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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter21 12月のホーリーウォー
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†chapter21 12月のホーリーウォー29

 「グルルルルルルルルルッ」

 男はその姿を徐々に変えていく。

 口からは牙が生え、肌の露出しているところは全て警戒色の体毛で覆われていく。正に虎を二足歩行にしたような外見だ。変身した彼は、周りの恐怖心を煽るように唸り声を上げる。


 「あれが八神透の別人格、八神マコトの能力か……」

 拓人は一歩身を引き、背後の上条に語りかけた。

 「せやな。噂の『ワータイガー』いうやつや」


 マコトは前傾姿勢で腕を軽く広げると、俊足で駆けだし、梶ヶ谷に向かって引き裂くように剛腕を振るった。


 「くっ!!」

 腕に4本の裂傷を負う梶ヶ谷。マコトの体は人間の時の一回り大きくなり、そして両手の爪は小型のナイフのように研ぎ澄まされていた。肉食獣を目の前にし、身震いを覚える拓人。


 「デッカードブラスター!!」

 梶ヶ谷は玩具の銃を掲げると、マコトに向けて何度も引き金を引いた。梶ヶ谷の能力は『チューンナップ』。これを使用すれば、彼の持つ道具の性能が著しく向上する。たとえそれが、玩具の銃だったとしても。


 乾いた銃声と共に、マコトの服が少しだけ赤く滲んだ。だが、あまり効いている様子はない。いや、むしろ怒らせただけかもしれない。


 「この銃じゃ、勝負にならないか……」

 コートの中に手を入れる梶ヶ谷。再びくるマコトの爪攻撃を、梶ヶ谷は取り出した円形の盾でがっちり防いだ。中央に星型が描かれた星条旗を模した盾。あれも多分おもちゃだ。


 「虎狩りだっ!!」

 その場に駆けこんでくる東。ワータイガーの能力を持つマコトに対し、彼は素手で勝負を挑む。しかし東の持つ能力も『激情』という戦闘力強化系。彼は怒ることでアドレナリンを大量に分泌し、自ら興奮状態を起こすことが出来るのだ。


 東の拳がマコトの右脇腹に突き刺さる。だがあまり効いていないのか、マコトはゆっくりと首を動かして東の顔を睨みつけた。


 マコトの持つ大きな爪がきらりと光ると、そのまま彼は大きく腕を振りかぶり東に襲いかかった。

 しかし、それより早く攻撃を仕掛けていた上条が、マコトの左脇腹に六尺棒で突きを喰らわせた。攻撃の途中で手が止まってしまうマコト。


 「おい、魔術師の手下!! お前の相手は俺様だろうがっ!」

 そこへ今度はMC.BOOエムシーブーが飛び込んできた。しかし、何故かマコトの爪による引き裂き攻撃を受けてしまい、BOOブーは転がりながら撤退していった。敵味方入り乱れの滅茶苦茶な乱戦。


 「さっきからどういうつもりだ、八神っ!!」

 怒りを露わにするBOOブー。それに対し八神は、険しく目を尖らせたまま周りにいる全員を威嚇し続けている。人としての理性が、若干失われているかのかもしれない。


 「話が通じねぇのかよ、くそがっ! いいか八神、お前が暴れるのは知ったことじゃないが、こっちの獲物を横取りしたら、今度はテメーの命が無いと思いやがれっ!!」

 BOOブーが大声でそう宣言すると、八神は彼を敵と認識したように強襲してきた。


 その攻撃で両腕を引き裂かれるBOOブー。だが、そんな状況でもしっかりと力を溜めると、前に向かって荷電粒子砲かでんりゅうしほうを放った。直撃を受け、後方に大きく吹き飛ぶマコト。


 「ファックッ!! 何なんだよあいつは……?」

 ぼやくBOOブーに、上条はこっそりと近づいていく。


 「なあ、MC.BOOエムシーブー。ちょっとええか?」

 「何話しかけてきてんだ、魔術師の手下! まだ、喧嘩の最中だろうが!」

 「いや、そうやねんけど……」

 ふと後ろを振り返る上条。BOOブーの攻撃で吹き飛ばされたマコトが、ゆっくりと体を起こしている姿が見える。


 「ここは一度、俺らと同盟を組まへんか? 八神があの調子やったら、落ち着いて喧嘩も出来ひんやろ?」

 「寝言を言うな。俺には全くメリットがねえだろうが。八神が敵でも味方でも俺には全く関係ねえ。こっちの目的は、お前ら魔術師の手下を葬るだけだからな!」


 「そうかもしれへん。けどちょっと待ってくれ。八神がいなくなれば、こっちはあの魔術師を呼んできてもいい。後は煮るなり焼くなり好きにしてかまへんで」

 いきなり裕太のことを売ってしまう上条。それでいいのかと、密かに聞いていた拓人は思う。


 BOOブーは気持ちが揺れ動いているのか、「何?」と言って聞く体勢になっている。裕太には申し訳ないが、これはもしかすると、もしかするのか?


 「な? 一旦手を組めば、お互いウィンウィンやねん。しかも俺らのチーム名はスターダストやから、流星って名前とぴったりマッチするやん。あんたの名前、早乙女流星いうんやろ?」

 上条が言うその言葉を聞き、拓人は「あっ」と声を上げた。それは言ってはいけない禁断の言葉だ。BOOブーは体を強張らせ、ふるふると震えている。


 「おい、魔術師の手下。よくもその名で呼んでくれたな! 俺はその名前で呼ばれてる時が、一番ディスられてる気になるんだよっ!!」


 本名で呼ばれ、一気に怒りを爆発させるBOOブー。それが禁句だと知っていた拓人は、天を仰ぎ深く溜息をついた。

 「交渉は失敗だ……」

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