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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter5 異形のカリスマ
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†chapter5 異形のカリスマ02

 「ふーん、優しい目ねぇ……」

 雫の語る琉王るおうの情報を聞いた上条は首を捻った。巡査も執念深い男と評していたように、優しいという言葉が異形のカリスマと呼ばれる男のイメージとあまりにも食い違っているからだ。


 「そうなんか? 俺はもっと怖い人を想像してたけどなぁ」

 雫は頭に過ぎった僅かなイメージを何度も思い浮かべた。

 掘りが深く実年齢より大人っぽく見えるその顔は、優しく微笑むと言いようのない安心感に包まれ若い女性は勿論、同性までも虜にしてしまう魅力があった。しかしその一方どこか表情に陰りがあり、微笑を湛えるその瞳の奥は実のところ何を考えているのかわからない。そういった印象を幼いころに感じていた。


 「けど怖い人ではなかった。ああいう人に比べたら」

 そう言って雫が指差したその先には、黒服を纏ったスキンヘッドの大男が立っていた。背後には白亜の建物が建っている。どうやらそこの警備員のようだ。


 「ふーん。ここがヘヴンか?」

 その大きな建物に驚いた拓人が入り口の上に目を向けると、そこには『HEAVEN』という文字が金色に光っているのが見えた。いつの間にか道玄坂を上りきったようだ。


 「何やねんあいつ。めっちゃ入りづらいわぁ。偉そうに腕組んで突っ立ちやがって、今日日行列のできるラーメン屋のオヤジでもあないドヤ顔で立ってへんで。くっそー、腹立つわぁ」

 むちゃくちゃに悪口を言うと、その言葉が聞こえたのかスキンヘッドの大男は上条たちをギロリと睨んだ。その時上条は両方の鼻の穴にティッシュを詰めていたのだが、大男は笑うのは職務規定に反するとばかりに険しい表情を崩さなかった。

 「お前、上条圭介だな」


 なるほど、もうすでにここに来ることがバレていて、入り口の警備員にも伝わっているようだ。

 上条は大男に「ああ」とだけ言うと、ゆっくり後ろを振り返った。

 「ここはカジノ、大人の世界や。雫ちゃんは未成年やし、ここに残っとき。そんでもし二時間経ってもこっちから連絡がなかったら悪いけど巡査に連絡して貰えるか?」


 雫がそっと頷くと同時に、拓人が何かを思い出したように言った。

 「あ、そういえば俺もまだ未成年だけど……」

 「嘘やんっ!!」

 その時、上条は暴露の能力で拓人の年齢を暴いていたことを思い出し頭を抱えた。「そ、そうやー! お前、静岡県熱海市出身の18歳やないかぁぁ!!」

 拓人は「正解」と頷くと、両手を合わせて仏に祈りを捧げるように深く頭を下げた。


 「何、手ぇ合わせとんねん。俺はお坊さんちゃうわっ!!」

 一人でヘヴンの中に行くことになりそうな上条に対し、嫌味を込めて「ご愁傷様です」というつもりの合掌だったのだが、本人は坊主頭をけなされたと勘違いしたらしい。

 すると、いつまで経っても一向にこちらに来ない三人に痺れを切らしたのか、それともお坊さんという言葉に反応してなのかはわからないが、スキンヘッドの大男がいらついた口調で声を上げた。

 「お前らは上条圭介と山田拓人と天野雫だな。すでにオーナーがお待ちだ。ついてこい」


 三人は顔を見まわした。本当に百聞の能力で全てを見透かされてしまっているようだ。

 「未成年が混じってるけど、店の中に入っても良いのか?」

 その言葉に振り返った大男は、三人を見てつまらなそうに「フンッ」と言った。

 「全員似たようなもんだろ。黙って中に入れ」

 腹の立つ言い草だったが有無を言わさぬ迫力もあったので、三人とも大人しく大男の後をついて行った。


 「二人とも、付き合わせてもうて申し訳ないなぁ」

 拓人は既に腹を括っていたので、何を今更という感じで苦笑いを浮かべた。雫は特に何も考えてなかった。

 それと上条には策があったので、拓人と雫に小声でそれを伝えた。

 「ええか、もし身の危険が迫ったら、拓人の疾風の能力を使って逃げるで」

 しかしその言葉に雫が眉を寄せた。ヘヴンの店内は『メビウス』という名の特殊な高周波が常時流れており、その影響で亜種は人外の能力を使うことが出来なくなってしまうというのは割と有名な話だったからだ。


 「ヘヴンの中では能力は使えなくなると思うけど?」

 雫にそう言われ、上条はそこではじめてそのことを思い出した。

 「メビウスか……。しまったー!」上条は再び頭を抱えると、その場にしゃがみ込んだ。


 「そうかぁ、亜種用の特別刑務所と同じ仕組みだ。それがなかったら亜種が人外の能力を使ってカジノでイカサマするかもしれないもんね」

 拓人はそう言うと、うな垂れる上条を見てまた両手を合わせ恭しくお辞儀をした。

 「ちーん」

 拓人が仏具のりんの音を口で茶化すように言うと、前方を歩くスキンヘッドの大男が指の関節をバキバキ鳴らす音が聞こえてきた。

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