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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter20 人の消えた渋谷
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†chapter20 人の消えた渋谷13

 真っ白い建物に、シンプルなロゴが書かれている。ここは円山町まるやまちょうClubクラブ Sanctuaryサンクチュアリ。朝比奈雄二郎を救出した時以来だが、また来ることになるとは思わなかった。ここは夢魔サッキュバスが使う、監禁場所になっているようだ。


 今回は入口に黒服もいなかったので、気兼ねなく中に入っていく。まだ昼間で営業時間前だったが、エントランスの扉は普通に開いていた。

 そして誰もいないフロントを抜け、細長いアプローチを進む上条。その先に大きなバーカウンターがあるのだが、そこにも人はいない様子だ。


 「どこにおんねん?」

 そこから奥に続く扉の先に、ステージを備えた大きなホールがあったのだが、やはりそこにも目に付く場所には誰もいなかった。


 「おい、来てやったぞ、サッキュバス!!」

 大きなホールに、上条の声が小さくこだまする。僅かの後、前方にあるステージの袖から2人の女が現れた。頭に大きな髪飾りを着けているのは、昨日見たクレストガールズの間々田ままだ菜々で違いないが、もう1人の顎が小さい女は初めて見る顔だった。あれが電話をしてきた、笠崎とかいう女だろうか?


 「あんたは昨日の坊主頭っ! お前がスターダストのリーダー、上条だったのか!!」ステージ上から間々田が声を上げる。 

 「そうや。拓人を返してもらいにきたで。間々田の横の女、お前がさっき電話してきた笠崎やなっ!」

 上条はステージ向かって真っすぐに指を差す。しかし顎の小さな女は、手を横に振った。

 「違いましゅ。かしゃじゃきじゃないでしゅ! 私はクラウンのしゅがでしゅ!」


 「えっ!?」

 この顎の小さい女、絶望的に滑舌が悪い。途中、何を言ってるのかさっぱり聞き取れなかった。

 「いやお前、絶対笠崎じゃないやろ! もっと綺麗な声しとったはずや!」


 「だから、笠崎かしゃじゃきじゃないって!」

 これは辛うじて聞きとれた。こいつ、さ行が言えないタイプの人間だ。


 「ほんなら、お前は何者やねん!」

 「須賀しゅがだって言ってるでしょ!」

 「シュガー?」

 「しゅ、が!」

 一応聞きとれてはいたが、面白いのでわからない振りをする上条。やはり名前間違える系のボケは鉄板だ。


 「もういい、黒髪をちゅれてくる約束やくしょくわしゅれたのか? かじぇ斬りがどうなっても知らないじょ!」

 シュガーもとい、須賀が苛立ちを露わにする。どうにかしてこいつに『夢魔サッキュバス』というワードを言わせてみたいが、今は自重する。


 「まずは拓人の無事を確認するのが先や! こっちの仲間には『瞬間移動』の能力者がいる。拓人が無事なら、すぐに雫ちゃんを呼んでやるよ!」


 「ふざけんなよ坊主頭! てめーは交渉できる立場じゃねぇだろ!」

 怒声を上げる、間々田。しかし、横にいる須賀がそれを諌めた。

 「いいだろう。菜々しゃん、笠崎かしゃじゃきをここにちゅれてきてくだしゃい」


 そう命令された間々田だったが、しばらく須賀とぼそぼそ言い合いをし、最終的には不服そうな顔で舞台袖に履けていった。


 「ふふふ。私は夢魔シャッキュバシュにゃかでも、慈悲ちひ深いことで有名だからな」

 こいつ勝手にシャッキュバシュって言ってくれた。上条は思わず、にやりとほくそ笑む。

 「何を笑っている? もしも約束やくしょくを破ったら、ただではしゅましゃれないということをわしゅれるんじゃないじょ!」


 脅し文句が全く様にならない須賀。しかしこの女、実際のところあまり強そうには見えないのだが、果たしてどれだけの戦闘力があるのだろうか?

 「1つ、質問してもええか?」

 「言ってみろ、関西人かんしゃいじん

 「お前ら、拓人のことをどうやって捕まえたんや? あいつはそうとう強いはずやぞ」


 「ちゅよいと言っても、上には上がいるものよ。私にかかればかじぇ使ちゅかいなど、子供とあしょんでいるようなものでしゅ」

 そう言って、満足そうに笑う須賀。拓人はよりによって、こいつに負けたというのか?


 『暴露』の能力で須賀の能力を調べる上条。彼女は亜人系の能力ということがわかった。

 「正に北風きたかじぇ小僧こじょうというわけだ」

 そう言って笑みを浮かべる須賀。しかし、言ってる言葉が聞きとれなかったので、これに関してはよくわからなかった。


 そうしていると、ようやく袖から仏頂面の間々田が現れた。そしてその後から、医療用の眼帯をつけたパッツン前髪の女、山田拓人、鈴江リクが、前の人の両肩に手を添える電車ごっこのような連なった状態で袖から出てきた。


 「えーっ!? これは、どういうことやねんっ!!」

 突っ込みどころが多過ぎる状況に、上条は大袈裟に頭を抱えた。

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