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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter19 冬告げのエトランゼ
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†chapter19 冬告げのエトランゼ20

 「暴れまくっとるみたいやなぁ、『風斬り』くん」

 カフェバー『スモーキー』に入った拓人に対し、開口一番にそう言ったのは、カウンターの中で退屈そうにグラスを磨いていた上条圭介だった。


 「止めろよ、その言い方!」

 誰かに聞かれたら恥ずかしいと思い周りを見回したが、幸い店内には客が1人もいなかった。相変わらず暇そうな店だ。拓人はカウンターの端っこにあるハイスツールを引きそこに腰掛けた。

 「何でやねん。俺は誇らしいんやで。まさかあの冬将軍を倒すとは、夢にも思わんかったからな」


 「いや、大関を倒したのは俺じゃないし、そういうのいいからとりあえずカフェラテ貰える?」

 「はいよ」

 暇なのを良いことに、上条はだらけた様子で安物のエスプレッソマシーンを操作しだした。


 「そういえば、その場に犬塚の奴もおったいう話やな。『パイロキネシス』は『イエティ』の能力に対して相性が良さそうやけど、あいつが大関倒したん?」

 上条はスチームでミルクを温めながら、冷静に分析する。


 「それは半分正解だ」

 「何やそれ? まあええわ。そういえば犬塚たちが捜してた『パコ』いう奴の正体がわかったで」

 上条はドヤ顔でカフェラテを差し出す。カプチーノの如くミルクの泡がカップの淵を越える高さで盛り上がっている。これがサービスでやってくれているのか、失敗しただけなのかはよくわからない。


 「油坊主の那智秀樹だろ」

 拓人はあっさりとネタバレさせる。ドヤ顔だった上条が大きく口を曲げた。

 「何で知っとるんや!?」


 「昨日、そいつに会ったんだよ。宮下公園で大関を倒したのは俺でも犬塚でもない。この那智って男だ」

 そうさっき半分正解と言ったのは、この那智が犬塚の能力と『融合』して、大関を倒したからそう言ったのだ。


 「ああ、こいつは『融合』とかいう能力を持っとるらしいから、犬塚と融合して『パイロキネシス』を乗っ取り冬将軍を倒したいうことかな?」

 いつになく上条の勘が冴えわたる。それと那智の事を良く調べているようだ。さすがは『暴露』の能力者。


 「それにしても、何でこいつは『パコ』って呼ばれてるんだ?」

 拓人がぬるいカフェラテをすすりながらそう尋ねると、上条は思い切り顔をしかめた。


 「話によると那智がまだ中学生ん時に、飼っとる猫と融合したことがあったらしいんや。ほんで、そのこと忘れて眠ってもうたら、寝た瞬間猫に意識を支配されてもうて……」

 「そんで?」


 「で、夜中に家飛び出して、四つん這いの状態で近所を徘徊しとったらしいんやけど、その先々で遭遇したメス猫相手に腰をパコパコ振りまくってて、それ以来同級生から『パコ』って呼ばれるようになったみたいや」

 嘘のようなアホ話。だが、那智の不気味な顔を思い出すと、そんなとんでもエピソードも不思議と現実味を帯びてくる。


 「その事件以来、近所の野良猫には那智のDNAが刻まれているいうて噂になったみたいやで」

 「中学生がすげー伝説作ったもんだな」

 「正に生ける伝説や。昨日、目の当たりにしてどうやった?」

 上条はちゃっかり作っていた自分の分のカフェラテを口に運んだ。ここの仕事は本当に楽そうで良い。


 「いや、噂に違わぬヤバそうな奴だったよ。っていうか今さっきも会ったんだけどな」

 「何っ!?」

 上条が飲んでいたカフェラテのカップを口から放した。白い泡が口髭のように鼻の下に残っている。お前、それがやりたいだけだろ。


 「そんで、喧嘩にならんかったん?」

 「まあ、そん時はな」

 「そら、良かった」

 「けど、今夜1時にスクランブル交差点で決闘することになったけどな」

 そう言うと、上条は飲んでいたカフェラテを吐き出しゲホゲホとむせ出した。入ってはいけない場所に液体が入った様子。


 「決闘って何や? 俺は何も聞いてへんぞ!」

 「勘違いすんなよ。やるのは俺らじゃない。スコーピオンと油坊主が決闘するんだ」

 「スコーピオン?」

 上条はもう一度大きく咳をし、ゆっくりと呼吸を整えた。


 「何や、スコーピオンがやるんか。それは面白そうやな。仕事で見にいけへんのが残念や」

 スモーキーの営業時間は午前5時まで。今日は朝までシフトが入っているらしい。


 「夜中だからめんどくさいけど、まあ暇だから、俺が見に行くよ」

 勝手に潰し合ってくれれば結構なことだ。それに一応、どちらが勝つのかは興味がある。


 「はぁ、しかしスクランブル交差点で決闘とはなぁ」

 上条が嘆息をつく。拓人もその一言で事の重大さに気付いた。スクランブル交差点は言わばB-SIDEビーサイドの本丸。スコーピオンと決闘する場所としては、いささか不適切な場所だ。


 「油坊主の連中が場所を指定してきたからな。あいつら渋谷の事情を知らな過ぎるんだ」

 拓人がカフェラテに手をつけると、上条もカップを手にしそれを一気に飲み干した。


 「戦争が始まる理由は昨日の事件で十分やったけど、今夜の決闘が本格的な争いの引き金になりそうやな……」

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