†chapter21 12月のホーリーウォー27
「結局はこの3チームだけか……。これじゃあ、そうそうに決着がつきそうだな」
八神は辺りに視線を送ると、どこかつまらなそうに言葉を吐き捨てた。
VOLTの代表は八神透と、MC.BOO。彼らの実力はレジェンド級だと聞いているが、向こうはスターダストとスコーピオンが同盟関係を結んだことを恐らく知らないはず。そこを上手く利用すれば、こちらにも勝算は充分にあるだろう。
「とっとと始めよう。お前ら全員血祭りにあげてやる」
スコーピオンの東は、その場にいる全員に対して宣戦布告する。これは恐らくフリだろう。拓人もそれに乗っかり、言葉を返す。
「ああ、やれるもんならやってみやがれ。最後に勝つのはスターダストだ」
八神はその場で振り返り、己の座っていたディレクターズチェアーを豪快に蹴り飛ばした。椅子はカンカンッと音を立てて、ギャラリーのいるところまで転がっていく。
「全員、準備万端のようだな。ここから大喧嘩の始まりだっ!」
その宣言と同時に、バスターミナルを落ちている空き缶や紙屑などの全てのごみが、2メートル程の高さに浮かんだ。八神透の持つ『テレキネシス』の能力だ。
宙に浮くごみ屑が、こちらに向かって次々と飛んでくる。
「子供騙しだっ!!」
拓人は体の周りに旋風を起こす。近づいてきたごみ屑は、全て上空に巻き上げ吹き飛ばしてみせた。その隙にスコーピオンの梶ヶ谷と東が、八神に襲いかかっていく。
そうなるとスターダストが相手するのはMC.BOOということになる……。
当然向こうも、はなから我々を敵視しているので、当然こちらを睨みつけている。
「こうなったらしゃあない。拓人、俺らはMC.BOOを潰しにいくで」
小声で言う上条の言葉に、拓人は小さく頷く。
「ああ、あいつの能力にだけ気をつければいいんだろ」
「荷電粒子砲やな。あれを喰らったらそれでジ・エンドや。けど、あの図体で基礎戦闘力も高いらしいから油断はできんで」
「ちっ、キョージンや大関夏男と同じタイプかよ」
BOOは己の出っ張った腹を手で叩くと、特攻を仕掛けてきた。
「来るでっ!!」
上条は突進してくるBOOひらりと横にかわすと、すれ違いざま手にした六尺棒で相手の胸を強く打った。カウンターで決まる強烈な一撃。
しかしBOOは普通に振り返ると、問答無用に腕をスイングし、上条の体を軽く吹き飛ばした。上条の攻撃がまるで効いてない。
取り乱しているのが伝わってしまったのか、今度は拓人がロックオンされた。これはまずい。
目が合うなり、奴は猪の如く一直線に走ってくる。BOOの名前は伊達じゃない。
拓人は風の勢いで高く跳び上がり攻撃を避けると、そのまま落下して踵落としを喰らわした。頭部は外したが、BOOの右肩に拓人の足がめり込む。
膝を曲げて着地の後、すぐにBOOの顔を見上げると、逆に拓人の顔が青くなった。そこには平然とした顔で立っているBOOの姿がある。やっぱりまるで効いてない。
ブンッという風の音と共に、胸の中心に衝撃を受ける。目にも止まらぬ速さの正拳を喰らった拓人は、そのまま吹き飛びゴロゴロと地面を転がった。
「拓人っ! BOOはえげつない皮下脂肪のせいで打撃がほぼ通用しないみたいや!」
横から声を上げる上条。彼はこの戦闘中に、『暴露』の能力でBOOの攻略法を掴んだようだ。
「じゃあ、どうすればいい。逆に弱点はないのか!?」
「BOOの弱点はピュアや!」
「えっ! ピュア!?」
その素っ頓狂な回答に、拓人だけでなく八神と戦っている梶ヶ谷と東も動きが止まる。
「あいつの心は滅茶苦茶ピュアやねん! そこを逆手に取れば、何か勝てる気がせえへんか?」
「全くしねぇ! 何をどう逆手に取るんだよ!」
そんな無駄なやり取りを制するように、BOOは再び特攻を仕掛けてきた。拓人と上条は左右に跳び、その攻撃をどうにかかわす。
「あかん。打撃が通用しないということは俺はもう役立たずや。あとは拓人が何とかしてくれ」
「丸投げはやめろよ!」
拓人が焦りを感じつつ前に目を向けると、BOOは前傾姿勢で構え、前に向かって片手を突き出していた。これはまさかあの技か?
「チャージ完了、ランクJ。行くぜ、荷電粒子砲、プチョヘンザッ!!」
BOOの手のひらから真っすぐに飛んでくる怪光線。目が眩む神々しさ。拓人と上条は紙一重でそれを避けたのだがその威力は凄まじく、地面にぶつかった時の衝撃で、2人は宙に吹き飛ばされた。上条はそのまま地面に叩きつけられたが、拓人は風の力で上空に留まり体勢を整えた。
「くそっ! だったらこっちも中距離攻撃だ。喰らえ、『鎌鼬』!!」
宙に浮く拓人が両腕を前に振ると、刃物のように鋭利な風がBOOはの全身を斬り刻んだ。頬に出来た複数の傷口から鮮血が垂れる。
これは多少効果があるようだ。
手応えを感じつつ地面に着地すると、不意にBOOが怪光線を放ってきた。頬の横に熱線のようなものがかすり、拓人の顔が一気に青褪める。
「ムカつくんだよ、風斬り小僧。俺の必殺、技は無尽蔵! 喰らったお前の顔、マジ友蔵!!」
よくわからないラップで、ディスりまくってくるBOO。ただ極度の緊張状態で、拓人の耳には全く届いていなかった。
「俺の無慈悲ないかずちで、骨までドロドロに溶かしてやるぜっ!」




