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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter21 12月のホーリーウォー
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†chapter21 12月のホーリーウォー07

 突如として現れたMC.BOOエムシーブーに対し、騒然とする若者たち。詳しくはわからないが、あの巨漢は皆が一目置く存在らしい。


 「あっ、BOOブーさんじゃないですか!? もう退院できたんすか?」

 キャップ男とタオル巻き男が駆け寄る。BOOブーはマッドクルーのリーダー的存在でもあるのだ。


 「イェイ! 一陽来復いちようらいふく、劇的回復、素敵な大福!」

 そう歌いながら湯気の出ている白いものを口にするBOOブー。けどそれは大福じゃなくてコンビニで売ってる肉まんか何かだろ?


 「あー、ちょっと何言ってるか意味わかんないっすけど、とにかく骨折は治ったんすね」

 ほっと息をつくキャップ男。いや、お前もわかんないのかよ!


 「おい、BOOブー! でけー図体でよくものこのこ出てこれたな。まさかこの期に及んでラブ&ピースだから喧嘩はしねえなんて言わねぇよな!」

 VOLTボルトのメンバーと思われる奴が果敢にも絡んでくる。対するBOOブーは、肩でリズムを刻むと、再びラップで対抗してきた。


 「喧嘩してる奴、まじダサい! 俺、汗臭い! デブ&ピースとかディスってくる奴、まじポンコツ! 俺のとんこつ、ガチで復活! 行くぜ、婚活!」

 腕を大きく振って、自分のターンが終了したことを示すBOOブー。やっぱりダサいラップだったが、キャップ男は1人「フーッ!!」と盛りあがってみせた。場違いな空気感。


 最初に煽ったVOLTボルトのメンバーは腹ただしげに歩み寄ろうとしたが、そのすぐ背後にいたロングコートの男がその行動を制した。

 「やめなさい。あまりにも相手が悪すぎる」


 「……しかし」

 聞きわけの悪そうなそのVOLTボルトのメンバーは今にも跳びかかりそうな勢いだったが、ロングコートの男は戒めるように強くメンバーの肩を引いた。

 「彼と喧嘩になれば殺されますよ。ここにいる全員が……」


 ドスの利かせた、これ以上はないであろうという程の殺し文句。このロングコートの男の迫力も大したものだ。恐らく幹部クラスなのだろう。


 「YO! 水樹みずき! 人を犯罪者みたいに言うんじゃねぇ! 俺がこの場の人間を殺すかどうか、お前の能力で確かめてみたらどうだ。この能なし!」

 リズムよく言葉を刻んではいるのだが、全く韻は踏めていないMC.BOOエムシーブー。結構いい加減だ。


 「MC.BOOエムシーブーのおかげで喧嘩が収まりそうやな」

 上条がやれやれといった様子で近づいてくる。

 「ちなみにあのコートの男は何者だ?」


 「あれは水樹尚之みずきなおゆき言う奴で、元Trueトゥルーのリーダーだった男や。今はVOLTボルトの親衛隊長で『プロビデンス』いう能力を持っとる」

 「何それ? どんな能力?」


 「真実を見通す目やな。説明するのは難しいけど、常人には見えない色んな事があの男には見えるらしいで」

 上条は言う。『暴露』の能力の上位互換といったところだろうか? 心なしか上条の顔も面白くなさそうな表情をしているように見てとれる。


 「つーわけで、俺は喧嘩はしねえぞ。アーユーオーケー? ユーアーホーケー!」

 BOOブーがポーズを決めながら水樹にそう問いかける。下らない発言に辺りは静まり返ったが、その直後、遠くから耳障りな振動音が聞こえてきた。


 徐々に近づいてくる振動音に、若者たちは上空を見上げる。そこにあったのは、本当にありえない景色だった。真冬の空に突然おびただしい数のイナゴが群れを成して飛び交い始める。


 「こ、これは……。またあいつが渋谷に来たのか?」

 拓人の脳裏に『油坊主』のメンバーが思い浮かぶ。その中の1人が虫を操る能力を持っていたからだ。


 しかし横にいる上条はその意見を否定してくる。

 「いや、これは油坊主ちゃうぞ」


 「違うって、じゃあ誰がこんなこと出来るんだよ」

 拓人が聞くと上条は顔をしかめ、坊主頭をぽりぽりと掻いた。


 「困ったもんやで。あいつ最悪のタイミングで来よったわ」

 上条が今一度首を上げるので、拓人も合わせて空を見上げた。怪しく旋回する無限にも思える虫たちが、薄曇りの空を夜のような漆黒に染め上げていた。

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