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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter18 ワンヒットの法則
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†chapter18 ワンヒットの法則02

 「ワンヒットワンダー……?」

 上条は呟く。彼の持つ『暴露』の能力を使い暴いた朝比奈の能力名がそれだった。


 「ほう、よくわかったな坊主頭。俺は一発の拳に己の全てをかける能力の持ち主。後はもう凡人以下の攻撃しかできない。お前ら、今俺が殴った奴の仲間だろ? 俺はもう反撃できないから好きなだけぶん殴ればいいさ」

 朝比奈は胡坐あぐらを掻いた状態で淡々と言った。


 「いや、俺らはあいつの仲間やないで。佐伯も別にかめへんやろ?」

 そう聞いたのだが、佐伯は険しい表情を崩さぬまま朝比奈の前にやってくる。

 「失礼があったのはこちらの方ですが、仲間がここまでやられたのでは黙って帰るわけにはいきません」

 佐伯の意外な言葉に、賑やかだった高架下に静かな緊張が走った。


 「何でや? ボーテックスと瑠撞腑唖々ルシュファーは敵対チームやのに、仲間ってどういうことやねん?」


 鉄の仮面のように冷たい表情をしていた佐伯だが、それを聞くと微かに笑みを浮かべた。

 「確か上条くんは、物事を暴く能力を持っていたはず。僕たちのことをまだご存じではないのですか?」


 上条の脳裏に不穏な感情が過ぎる。

 本来であれば『ボーテックス』、『瑠撞腑唖々ルシュファー』、『Trueトゥルー』の3チームは渋谷駅西側エリアの覇権争いをしている敵同士のはず。いつの間にかその情勢が変化したのだろうか? 上条は『暴露』の能力を使い佐伯の近況を暴いた。


 「成程そういうことやったか。八神の奴、とんでもないことしでかしてくれるんやんけ……」

 『暴露』の能力で渋谷駅西側エリアの情勢を知った上条の額から、冷や汗が1粒流れた。

 「八神って、あん時の二重人格の奴か?」

 拓人も何かに気付いた。そう、八神とは『スモーキー』で会った元B-SIDEビーサイド、2代目頭だった男だ。


 「これで八神透が作ったいうチームの正体がわかったわ」

 八神は言っていた。この街を支配すると。だが上条は、その言葉をあまり本気にはしていなかった。新参者に統治できるほど、この街は生易しいものではないからだ。


 「『ボーテックス』、『瑠撞腑唖々ルシュファー』、『Trueトゥルー』の3チームは合併したんです。上条くんも渋谷を統べるつもりなら、ゆめゆめ忘れないでください。我々は、渋谷西口連合會れんごうかいVOLTボルト』です」

 佐伯の説明を改めて聞き、上条の背中に鳥肌が立った。その3つのチームが1つになるということは、三大勢力に匹敵するほどの規模になったと言っても過言ではないからだ。


 佐伯の指先に白く光る鋭い爪が伸びる。彼の能力は『人狼』。いわゆる狼男なのだ。

 「無抵抗のおっさん相手に本気なんか? それが八神のやり方か?」


 「八神さんのやり方? 上条くんもつまらないことを言うんですね。ストリートギャングなら、売られた喧嘩は買うのが唯一のルールのはず」

 佐伯は素早い速度で1歩踏み込むと、右腕で弧を描きながら襲いかかった。ガシッという衝突音が鳴るが、その白い爪は朝比奈に届くことはなかった。間に入った拓人がその攻撃を受け止めていたからだ。


 「おっさん殴ってもしょうがねえだろ。喧嘩がしたいなら俺が買ってやるよ」

 拓人が言うと、佐伯は口元を緩めた。

 「スターダストが落とし前をつけてくれるんですか?」


 「落とし前とか、意外とおっかない言葉使うんだな」

 「能力と使うと少々性格が変わる性質たちでして……」

 2人がそう言葉を交わすと、突然拓人の頭上から極彩色の物体が落下してきた。


 「くたばれ!! ミサイルキーック!!!」

 極彩色の物体が叫ぶ。何とその物体の正体は、派手な服を着た女だった。真上からのドロップキックを喰らった拓人は、声も出せずに地面に崩れた。


 「ウチの佐伯くんに拳を向けるとか、ホントばっかじゃないのっ!!」

 拓人を足蹴あしげにする縦巻き金髪のその女には見覚えがある。確かALICEアリスリーダー、瀬戸口とかいう女だ。


 「せ、瀬戸口さんじゃないですか……」

 佐伯が顔を引きつらせながら言うと、瀬戸口は光の如き速度で踏んでいた拓人の背中から足を離し、真っすぐに身を正した。

 「あっ! 佐伯くん、こんばんは! あなたにどうしても会いたくて、瞬間移動で来ちゃいました」

 声のトーンを2オクターブ上げた瀬戸口は、頬を赤らめながらそう言った。何、この展開?


 鋭い爪を引っ込めた佐伯は、気付かれぬようジリジリと後ずさる。

 「あやがついたようなので、今日はこの辺にしておきましょうか」

 そう言ってきびすを返すと、佐伯は地面を蹴ってバスターミナルの方に逃げてしまった。


 「ああ、待ってくださーい! 佐伯くぅーん!」

 甘ったるい声を上げながら追いかけていく瀬戸口。だが瞬間移動時に体力を消耗しているらしく、足元がふらふらで全く追いついていなかった。


 「これはあの女に助けられたんかなぁ?」

 上条はそう言って倒れる拓人に目を向けた。しかし拓人は白目を剥いたままで言葉を返さない。


 静かにため息をついた上条は、何かに思いを巡らせるように高架の天井を見上げた。

 「何や、色々面倒なことになりそうな感じやなぁ……」

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