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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter20 人の消えた渋谷
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†chapter20 人の消えた渋谷29

 財前の左肩に描かれた吉祥天女きっしょうてんにょの彫り物を見て、上条は口の中に溜まっていた唾液を音を立てて飲み込んだ。

 「いよいよ財前も本気みたいや。けど俺は雫ちゃんのことを信じるで!」


 そう言葉を発した瞬間、財前は再び姿を消し雫に攻撃を仕掛けてきた。ぶつかり合う不快な金属音。能力で劣る雫もその速度に必死に喰らいつき、財前の日本刀を何とか凌いでいる。


 何故雫は、殺し屋相手に臆することなく戦うことができるのか? いくら感情に乏しいとはいえ、恐怖心はそうそう拭えきれないはずだ。


 心配そうに見つめる上条に対し、立ち止まった雫は肩で息をしながら財前の能力を説明しだした。

 「正直、財前さんの能力はそんなに恐れるものじゃないと思う。『刹那せつな』で時間を止めたとしても、止まっている間は全ての物体が硬直してしまって刀で斬ろうにも、特殊警棒で叩こうにも全部弾かれてしまうから」


 「えっ、そうなん!?」

 上条は『暴露』の能力で改めて財前の『刹那』の能力を調べると、どうも雫の言っている通りだということがわかった。では、時間を止められているうちに刀で真っ二つにされるという事態にはならないようだ。


 そしてついでに調べたのだが、財前の『刹那』はFCの『インクリーズ』によって50秒間に2秒だけ時間が止められたのが、50秒間に3秒止められるように変化したようだ。


 ではその強化された財前に対し、雫はどうやって対抗しているのか?

 雫も勿論、『インクリーズ』によって『同調』の力が増幅しているわけだが、彼女はその恩恵によって周りにいる複数の亜種の能力と同時に共感しそれを使いこなすことによって、財前と張り合っていたのだ。


 「『同調』で私の能力を解析できるのはわかったけど、私の動きについてこれるのはどういう道理? あなたの『刹那』には『インクリーズ』の増幅能力が適用されないはず……」

 再び攻撃を開始しながら、財前は苦言を漏らした。雫は財前の『刹那』を使いつつ、拓人の『疾風』も同時に使い戦っていたのだ。しかも彼女はそれだけではない。高く跳び上がり攻撃をかわしたかと思ったら、そのまま空中に留まり浮かんだままぴたりと静止した。これは逆月の持つ『空中浮遊』の能力。


 「何の手品っ!? そんなことをして何か意味でもあるというの!?」

 財前は空中に留まる雫に向かって、素早く日本刀を斬り上げた。雫の体が斜めに真っ二つになる。

 いや、なっているはずだった。しかし当の雫は宙に浮いたまま、何の変化も見当たらない。


 「ど、どういうこと?」

 目を泳がせる財前に対し、雫は疲れを見せながらもゆっくりと床に舞い降り、戦闘態勢をとった。

 「そろそろ勝負を決めるから!」


 雫は『疾風』の能力を使って風を起こし地面を蹴った。勢いよく前に飛び出す雫を見て、財前はすぐに時間を止める。その間、3秒。後の先を取る雫に対し、財前は後退し2秒分の距離を確保する。そして時間が戻り、いつの間にか距離を取られた雫も時間を止め、2秒間で一気に距離を詰めた。

 風と共に駆ける雫は、その僅かの間に財前の背後を取った。2秒が経過し特殊警棒を振り下ろしたが、財前は背中に目でもあるかのように頭上に日本刀を掲げ、その攻撃を防いだ。


 「久々のスリルね。面白いわ」

 特殊警棒を弾きながら振り返り、日本刀を構える財前。雫も体勢を直し、特殊警棒を構えた。

 「だったらもっと面白くしてみる?」


 身をひるがえし、派手に特殊警棒を振る雫。そしてそれが財前の日本刀にぶつかった瞬間、眩しい光と共に鞭で叩いたような痛々しい音がフロアに響いた。周りで見ていた者たちも一様に驚いている。


「……成程、あれはスタンバトンやったんか」

 上条の持つ『暴露』の能力がそう教えてくれる。鼎武人ディンウーレンに渡されたその武骨な特殊警棒は、実はスタンガンのように電流が流れるスタンバトンという護身具だったのだ。


 だが日本刀越しに電流を喰らったはずの財前は、平然とした顔で雫を睨みつけている。これはどういうことなのか?


 「何で電撃が効かないの?」

 腑に落ちないといった表情で雫が口を開く。手ごたえを感じていたのは他ならぬ彼女自身。当然だ。


 「それがあなたの奥の手? その特殊警棒が電流が流れるタイプだということは、一目見ただけでわかっていたわ。私のような仕事をしていれば、そんな武器の相手もすることもあるからね」

 日本刀を振り、雫の首元に向ける財前。


 「つまり、その日本刀は電流対策がしてあるということ?」

 「まあ、そういうことね……」

 財前は日本刀を片手に持ち変え、そして腕を下げた。指先が微かに痙攣している。何でもないような顔をしているが、多少の痺れは感じているみたいだ。


 「いや、その攻撃は効いとるで。柄に絶縁体が使われとっても、全ての電流を防ぎきることは難しいみたいや!」

 大声でそうアドバイスを送ったのだが、何故か上条は雫と財前の両方から睨まれてしまった。雫からは手を出すなと言われていたが、口出しも余計なお世話だったようだ。 


 上条が申し訳なさそうに委縮すると、雫は軽くはにかみ財前の顔を見据えた。

 「けど、絶縁体とか関係ない。直接攻撃を当てれば良いだけだから」

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