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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter19 冬告げのエトランゼ
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†chapter19 冬告げのエトランゼ17

 炎に包まれた人の姿の化け物が目の前にいる。もはや三つ編みの男には近づくことすら困難になってしまった。

 「こっからが本番だ。行くぞ、お前ら!」

 三つ編みの男が合図を送ると、虫々コンビの2人もこちらに襲いかかってきた。


 「鬱陶しい虫どもがっ!!」

 拓人が前方に小さな竜巻を起こすと、マスクの男が呼び出したイナゴの大群が、枯れ葉に交じり上空に舞い上がった。続けざま、空中から襲いかかるスキンヘッドのキモい奴に上段蹴りを喰らわせ叩き落とす。


 しかし雑魚の相手をしてる場合じゃない。視線を右に向けると、管理室の脇で大関と三つ編みの男が激しい争いを繰り広げていた。それなら、まとめて一掃してやる。拓人はその場で藪を薙ぐように強く腕を振った。真空状態の鋭利な風が、管理室に向かって飛んでいく。鎌風を起こし、中距離の敵にも攻撃を加えることができる鎌鼬かまいたちという技だ。


 毛皮に守られている大関の皮膚から鮮血がほとばしる。だが、大関の横にいた三つ編みの男には、その攻撃がまるで効いていないようだった。炎と化した体には鎌風が通用しないということだろうか?


 三つ編みの男は血だるまになった大関に掴みかかった。接触時に毛皮が燃え上がり、大関は奇声と共に地面を転がった。

 「ヒィヒィヒィ、素晴らしい。攻撃面でも防御面でも、俺は最強じゃねぇか!」


 鎌鼬かまいたちも効かないとは、本当に厄介な敵だ。どう戦えばいいのか?

 その後、復活したパクと犬塚も混じり大混戦に発展した。皆、決死の覚悟で戦いに挑む。やがて1人、2人と倒れる者も出てくるが、火と融合した三つ編みの男を攻略することはできない。


 いつの間にか、周りには多くのギャラリーが集まってきている。早く蹴りをつけたいところだが、どうしても太刀打ちできずに焦りを募らせる拓人。だがそんな中、勝利を確信したように笑みを浮かべていたはずの三つ編みの男が、突然「ギャッ!!」と悲鳴を上げた。背中からは水蒸気のような煙が上がっている。何か異常をきたしたようだ。


 その後も短い悲鳴を何度も上げ苦しむ三つ編みの男。始めは何が起きているのかわからなかったが、額に何かが落ちてきたのを確認した時、拓人は三つ編みの男が苦しんでいる原因を理解した。


 今、空からポツリポツリと雨粒が落ちてきている。つまり三つ編みの男は、雨に打たれたことによって体の炎にダメージを受けているのだ。


 「クソッ!! お天道様まで敵に回したつもりはねぇけどな!」

 三つ編みの男は火が衰えないように体から発せられる炎を更に大きくした。あたかも消えかけた蝋燭が勢いを増すかの如く。尻にも火がついたということだ。


 「こんな小雨に怯えるキャラじゃねえ。俺はこの街を支配する男だっ!!」

 煙を上げながらこちらに突っ込んでくる三つ編みの男。その姿はさながら蒸気機関車のようだった。


 拓人は高く跳び上がり、その攻撃をかわす。しかし地上にいる三つ編みの男は、身を屈めると天に向け巨大な火柱を上げた。

 「あつっ!!」

 高熱を受け地面に落下してしまう拓人。


 「ヒィヒィ、勝負あったな」

 三つ編みの男はゆっくりと近づいていてくる。雨は徐々に振り方を強めているので、もう少し時間が稼げたら、こちらに勝機が生まれるのだが……。


 今の拓人には逃げることしかできなかった。風を起こし後方に飛ぼうと準備していると、突然、公園管理室から何者かが姿を現した。それは何かホースのついた赤い筒のような物を持ったパクだった。

 「これで終わりにしてやんよ」


 パクは手に持った筒のレバーを強く握った。ホースの先端から白い煙が大量に吹き上がる。それは消火器だった。


 「ギャーッ!!」

 消火剤を噴霧され、三つ編みの男は断末魔のような大きな叫び声を上げる。そして嗚咽と共に口から火の点いた小さな炭のようなものを吐き出した。あれは恐らく三つ編みの男が『融合』した火種。これで物理攻撃を通用するだろう。


 それならばと、拓人は再び真空を飛ばした。「くたばれっ! 鎌鼬かまいたちっ!!」

 刃のような風が三つ編みの男とパクを切り刻んだ。立っているのもやっとだったパクはそのまま地面に倒れたが、三つ編みの男は血まみれになりながらもしっかりと意識を保っていた。


 三つ編みの男は足をふらつかせながらも、倒れるパクから消火器を奪いそれを体に融合させた。

 「ヒィヒィヒィ。さすがに渋谷の連中は一筋縄ではいかねぇようだ」

 そう言って手のひらから消火剤を撒き散らし、こちらの視界を奪う三つ編みの男。


 噴霧された大量の消火剤が晴れてくると、三つ編みの男と虫々コンビの3人は、忽然とその姿を消してしまった。

 「逃げたか……」

 今、この公園内で立っているのは、ギャラリーを除けば拓人1人だけになった。


 争いには勝利したが、正体のわからぬ敵のせいで、後味の悪さだけが心の奥底に苦く沈んだ。

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