表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter19 冬告げのエトランゼ
208/294

†chapter19 冬告げのエトランゼ14

 前に立つ犬塚を拓人は呆然と見ている。このままこいつに大関を押しつけられればラッキーだな。という思いと、いや、ファンくんのかたきは自分で取らなくてはいけない。という2つの思いが脳内でせめぎ合っている。


 「いきなり来て、何しゃしゃってんだよ。ここはお前の出る幕じゃねえ!」

 そんな中、不意に出てきた言葉が何故かそれだった。プライドを優先させてしまう、俺の馬鹿!


 「へへっ、無理すんな。相手が冬将軍なら、逃げても恥ずかしいことじゃねえ」

 犬塚は足を肩幅に開き、どっしりと身構えている。対する大関も犬塚のことを敵と認識したのか、じっとその姿を睨み返す。


 「さっき、パクがやった奴の仲間かな? おいらは別に、2対1でも構わないぞ」

 言葉と共に突っ込んでくる大関。これはまずい。油断していたため、慌ててタックルをかわす拓人と犬塚。

 「うわっ、危ねえ! とりあえず俺から離れろ、風使い! 戦いにくくなる!」


 「命令すんな! お前が俺に近づいて来たんだろっ!」

 納得はいかないものの、拓人は犬塚に従い向かい風に乗って後ろに跳んだ。3人の位置が三角形状に離れる。ここからどう戦うか?


 「おい、冬将軍。てめえは熱いのが苦手らしいな」

 犬塚が躊躇ためらいもせずに大関に近づいて行く。そして2メートルの距離に近づいた瞬間、大関の拳が犬塚に向かって飛んできた。それに合わせ、巨大な炎を口から吹きだす犬塚。予想以上に驚いた大関は尻もちをついて転ぶと、地面を這うように後退していった。こちらが引くくらい、効果てき面。


 「あ、熱いんだな。何の能力だ!?」

 大関の動揺した声を聞くと、犬塚は指先に火を纏わせた。

 「俺の能力は『パイロキネシス』。炎を生み出し操る能力だ。獣にはよく効くみたいだな」


 勝利を確信したかのような不敵な笑みを浮かべると、犬塚は手の中に炎を宿し、大関を向かっていった。大きな図体を揺らし逃げ出す大関。


 「待てコラァッ!」

 「ちょっと、タイム! 待ってほしいんだな!」

 追いかける犬塚。逃げる大関。これではもはや勝負にならない。圧勝の予感。


 しばらく追いかけっこが続いていたが、数分後大関が急にその足を止めた。予想外の行動に犬塚も合わせてその場に留まる。

 「な、何だ!? とうとう諦めたか?」

 犬塚がそう問いかけたが、大関は唸るだけで何も答えない。


 「だったら、これで終わりにしてやるよ」

 犬塚の手の中の炎が燃え上がる。大きく腕を振ると、炎が帯となり大関の体に襲いかかった。


 「グオオオオオオオオオオオオッ!!」

 大関は振り抜いた犬塚の腕を、その大きな拳で握っていた。炎がジュッという音と共にその中で消えると、大関はもう片方の拳で犬塚の側頭部を殴り飛ばした。


 肉の潰れる鈍い音と、派手に吹き飛ぶ犬塚。

 「お前、大丈夫かっ!?」

 絶対に大丈夫じゃないと思ったが、以外にも犬塚はすぐに体を起こしファイティングポーズを取った。致命傷は避けられたようだ。


 「おい、炎が効かなくなったぞ。話が違うじゃねぇか!」

 「知らねえよ! お前が追い詰めるから豹変したんじゃねえか!」

 しかしここで言い合いをしている場合ではない。大関はすぐにこちらに向かって、攻撃を仕掛けてくる。


 拓人は両腕で防いだが爪によって皮膚が引き裂かれてしまった。鮮血を流しながら、拓人は上昇気流に乗り天高く跳び上がる。

 「こんなことなら、1人で戦ってた方がましだったよっ!!」

 地上にいる大関の脳天に、上から振りおろした拓人の踵が突き刺さった。


 頭部への攻撃をまともに喰らった大関だったが、ダメージはないらしく、真下に落下した拓人の顔面を大きな口で噛みつこうとしていた。これはまずい。


 風の力で何とか逃げようと腰を浮かせると、突然、目の前の大関の顔が炎で包まれた。背後から犬塚が攻撃したようだ。さすがに苦しい声を上げる大関。その隙に距離を取ると、再び3人は三角形状に対峙した。大関は自らの顔を手で叩き炎を消しとめる。


 「ヒィヒィヒィ、さすが渋谷。凄ぇ喧嘩してやがるぜ」

 不意にどこからか声が聞こえてきた。見ると大関の背後に、悪人顔の男が背を丸めて立っている。公園管理室を尋ねた時にいた不気味な三つ編みの男だ。


 「な、那智くん、まだこんなところにいたんですか?」

 管理室の前で倒れるファンが、顔をしかめそう言った。


 「なぁに、俺の仲間がここにいる誰かの世話になっちまったみたいでなぁ」

 三つ編みの男は前屈みの状態で、喧嘩中のこちらをジロジロと見回す。まさかこいつが、さっきボコった虫々コンビの仲間か?


 その時、野獣化した大関が問答無用に三つ編みの男に殴りかかった。しかし男は落ち着いた様子で右腕を差し出した。大関の大きな拳が、三つ編みの男の腕をくの字にへし曲げる。


 骨が折れているかのような状態だったが、見ると少し様子がおかしい。三つ編みの男の右腕は、肘から先が交通標識の付いたアルミ製のポールに変わっていたのだ。


 「挨拶にしては強烈だ。止まれの標識が折れ曲がっちまった。ヒィヒィヒィ」

 三つ編みの男は奇妙な引き笑いをし、その折れ曲がった標識で大関に殴りかかった。表示板が大関の脇腹をえぐり、赤い血が吹き出した。「グオオオオッ!」と苦しい声を上げる。


 「那智くん、話が違う! 渋谷では暴れないと、さっき約束したじゃないですか!?」

 ファンが普段聞かないような悲痛な声を上げると、三つ編みの男はまた奇妙な引き笑いをした。


 「ヒィヒィヒィヒィヒィ。あんた、わかってねぇな。約束なんてもんは、破るためにあるんだぜぇ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ