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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter20 人の消えた渋谷
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†chapter20 人の消えた渋谷26

 「あらあら、あなたは確か弱小ガールズモッブのリーダーだったわね。せいぜいウチのたちに負けないようにしなさい」

 嘲笑を含ませる松岡。言われた瀬戸口は首に巻いていた豹柄のストールを解き、それを松岡に向かって思い切り投げつけた。

 「ALICEアリスよ、アリスッ! ババアは脳も劣化してるから、名前1つ覚えられないってこと?」


 目の前にいる、2人の夢魔サッキュバス幹部の顔が一気に青褪める。松岡が頭に被さったストールをはぎ取ると、その下から額に血管を浮かべた真顔が現れた。

 「瑠璃子るりこ、ひな。このガキに負けたら、どうなるかわかってるでしょうね?」


 「も、勿論です。ガールズモッブとしての格の違いを教えてやります!」

 姿勢を正し、大きく受け答える幹部の女。松岡もまだ20代だと思われるが、やはり女性にババアは禁句のようだ。女子高生は怖い物を知らなさ過ぎる。何故、無駄に相手を怒らせてしまうのか?


 そんなやり取りとしている間に、上条は『暴露』の能力で2人の幹部の詳細を調べていた。小柄な方がクレストガールズの、大和やまとひな。『柳風やなぎかぜ』という、物理攻撃を自然に避ける能力。大柄な方がクラウンの、岡埜おかの瑠璃子。彼女は亜種ではないようだが、レスリングの全日本選手権に出場した経験があるようだ。

 そしてこちらは、瀬戸口の『瞬間移動』と逆月さかつきの『空中浮遊』という、非戦闘系能力。果たして勝つことができるだろうか?


 「少しは名を上げてきたみたいだけど、今日で潮時ね。観念しなさい!」

 ガタイの良い岡埜が、身を低くして突っ込んできた。


 速い。狙われたのは瀬戸口。岡埜は獣のようなタックルを喰らわすと、そのまま瀬戸口の腰を掴み思い切り横に投げ倒した。

 「あかん、そいつはレスリング経験者や! マウント取られたら逃げられへんで!」

 しかし上条のそんな言葉も空しく、あっという間にマウントポジションを取られてしまう瀬戸口。早くも勝負がついてしまったか?


 総合格闘技のように、マウントポジションから叩きつけるような打撃を放つ岡埜。しかし拳が当たるその瞬間、瀬戸口はグラウンドポジションからすっと姿を眩ませた。彼女の持つ、瞬間移動の能力だ。


 「つっ! 何っ!?」

 硬い床を殴りつけ、拳を押さえつける岡埜。気が付くと、いつの間にか位置が逆転していて、岡埜の上に瀬戸口が乗っている状態だった。


 「あたしの能力があれば、寝技も絞め技も通用しないんだからねっ!」

 逆にマウントポジションを取った瀬戸口が、岡埜に顔面に拳を叩きつける。しかし瞬間移動は体力の消耗が激しいらしく、あまり腕に力が入っていないようだ。へろへろの拳で攻撃を続ける。


 一方、逆月の方は大和に対し一方的に連打を繰り出しているが、柳の枝でも殴っているかのように、手ごたえがない。大和の『柳風』の能力は体を自在に曲げて、全ての物理攻撃をいなしてしまうのだ。


 このままでは2人とも体力が尽きて、いずれ反撃を喰らってしまうかもしれない。

 そう思っていた矢先に、逆月の拳を大和が押さえ、腕をぐるりと回転し横に投げ飛ばした。合気道のような華麗な投げ技。


 「そいつに打撃は通用せえへん! こっちも投げ技で勝負するんや!」

 上条の言葉を受け、床の上から起き上がる逆月。

 「な、投げ技?」

 投げ技などしたことがない。そんなことを言いたげな表情だ。


 すると今度は、マウントと取っていたはずの瀬戸口が、起き上がった逆月のところに吹き飛ばされてきた。拳を押さえ、血走った目で睨みを利かせる岡埜。中々の怪力女だ。


 「ふふふ、やっぱり腐っても夢魔サッキュバスの幹部ってわけね。いいわツカサ、作戦Z行くよ!」

 強がりな笑みを浮かべ、床から起き上がる瀬戸口。

 「ゼ、ゼット、了解っ!」


 そう言うと、瀬戸口と逆月はたった2人でスクラムを組みだした。一体何のつもりなのか?

 「それで私のタックルを防ぐつもり? 失笑だわ」鼻で笑う岡埜。

 「黙れ、メスゴリラ! 防ぐためにやってると思ったら大間違いよ。タックルするのはウチらの方だからっ!」

 口の減らない瀬戸口がそう叫ぶと、スクラムを組んだ2人は岡埜と大和に勢いよく突っ込んでいった。


 瀬戸口、逆月と岡埜、大和が、試合再開時のラグビーのようにぶつかり合う。すると両脇をがっちり掴んだ瀬戸口が急に「せーの、ジャンプッ!!」と叫んだ。合図と共に消え去る戦闘中の4人。


 突如として静寂に包まれるフロア。観戦していたこちらも呆気にとられる。彼女たちは一体どこに消えてしまったのか?

 だがそんなことを思う暇もなく、すぐに瀬戸口と逆月の2人だけが、再びその場に姿を現した。


 激しく息を切らし、膝を振るわせる瀬戸口。横にいる逆月が慌てて彼女の体を支えた。1回の瞬間移動でも体力の消耗が激しいのに、こうも立て続けに使用したのでは立つことも困難なのだろう。


 「あんたたち、瑠璃子とひなをどこにやったの?」

 松岡は怒りに震える声を上げ、瀬戸口を睨みつける。


 「さあね」

 当の瀬戸口はそんな怒りもどこ吹く風と、しらを切る。だがそれが松岡の逆鱗に触れた。

 「冗談じゃない! そんな出鱈目な喧嘩で勝ったつもりなの!? これだから弱小チームを相手にするのは嫌なのよっ!!」


 しかし大声を出されているにも関わらず、瀬戸口はいびきをかいて眠りだしてしまった。よほど疲れていたのか、それとも神経が図太いのか。恐らく、その両方だろう。


 「あのね、松岡さん。こっちは仲間誘拐されてんの。それでも正々堂々戦ってくれるとでも思ってたわけ?」

 瀬戸口を膝枕で寝かす逆月が、正論をとくとくと語る。椅子に座る松岡の顔が醜く歪んだ。


 すると、逆月は何かを思い出したかのように「ああ、そうそう。そういえば彼女たち、皇居のお堀で寒中水泳してたから、今頃皇宮こうぐう警察にでも捕まってるんじゃない?」と言って、誇らしげに笑みを浮かべた。

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