヶ谷、それにVOLTボルト會長の八神まことと、今やってきたB-SIDEビーサイドの辻堂と岸本。スコーピオンの東は、まことの攻撃により大きな裂傷を負ってしまったため、梶ヶ谷が仲間のところまで運んでいったところだ。


 4対1だった喧嘩が、今は3対1対2になってしまいそうな雰囲気だ。B-SIDEビーサイドの2人は、この喧嘩に参加するつもりなのか?


 「辻堂……。鳴瀬の腰巾着が私に喧嘩売ってくるなんて、1000年早いと思うけど」

 まことは流し目を送りつつ、くすりと笑った。


 「うちの頭に負けた敗北者が、よくものこのことこの街を歩けたもんだ。俺らB-SIDEビーサイドは、VOLTボルトなんてチーム認めてねぇんだよ。八神……」

 辻堂は首をもたげるように顎を上げ、そう言い下した。一触即発の空気。


 ギャラリーたちも、固唾を飲んで状況を見守っている。もしもここでB-SIDEビーサイドが参戦するとなると、最早何でもありになってしまう。他のVOLTボルトメンバーがなだれ込んで来てもおかしくない。


 「B-SIDEビーサイドは私の代で潰しておくべきだった。ここでスコーピオンとスターダストを潰したら、今度はお前らの番だよ」

 まことがそう言って視線を外すと、『ミノタウロス』の能力を持つ辻堂が、人身牛頭の化け物へと変化した。


 「……今度はない。VOLTボルトはここで解散だからな!」

 頭から生えた角を前に出し、重戦車のように突っ込んでいく辻堂。横から来るそれに対し、まことは正面を向いたまま闘牛士のようにひらりとかわしてみせた。その表情からは何の焦りも感じられない。


 「さっきから、途中参加は認めてないって言ってるんだけど、畜生だから言葉が通じないわけ?」

 まことは辻堂の頭部の角を片手で掴むと、引きずるように一回転させ、そして横に投げ飛ばした。10倍の力を持つまことにとっては、牛人間の体も安物のマネキンを投げ飛ばすこととなんら変わりはない。


 「いいよ、こっからはルール無用の乱戦だから……」


 まことの言葉を皮きりに、再び始まる大喧嘩。

 B-SIDEビーサイドの2人も参戦し、ますます事態は混沌としていく。


 追い風を吹かせ、まことの背後から奇襲を狙う拓人。だが、横から来たB-SIDEビーサイドの岸本が体当たりをかまし、その攻撃は不発に終わった。


 「邪魔だ、どけっ!!」

 拓人が放った素早い蹴りを、岸本は平然とした表情で受け取ってみせた。この男の持つ人外の能力は、『ドーピング』という筋肉増強能力。こいつも単純に戦闘力が上がるタイプだ。


 筋肉が一回り大きくなった岸本が攻撃の構えをとったのだが、その直後、風に乗って走ってきた何者かに鈍器のようなもので頭部を殴られ、意識を失うように倒れてしまった。


 「クリティカルヒット……」

 そう呟いたのは雫だった。彼女は己の武器である特殊警棒で、岸本の頭を殴り飛ばしたのだ。


 「し、雫も参加すんの!?」

 心配する拓人をよそに、雫は特殊警棒を構えまことに向かって掲げる。


 「私の能力で朝比奈さんの『ワンヒットワンダー』を同調し、八神さんを倒す!」

 そう言うと雫は、前に向かって勢いよく駆けていく。まこともそれに気付いたようで、正面から向かい合った。


 特殊警棒を持つ右手を、大きく横に振り被る。そして2人が交差したその瞬間、まことは超人的な速さで移動し、雫の攻撃をかわした。特殊警棒の風を切る音が虚しく響く。


 しかし、雫は引き下がらない。くるりと振り返ると、今一度、特殊警棒を上段から叩き下ろした。だがまことは、先程以上に簡単にその攻撃をかわしてみせる。


「『黒髪』天野雫……。この中では一番厄介な相手かもね。あなたの持つ『同調』の能力で私の『超人』をコピーしてみたら?」

 煽り立てるまこと。だが、感情に乏しい雫は、一切表情を変えない。


「それは無理。あなたの能力は、体への負担が重すぎる」

「……ふふ。よくわかっているわね。『超人』の能力は、強靭な肉体と強い精神力がなければ使いこなすことが出来ないのよ」

 余裕の笑みで答えるまこと。『超人』の能力は負担が大きいらしく、雫では使いこなせないようだ。

 しかし負担があるのは八神まことも同じこと。この戦闘、事態が長引けば戦局はこちら側に有利になるのでは?


 加勢しなくては思い、拓人は風を起こし突っ込んでいく。同じくやってきた上条と共に雫と3人で、まことを猛攻を浴びせた。


 この状況でもなお、まことの方が数枚も上手だ。

 上条は強烈なフックを喰らい弾き飛ばされ、拓人は蹴りを受け地面を転がる。そして雫が振り下ろした特殊警棒を片方の手のひらで受け止めると、まことは左の口角を小さく上げた。


 「甘いわ!」

 そう言ったのは雫の方だ。

 その時、互いに掴み合っている特殊警棒が青白い光を放った。雫の特殊警棒は電流が流れる、いわゆるスタンバトンなのだ。予期せぬ攻撃に、尻もちをつくまこと。


 丁度そこに、起き上がった辻堂が低い体勢からタックルを仕掛けてきた。

 頭部の角で服を引っ掛け、首の力で高く吹き飛ばす。上空に舞い上がったまことは、くるくると空中で回転しバランスを取りながら、美しく地面に着地した。ネコ科の動物のような身体能力。


 「ちっ……。天野雫もそうだけど、一番危険なのはその武器のようね。理解したわ」

 まことは雫のことを睨みつけ、目を怪しく光らせた。

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