†chapter19 冬告げのエトランゼ15
三つ編みの男が右腕を振ると、体の一部と化していた交通標識が体外に排出された。大きな音を立てて地面にバウンドする。
「んで、お前らが言ってた厄介な奴はこの3人の内の一体誰だ?」
三つ編みの男がそう言うと、その背後からマスクをつけた男とスキンヘッドの男が現れた。虫を操る亜種と、虫の亜人という例の虫々コンビだ。
「俺らに喧嘩売ってきたのは、そこのくせ毛の坊やだよ」
マスクの男がこちらを指差す。三つ編みの男は拓人と目が合うと、10年来の旧友にでも会ったかの如く頬を緩めた。
「俺たちゃ、喧嘩を売ることはあっても、買うことは少ねぇからな。ちょっと、嬉しいぜぇ」
こいつらは一体何者なんだ? そんな思いで三つ編みの男と虫々コンビを順番に目を向けると、突然野獣化した大関が襲いかかってきた。
咄嗟に構えたのだが、大関は拓人のことは跳び越え素通りしてしまう。彼の狙いは恐らく三つ編みの男だ。
「他にもヤベー野郎がいるみてぇだな!」
三つ編みの男は地面に手をかざすと、どういうわけか体が溶けるように地中に沈んで行く。大関が到達した時にはすでにその姿を消してしまっていた。何という奇っ怪な能力。
敵を見失った大関が今後はこちらに攻撃を仕掛けてくる。
拓人は身を屈め丸太のような大関の腕をかわしたのだが、同時に放たれた前蹴りを正面に喰らってしまった。
足を滑らせ後ろに倒れそうになる。すると、いきなり背後の地中から三つ編みの男が顔を出し、奇声を上げながら攻撃を仕掛けてきた。
「ヒィヒィヒィッ!!」
バランスを崩した拓人だったが、風を起こし体勢を整えつつ攻撃を避けると、そのまま三つ編みの男の側頭部に回し蹴りを叩きつけた。飛び出すと同時に卒倒する三つ編みの男。
「おい『パコ』! その坊やは風を操作するみたいだから、気をつけろ!」スキンヘッドの男が檄を飛ばす。
「おうおう、そうだったな。自然を操るとは大した亜種だ。だが、それだけ倒し甲斐ってもんもある」
三つ編みの男はすぐに立ち上がると、拓人と大関に睨みを効かした。徹底的に叩きのめさないと、懲りない性格のようだ。
拓人、大関、三つ編みの男の3人が互いに睨み合っていると、急に犬塚が口を割って入ってきた。
「『パコ』? 今、お前らこいつのことパコって呼んだか?」
『パコ』とは、犬塚と蛭川が捜していた人物の名だ。
「あ? 何だテメーは?」
マスクの男とスキンヘッドの男は犬塚のことを激しく睨むが、犬塚自身はパコと呼ばれた三つ編みの男に視線がロックされてしまっている。
「俺がパコだったらどうするってんだ、ドレッドのにーちゃん?」
煽る三つ編みの男。全方位に喧嘩を売っていく狂犬スタイル。
「やっと見つけたぞ、お前がパコかっ!!」
犬塚が腕を振りかぶる。指先から放たれた炎が弧を描き、三つ編みの男の鼻先を熱く焦がした。
「ほう、テメーも自然を操るタイプか、面白れぇ」
「何が面白いんだよ、マゾ野郎!」
犬塚は怒りに身を任せ、次々と炎の攻撃を繰り返すのだが、三つ編みの男はのらりくらりとした動きでその攻撃をかわしていく。
「そんなに怒るんじゃねぇよ。そもそもテメーはどこのチームよ? 俺らが標的にしてるのは1つや2つじゃねぇからな。『ナイトメア』か? 『フラッグス』か? それとも『スコーピオン』か?」
「俺ぁ、スコーピオンの犬塚だ! 覚えておけっ!!」
犬塚のストレートパンチをかい潜ると、三つ編みの男はそのまま犬塚の体に密着するように抱きついた。
「何のまねだ? マゾかと思ったらゲイだったってオチ……」
そう言っている途中で犬塚は言葉を止めた。何らかの異変を感じ取ったからだ。
「止めろ! 何すんだお前……、あああああっ!!」
抱きつかれていた犬塚は、そのまま三つ編みの男の胸の中に吸収されるようにして消えてしまった。三つ編みの男は奇妙な引き笑いを続ける。
「ヒィヒィヒィ。また、まずいもん喰っちまったぜぇ」




