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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter19 冬告げのエトランゼ
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†chapter19 冬告げのエトランゼ18

 「居たか、『風斬り』の奴?」

 「いや、見失ったみたいだ……」

 「くそっ、どこに行きやがった?」


 箱型荷台の付いたトラックの屋根の上に隠れた拓人は、足元にいる奴ら会話に聞き耳を立てる。どうやら『風斬り』とは俺のことを指して言っているらしい。


 足元の奴らは左手にブルーのカラーバンドをつけたB-SIDEビーサイドの連中だ。センター街を歩いていたら突然怒声を浴びせられ、そのまま追いかけられ現在に至っている。路地を曲がった先に停めてあったトラックの上は、意外と盲点だったようだ。幸い奴らはこちらには目も向けない。


 やがて駅方向に去っていくB-SIDEビーサイドのメンバー。ため息をついた拓人はトラックの屋根の上に腰を下ろした。

 「やれやれ、昨日の争いがすでに知れ渡っているみたいだな」

 独り言を呟いたつもりだったが、それに対して返答がきた。


 「そうみたいね、『風斬り』さん」

 「えっ!?」

 驚いて振り返ると、何と荷台の上にもう1人、しゃがみ込んだ女がいた。それは他でもない天野雫だった。


 「びっくりした、雫か。いつの間にいたんだ? ていうか『風斬り』って何なんだよ?」

 そう聞くと、雫は背負っていたキャンバスリュックの中から1枚の紙を取り出した。見るとそこには自分の名前と顔写真が写っていた。


 「『風斬り』山田拓人……。まさかこれ手配ポスターか!?」

 「そう。犯罪抑止条例に抵触している第3種手配犯、いわゆる賞金首ね。山田くん、昨日宮下公園で騒ぎを起こしたんでしょ?」

 雫は子を叱る時の母親のような顔で、こちらを一瞥する。何も悪いことはしていないつもりだが、仄かな罪悪感が胸の中に芽生える。


 「いや、確かにそうだけど、もうポスターが作られてるのか? 渋谷区は仕事速いな!」

 「それはそうよ。だって、あの『冬将軍』大関夏生を倒したんでしょ? B-SIDEビーサイドも、それ以外のチームも含めて渋谷の街は今、大騒動になってるのよ」


 「いや、大関を倒したの俺じゃないけど……」

 あの時、確かに大関と戦っていたが、実際に手を下したのはあの不気味な顔をした三つ編みの男だ。

 「あー。そういえば、『暴君』那智秀樹もその場にいたっていう話ね」

 雫の言葉に、拓人は小さく首を捻る。

 「なちひできって、誰だ。あの三つ編みの男の名前か?」


 「三つ編み? 髪型は知らないけど、この男も現場にいたって噂になってるわ」

 雫はそう言うと、もう1枚、手配ポスターを出した。マスク姿のふてぶてしい顔がそこに写っている。アップの写真なので髪型まではよくわからないが、これは恐らく昨日の三つ編みの男で間違いないだろう。


 「まさかあいつがこの『暴君』だったとは、迂闊だったな」

 この手配ポスターは以前目にしたことがある。確か杉並区最強のストリートギャングだとかいう話だ。

 「彼は杉並区を制覇した『油坊主』というチームの頭よ」


 「油坊主?」

 何となく気持ちの悪いチーム名だが、昨日見たあの3人の雰囲気を考えると、すんなりと受け入れることができる。


 「そういえば、雫にちょっかい出してきたスキンヘッドのキモい奴も、その暴君の仲間みたいだな」

 それは知らない情報だったのか、雫は拓人の顔を一瞥すると「ふーん」と唸った。

 「そうだったのね。じゃあ、全力で叩き潰さないと」


 穏やかな口調で物騒な言葉を呟く雫。その時、トラックの運転席でエンジンの掛かる音がした。どうやら出発のお時間のようだ。


 「動き出すみたいだ。とりあえず、一旦降りよう」

 手を繋ぎ、箱型荷台の上から地面に飛び降りる2人。すると丁度その横を、赤い血しぶきがデザインされたトレーナーを着た連中が通りかかった。


 「く、『黒髪』と、例の『風斬り』だっ!」

 その中の1人が叫ぶと、全員の視線がこちらに注がれる。すっかり有名人になってしまったようだ。


 「逃げるのもつまらねえから、ここで肩慣らしでもするか?」

 拓人は足元に風が渦巻く。こちらが望もうが望むまいが、争いの火蓋は既に切られているのだ。

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