†chapter21 12月のホーリーウォー28
強大過ぎるMC.BOOの攻撃に、周りのギャラリーはざわめき、逃げだす者も多数いた。流れ弾を食らっただけでも、命の危険があるので仕方は無い。
ふくよかな体型のBOOは、両足を開きアスファルトを強く踏みしめる。
「行け! ランクN、荷電粒子砲っ!」
襲いかかる怪光線を、拓人は瞬発的に跳び引いてかわした。手前で着弾すると、その光線はバチンッと大きな炸裂音を鳴り響かせる。
「何で準備動作なしであの技が撃てるんだ? 前に見た時はもっと撃つのに時間が掛かってただろ?」
バクバクと胸を鼓動させる拓人。ちらりと横を見ると、肩を上がらせている上条の姿があった。彼も上手くBOOの攻撃を避けていたようだ。
「どうも威力を抑えれば、準備動作無しで撃てるみたいやな」
「あれ、威力抑えんの? じゃあ、実際喰らったらあんまり痛くないとかいう話か?」
「いや、流石に痛いやろ……。あっ、痛っ!!」
唐突に痛みを訴える上条。だがその数秒後、拓人の腕にも鈍痛が走った。何の攻撃かと思ったら、スコーピオンの2人と戦う八神がテレキネシスで金属片を四方八方に飛ばしまくっていた。よくよく足元を見ると、ボルトやらナットやらが大量に転げ落ちている。
「おい! 何のつもりだ、八神透っ! こっちにもネジがバンバン飛んできて、痛えだろうが!!」
憤慨するBOO。良く見ると、彼のおでこが六角形に赤くなっていた。運悪く八神の攻撃をもろに被弾してしまったようだ。
「おい。BOOには打撃が通用しないって言ってたけど、顔面は例外なのか?」
拓人が聞くと、上条は大きく首を傾げた。
「顔の脂肪はそれほど厚くないから、もしかしたら通用するかもしれへん」
「だったら、圭介くんも戦闘に参加しろよ! 俺1人じゃ、手に負えねぇから」
「せやなぁ。けど顔面狙うのって有りなん?」
等と会話していたら、2人の間にまた怪光線が飛んできた。辛うじてかわしたものの、指先を僅かにかすってしまった。余裕で爪の先端が溶ける。
「これは喧嘩だぞ? そもそも荷電粒子砲がOKなんだから、顔面くらい余裕でセーフだよっ!」
「正論やな」
気持ちを新たに、再度BOOと向き合う拓人と上条。
「お前に恨みはねぇけど、くたばってくれMC.BOO!」
疾風の速度で突っ込む拓人。
「お前にゃなくても、こっちにはあるぜ恨みが! かかってきやがれ、魔術師の手下っ!」
小さく跳んだ拓人は、堂々と迎え撃つBOOの出っ張った腹の上に足を乗せた。そして階段を上るように、胸、顔と踏んでいくと、最後に頭頂部を蹴って跳び上がり宙返りで回転した後、膝蹴りを顔面に喰らわせた。飛び散るBOOの鼻血。
「くっ、くそがっ!!」
闇雲に腕を振り、出鱈目な攻撃を放つBOO。だが拓人はすぐに退き、その攻撃の範囲外に外れた。蝶のように舞い、蜂のように刺すパターン。
「次は俺やっ!」
六尺棒を回転させ、派手に駆けていく上条。こんな目立つパフォーマンスをしては簡単に避けられるのではないかと思えたが、上条は気にする様子もなく高く跳び上がり、体を反転させながら六尺棒を大きく横に振った。
「喰らえっ! 飛翔転身棍!!」
ゴンッと鈍い音が辺りに響く。上条の振った六尺棒は、見事BOOの額の中心に命中したようだ。ふらふらと揺れた後、巨体が地面に崩れる。
「えっ、倒した!?」
退いていた位置から、小走りで近づく拓人。確かに並の人間なら致命傷を負うような攻撃だったが、BOOの命運は如何に?
「気を失っとるみたいやな……。まさか、こんなクリーンヒットするとは思わんかったわ」
上条は言う。確かに見ると、BOOは倒れたまま唇を少し痙攣させている。生きてはいるようだ。丈夫な体。
「確かに、良くあんなあからさまな攻撃、当てることが出来たよな」
感心して言う拓人に、上条は手を横に振った。
「いや。BOOは拓人に顔面踏まれた時に、目に何かが入ったみたいなんや。多分、良く見えてなかったんちゃうかな?」
「へぇー、そうだったのか。けど変な技名だったな。圭介くんの棒術って、ちゃんと技の名前があるのか?」
「あれは拓人の鎌鼬が羨ましかったから、思わず適当に言ってみただけや」
「何だよそれっ!」
まだ八神がいるのにそんな無駄話をしていたら、急に横にいた上条が後ろに吹き飛んだ。
何事かと思い辺りを確認すると、いつの間にか立っていたBOOが、目を瞑ったまま腕を前に突き出してどっしりと立っていた。早くも回復したようだ。
「どこだ、風斬り小僧……。約束通り、骨まで溶かしてやるぞ」
BOOはそう呟くと、両方の手のひらから無差別に怪光線を放ちだした。
「やばい! BOOの荷電粒子砲が飛んでくるぞっ!!」
大声を上げる拓人。後ろで八神と戦っていた梶ヶ谷と東は、それを聞いて身を伏せた。あの攻撃は避けないと大変なことになる。
「おい、MC.BOO。今度はお前の攻撃がこっちにきてるぞ!」
苛立ちをみせる八神。所詮、本当の仲間ではないので連携が上手くいってないようだ。
「すまん。目に砂が入ってな。もう取れたから大丈夫だ」
目を擦りながら、もう片方の手でサムズアップするBOO。だが、八神の険しい顔は戻らない。
「……おい、風斬り。何でお前が、スコーピオンの2人を助けるんだ?」
何かを察する八神。だがその質問に答える義理は無い。拓人は口を閉じたまま、じっと動きを止める。
「スコーピオンとスターダスト。お前らもしかして結託でもしてんのか?」
八神のその言葉で、バスターミナルが緊張に包まれる。ギャラリーからは「結託? スコーピオンがスターダストと?」などと声が聞こえてきた。
「それが何か問題でもあんのか? 同盟を組んだらいけないなんてルールはないんだろ?」
梶ヶ谷が開き直ったように言うと、八神は急に全身を大きく震わせた。
そして首を大きく上げ夜空を仰ぎ、「くくくくっ」と不気味に笑う。
顎を下ろした次の瞬間、八神の顔が一変していた。目は大きくつり上がり、やぶにらみのように黒目がずれる。拓人と上条は、彼のこの顔を過去に見たことがあった。
「あんたはもう1人の人格、八神マコトやな!」
苦しげに立ち上がった上条がそう指摘すると、八神はまた「くくくっ」と笑った。
「透の野郎、舐められやがって……。こっからは俺が相手になってやる。覚悟しろよ、くそガキ共っ!」




