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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter21 12月のホーリーウォー
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†chapter21 12月のホーリーウォー06

 ビルの正面エントランスから堂々と歩み出る拓人と上条、それとマッドクルーの2人。目の前の道路ではスコーピオンとVOLTボルトの大乱闘が繰り広げられている。


 「さて、どうしたものかな?」

 下りては来たものの、この状況で拓人たちに目をくれる者などいないようだった。


 道路中央で激しく争うスコーピオン副長の東と、VOLTボルト副長のいぬい。大勢が戦う中、この2人は格の違う戦闘を見せつけているが、その周りを駆けまわる獣のような男もまた、油断ならぬ戦闘力を見せつけている。


 「ちょっ、待てっ!」

 男が叫ぶ。しかしそんな男の背後に、突然灰色の人影が跳びかかる。

 襲われた男は「ギャッ!」と短く声を上げ、その場に崩れた。灰色の人影、それは人狼。人狼は爪を引っ込めると、ゆっくりと視線をこちらに動かした。


 「屋上にいたのはあなたたちでしたか……」

 狼化した大きな口で彼は呟く。『人狼』の能力といえば、知った顔。VOLTボルト佐伯さえきという男だ。


 「高みの見物でもしようかと思ってたら、見つかっちまったよ」

 目が合ってしまったので、仕方なく言葉を返す拓人。普段は穏やかな顔をしている佐伯だが、今は只ならぬ殺気を惜しげもなく放っている。そういえば佐伯は以前、能力を使うと性格が変わる性質だと言っていた。亜人系の亜種は確かにそういうところがある。


 「見物だけではつまらないでしょう。折角ですから私が相手になりますよ」再び爪を剥きだしにする佐伯。

 「へへ。そりゃどうもっ!!」

 言うや否や真っすぐに跳び、拳を叩きつけた。幾度も幾度も。しかし佐伯は華麗な腕捌きでその拳のほとんどを防いでいた。


 人狼の顔が少しだけほころぶ。余裕の笑みと言うことか?

 「こっからは本気で行くぞ!」

 「それは楽しみですね」

 「……楽しめる保証はないけどな」

 くそっ。その舐めた態度を後悔させてやる。


 拓人の周りで枯れ葉が宙を舞い上がる。発生したつむじ風を利用して、拓人は高速の回し蹴りを放った。佐伯は素早く身を屈め間一髪その攻撃をかわすと、そこから拓人の喉元目掛けて跳びかかってきた。


 赤い血が微かに飛び散る。佐伯の鋭い爪が拓人の喉を捕らえたが、辛うじて身をねじっていたので首の皮一枚裂かれただけで済んだようだ。


 再び攻撃に転じる拓人。しかし佐伯の前に、不意に大柄の男が立ち塞がってきた。

 「どけっ!! 痛い目にあうぞ!」

 そう叫んだが、男は動かない。構わずに回し蹴りを喰らわしたのだが、厚手のマットレスでも蹴ったかのように手ごたえが薄い。


 「お前は……」

 額に刻み込まれた深いパグのような皺と、異常に膨れ上がった厚い胸板。よく見るとその人物は、以前渋谷駅前のガード下で会ったVOLTボルトの室井という男だった。『当て身喰い』という打撃を吸収する能力の持ち主だ。


 「室井さん、邪魔立ては許しませんよ」背後から目を光らせる佐伯。

 「そう睨むなよ。これは乱闘だ。『風斬り』の首は俺が貰う!」

 室井の胸板が大きく波打つ。これは反撃の狼煙のろし


 「リリースッ!!」

 室井の声と共に、大きな炸裂音が頬を掠めた。無意識に胸の前で腕を交差させると、その上に何かがぶつかるような衝撃が走る。そのまま背後に吹き飛ぶ拓人。


 「これが俺様のカウンター攻撃よ」

 眉間の皺を深く刻み、こちらを見下してくる室井。地に膝をつく拓人は、腕の痛みを堪えて睨み返した。大丈夫。骨までは折れてない。


 「室井には物理攻撃は効かへんぞ。それこそヒナ先輩の『ワンヒットワンダー』でもなけりゃ!」 

 離れたところで何者かと戦っている上条がアドバイスを送ってくる。物理攻撃が効かないというのなら奥の手を使うしかない。


 立ち上がった拓人は、右腕を左方向に振りかぶる。そしてそれを横一線に薙ぎ払おうとしたのだが、突然、辺りが謎の緊迫感に包まれ、拓人はその攻撃を留まった。


 ざわつく一同。皆が一斉にその緊迫感の元に振り返ると、そこにはやたらと恰幅のいいもみあげ太目の大男が腕を組んで立っていた。


 「YO、YO、YO! ここは天下の往来、喧嘩オーライ! チャンス到来、俺はいつでもソーライト!」

 心地よく刻まれるダサめのラップ。周りの呟く声からその大男の名前を知ることができた。


 拓人は痛む腕を押さえ、真っすぐに彼を見据えた。

 「あいつが噂のMC.BOOエムシーブーか……」

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