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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter21 12月のホーリーウォー
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†chapter21 12月のホーリーウォー21

 氏家との戦闘の翌日、拓人は上条に呼び出され宇田川町にあるカフェバー、スモーキーに向かっていた。

 すっかり治安が悪くなってしまった昨今、あちこちで争い事が起きているため、ここに辿り着くだけでも大変な労力を必要とする。もう1人での行動は慎んだ方がよさそうだ。


 路地に面している入口は閉ざされているため、人の目を盗み、従業員用の裏口からこっそりと侵入する拓人。

 キッチンを抜けバーカウンターに出たのだが、そこに上条はいなかった。いつもは大体カウンターに座ってるはずなので、おかしいなあと思いつつ客席を覗きこむ。


 するとその奥の丸テーブルに、3人の男が座っているのが見えた。こちらに背中を向けている坊主頭は、うちのリーダーの上条で間違いないのだが、その他2人の人物に大いに問題があった。


 向かって右側に座っている長髪の男のが、『怒髪天どはつてん』東正親まさちか。そしてその左側に座っている黒いロングコートを着た男が、『魔弾まだん』梶ヶ谷鉄二。つまりスコーピオンの副長と総長がその場に揃っていたのだ。


 「ど、どういう状況だ!?」

 一歩後ずさる拓人。その時、カウンターのハイスツールに腰がぶつかり、小さく音を立てた。


 「おお拓人、遅かったやないか。待っとたんやで」

 上条が緊張感のない、だらけた犬のような顔で振り返る。


 「遅かったやないかって、なんやねん。ど、どうしてここにスコーピオンがいるんだよ!」

 逆に拓人は緊張のあまり、関西弁が少し移り、しどろもどろになってしまった。


 「まあ、ええやないか。とりあえず座ろうや」

 空いている隣の椅子の背もたれを、バンバンと叩く上条。拓人は警戒しながらもその丸テーブルにいき、スコーピオンの2人に軽く頭を下げ席に着いた。


 「『風斬り』くんには何も話してないのか?」梶ヶ谷が上条に質問する。

 「ああ、拓人は昨日色々あって大変やろうから黙っといたんや。そうや、昨日は鬼退治ご苦労さん」思いだしたかのように労いの言葉をかける上条。


 「うん。で、これはどういうことなんだ?」

 拓人のその質問には、にこにこと笑みを浮かべる東が答えた。


 「同盟だよ、山田くん」

 「同盟?」

 その言葉を聞いた拓人は、東と梶ヶ谷の顔を交互に見回した。


 「スコーピオンとスターダストで一時的に同盟を組んで、共にVOLTボルトを打ち倒そうって話だ。まあ、そっちがリーダーの独断で言ってるとは思わなかったがな」

 梶ヶ谷は自慢の愛銃を片手に持ち、眺めながらそう答える。あれは某SF映画に登場する拳銃のレプリカ。つまりは玩具の銃だが、『チューンナップ』の能力を持つ彼が使えばそれが強力な武器に変化するのだ。


 「俺の独断ではないで。ちゃんとみくるちゃんと相談したし。しかしまあ、拓人はスコーピオンに友達おるから大丈夫やんな?」

 「だから、犬塚と蛭川は友達じゃねえって、何回言ったらわかるんだよ!」

 上条の問いかけを、面倒臭そうに返す拓人。ただそれを見ていた梶ヶ谷は、頬を緩ませて失笑した。


 「成程。うちの犬塚と蛭川にも今みたいなこと聞いてみたんだが、やっぱり風斬りくんと同じような返事をしていたよ。よっぽど仲がいいんだな」

 お互いに友達だと認めないことが、かえって仲が良いことだと認識されてしまう理不尽。喧嘩するほど仲が良いとかいう話では断じてないのだが。


 「逆説的にとらえるなよ。本当に仲悪いんだからな!」

 「わかった、わかった。しかし今回の同盟の件は、お前らの仲が良かろうが悪かろうがあまり関係はない。飽くまで八神のことが倒せるか倒せないかだ」

 梶ヶ谷がそう言うと、隣の東が同意するように小さく頷いた。


 「八神は人格の変化に合わせて、使う能力も変えてくるって話だからな。戦うとなると、かなり厄介な相手だよ」

 東の言うその話は、昨日拓人が掴んだばかりの情報である。死ぬ思いをしてようやく手に入れた情報だが、実は有名な話なのか?


 「その八神の能力の話って、昔から渋谷にいる奴らは皆知ってる話なの?」

 「いいや、それはない。八神が多重人格者なのは有名な話だけど、それに合わせて能力が変わるってのを知ってるのはごく一部だと思う」

 人の良い笑顔を振りまきながら東は言ってくる。『激情』の能力を使う東は戦闘時、人が変わったように目を吊り上がらせ、怒りの感情を爆発させているが、普段は人が変わったように笑顔を保っている。この男はこの男で、二重人格と言えるだろう。


 「じゃあ2人は、実際に八神が『ワータイガー』の能力を使ってるところって見たことないの?」

 拓人がそう口にすると、他の3人が一斉にこちらに目を向けた。


 「ワータイガーだと?」

 「それがもう一つの能力なのか?」

 目を見張らせる梶ヶ谷と東。そして上条はというと、少し怒っているかのような顔でこちらに視線を向ける。言ったらまずいことだったか?


 「そうや。これが俺らの知っている情報や。だけどそれだけやない。VOLTボルトに関してはもう一つ大事な情報があるんやで……」

 勿体ぶった言い方をする上条。梶ヶ谷と東が首を前に乗りだすと、上条は仏像のような半眼で拓人の顔を一睨みした。

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