†chapter21 12月のホーリーウォー30
辺りに飛び交うMC.BOOの怪光線と、八神マコトの持つ肉食獣の鋭い爪痕。
今、この渋谷西口バスターミナルは、おぞましい戦場と化している。
乱戦の中、拓人は飛ぶ斬撃、『鎌鼬』を放った。
正面に構えるマコトは強靭な爪でその攻撃を弾き、そしてそのまま拓人に襲いかかってきた。だが、背後にいた上条と東からの奇襲を受けると、つんのめるように前に倒されてしまう。
これはチャンス。
倒れるマコトに止めを刺すため、跳びかかろうと膝を曲げる拓人。しかしそれは前にいる上条に体を押さえつけられ、不発に終わった。その直後、頭上を掠めていく荷電粒子砲。跳び上がっていたら直撃を受けるところだった。
あまりにも激しい戦闘で、最早ギャラリーも半分ほどに減ってしまっている中、無表情で見守っていたVOLTの水樹が、とある言葉を口にしてきた。
「何故あのMC.BOOが、我々と手を組む気になったかは分かりますか?」
「ああ? 知らねぇよ、そんなもんっ!!」
梶ヶ谷はポケットから取り出した爆竹に火を点けると、BOOと八神に投げつけた。彼の持つ『チューンナップ』の能力の影響で、通常の数十倍の大きな爆発が起こる。野生に近い2人は、反射的にその場から離れた。
「君に言ったんじゃない。『暴露』の能力を持つ上条くんに聞いたんだ」
そう言って上条に視線を向ける水樹。彼は『プロビデンス』というあらゆる物事を見通す能力を持っている。何か、BOOの弱みでも握っているのだろうか?
「俺に……?」
少し困惑した表情のまま、上条は爆発物に警戒しているBOOの姿に目をやった。そして集中したように、その動きを止める。
「……そうか。そうやったんか。けど、これなら簡単に解決するんやないか?」
何かを悟った様子の上条。梶ヶ谷は期待を込めた目で、彼の表情を窺った。
「何か分かったのか?」
「ああ、BOOのことはこっちで解決する。とりあえず梶ヶ谷たちは、八神の方を頼んでええか?」
「わかった。だが奴の技は命の危険すらある。充分に気をつけろよ!」
そう言い残し、八神に向かい駆けていく梶ヶ谷と東。残った拓人と上条は、手を前に構えるBOOと対峙した。
「おい、MC.BOOお前は藤崎梨々香のファンなんやってな?」
突然の上条の言葉に、驚きと困惑を覚える拓人。BOOが梨々香ちゃんのファンだと?
「あ? こっちは、デビューイベントから応援してるガチ勢なんだよ。にわかの小便小僧が、リリたんの名前を気安く口にするんじゃねぇ! 50%……」
BOOの手のひらの中にエネルギーが溜まっていく。
「けど、もしも俺が梨々香ちゃんの知り合いやったとしたらどうする?」
「ニラレバ好きだが、たられば話は、好きじゃねぇ。75%……」
「もしも俺らと同盟を組んでくれたら、梨々香ちゃんの生写真撮ってきたったんで」
「……嘘つきはインチキプロデューサーの始まり。70%」
何故かパーセンテージが5ポイント下がった。
「嘘やないで。しかもあの魔術師、楠裕太は梨々香ちゃんの弟的な存在なんやで!」
上条がそう言うと、BOOの表情が一変した。今まで見たこともないような鬼のような顔。
「この俺がリリたんのプロフィールを知らないとでも思ってんのか? 彼女に兄弟はいない。そもそも、天使界のアイドルリリたんが、あんな憎たらしいガキと姉弟なわけがないだろうがっ! 95%……」
「いや、違うねん! 2人は同じ施設で育った仲間やから、姉弟的な関係性やって言いたいんや!」
「黙れ、ピンチケ野郎。貴様の発言は万死に値する! チャージ完了、ランクC。行くぜ、荷電粒子砲っ!!」
前に構えたBOOの手のひらから光が溢れる。そして今までとは比べ物にならないほどの巨大な光線が飛びだし、バスターミナルを明るく染め上げた。
すぐに光は消え去ったが、残像が目に焼きつき辺りがチカチカする。
少し慣れてきた目を凝らすと、視線の先に上部が溶けてしまったモヤイ像があった。石をも溶かすその威力。
上条は大丈夫かと確認すると、地面を這うようにして逃げる彼の姿が目に映った。光線で吹き飛んだのか、上半身が裸の状態になってしまったいる。この寒空の下で悲惨な状態だが、命があったのは幸い。
「リリたんを侮辱した罪は重い。俺様の体重よりも……。やはりお前らは、消え去ってしまった方がこの世のためだ」
BOOは再び手を前にかざし、荷電粒子砲の体勢を整えた。




