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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter18 ワンヒットの法則
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†chapter18 ワンヒットの法則20

 『デコイ』の能力のおかげで何発攻撃を喰らおうと物ともしない乙村おとむらは、完全に無防備のまま反撃を仕掛けてくる。ノーリスクでのカウンター攻撃が、彼女の得意とする戦法のようだ。


 攻撃を受ける回数は乙村の方が多いものの、憔悴しょうすいしているのは明らかにみくるの方だった。

 「もういい加減、降参したら? 今謝れば、エレナさんだって許してくれるかもしれないわよ」


 「ふざけんじゃないわよ! 謝らなきゃいけないのは、あんたたちの方でしょっ!!」

 体力も尽きかけていたが、怒りに燃えるみくるは最後の力を振り絞り、乙村の腹部に前蹴りを喰らわせた。不意打ちだったためカウンターも出せなかった乙村は、前屈みになり黒い物体を排出する。


 「ケケケケケケケッ」

 おとりの笑い声がこだまする中、みくるは続けざま、身を低くした乙村の横顔目掛けて後ろ回し蹴りを放った。

 しかし遠心力で勢いを増したつま先は乙村には当たらず、囮である黒い物体の横っ面を捕らえた。小刻みに微動しながら笑っていた囮の頭は綺麗に吹き飛び、そして首無しの囮はそのまま地面に溶けていった。


 「あー、惜しいっ! 今のは上手く避けられた!」上条が悔しげに唸る。

 乙村が一歩身を退いたため、蹴りは本人には当たらず囮に命中したのだ。


 攻撃は外したものの、何かを悟ったように表情に余裕が生まれるみくる。「今の攻撃はカウンターを狙ってこないのね」

 肩で息をするみくるにそう言われると、乙村の左の眉がピクリと動いた。

 「だいぶ疲れているみたいだけど、無駄話する余裕はあるのかしら?」


 「無駄な話じゃないわ。これはあんたの弱点を身切ったっていう宣言なんだから」

 そう言い切ると同時に前に踏み込むみくる。目を見開いた乙村は必至の形相でカウンターを合わせてきた。

 しかし、みくるの蹴りの方が僅かに速い。左の頬を蹴られた乙村は不気味な声と共に、黒い物体を吐き出した。


 「え、うえええぇぇ……っ! ちょっ、ちょっと待って!」

 手を前に出し、後方に下がる乙村。だがみくるは遠慮なく前に出て、乙村の左足にローキックを喰らわせた。

 「あっ!! チクショーッ! いったっ!!」足を押さえ、その場にへたり込む乙村。


 「今のは効いたみたいね」

 みくるは更にニーキックをお見舞いする。地面に崩れた乙村の額にみくるの右膝がぶつかる。乙村の顔面から黒い物体が排出される。この攻撃は囮に阻まれてしまったようだ。

 だがそれでもみくるは攻撃の手を休めない。右足を高く上げると黒い影を排出する乙村の頭頂部目掛けて、踵落かかとおとしを喰らわせた。

 乙村の頭蓋骨から鈍い音が鳴る。すると彼女は目が虚ろになり、言葉も無く地面に倒れた。囮は排出されない。どうやらこの攻撃は効いたようだ。


 「はぁ、はぁ……。これであたしの勝ちね」

 息を切らしながらも勝利宣言するみくる。だがそれを見ていた裕太は不思議そうに首を曲げた。

 「どういうことだ? 何で急に攻撃が効くようになったんだ?」


 「裕太はアホやなぁ。見ててわからんかったんか? あのねえちゃんの能力は、囮によって物理攻撃が通用せんようになるんやけど、あの囮を身体から出してる最中だけは攻撃の無効化ができひんのや」

 上条は『暴露』の能力によって暴いた『デコイ』の弱点を説明する。みくるもまた戦いの中で、囮の排出中は避けることに徹しカウンターを狙ってこないということに気付いたようだ。


 乙村は目に涙を浮かべながらゆっくりと立ち上がった。

 「ク、クレストガールズであるこの私の弱点をこんなに簡単に見破るなんて、あんたたち絶対に許さないからねっ!!」

 声を低くして乙村が吠える。その一声で只ならぬ空気に支配される3階フロア。すると怒りで毛を逆立てる乙村の足元から、先程消えていった数体の囮が陽炎のように揺らめきながらその姿を蘇らせた。


 「言っとくけど、私の『デコイ』たちは身代わりになるだけじゃないのよ!」

 乙村はみくるに向かって真っすぐに指を差す。顎を震わせ「ケケケッ」と笑った黒い囮たちは、それと共に一斉にみくるに襲いかかっていった。


 「う、嘘でしょ!?」

 飛びついてくる囮を1体は蹴り倒したものの、2体目、3体目と立て続けに襲われ、みくるはそのまま地面に押さえつけられてしまった。これはもう、どうしようもないか?


 「あははははっ! いい気味ね。あんたみたいな小娘が、夢魔サッキュバスに逆らおうなんて10年早いっていうのよ!」

 乙村が甲高い笑い声を上げると、更に地面から数体の黒い囮が出現した。いよいよみくるに止めを差すつもりか!?


 しかしその囮たちを見るや、笑っていた乙村の表情がいきなり真顔に変化した。「えっ? 何これ……?」

 己の能力を見て不思議がる乙村の姿を見て、上条も一瞬混乱する。だがすぐに『暴露』の能力で、これがどういう状況なのか理解した。


 「何や、これは裕太の仕業なんか……。まあええわ。あんまりゆっくりもしてられんし、そろそろ仕舞いにしよか」

 後から出現した黒い囮を見て、上条は独り言ちる。その囮たちは、裕太の能力によって出現した『幻術』だったのだ。

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