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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter14 コロシアムの怪人
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†chapter14 コロシアムの怪人21

 「ありゃあ、もしかして『スターイエロー』って奴じゃねぇか」拓人の顔を見た氏家が言う。

 「スターイエロー?」

 それを聞いた上条が難しげに顔をしかめていると、横に来たファンがそれについて補足をした。

 「スターイエローは後天的に現れる『異形』の1つですよ。極限状態にいる亜種が何かをきっかけに信じがたいパフォーマンスを発揮しだすという話で、そのスイッチが入った亜種の瞳は星のようにキラキラと美しく輝くんだそうです」


 「後天的な異形? そんなんあるんか?」

 「まあ、いわゆる都市伝説の類だと思ってたんですけど、実際に目にしてしまった以上信じないわけにはいかないですねぇ」ファンはそう言って笑った。


 「けど異形がこの状況を救ってくれるっていうお前らの考えも、まんざら間違いではなかったのかもしれんな」

 氏家に言われ、上条は頷いた。

 「そうや、拓人はうちのエースやからな。頼んだで。不破をぶちのめすんや!」


 拓人は壁際に吹き飛ばした不破の元に向かって歩を進めている。

 何だろう? 時間がゆっくりと流れている感じがする。傷の痛みも感じないし、余計な雑音も聞こえてこない。そして何より、今はどういう訳か『疾風』の能力が使える。一体俺の中で何が起きているというのか?


 拓人は不破の目の前までやってくる。白毛で覆われた片腕を掴み、そしてもう片方の手を股の間に入れるとそのまま上に持ち上げようとした。しかし能力を重ね3メートル程の大きさに膨れ上がった不破を、簡単に持ち上げることは出来ない。そこで拓人はつむじ風を共に上昇気流を起こす。小さな竜巻が不破の足元から発生し、巨躯きょくが浮き上がった。


 「喰らえっ!!」

 風の助けを借り不破を頭上高くまで持ち上げると、その瞬間風向きを逆転させた。今度は滝の様な下降気流に呑まれ、不破は頭から床に衝突する。いわゆる背面から落とすブレーンバスターではなく、文字通りの脳天を砕くブレーンバスターだった。頭頂部を床に打ちつけた不破は、不自然な体勢で身体を引きつらせている。


 拓人本人も、まさか室内で竜巻を起こせるとは思っていなかった。小型の物ながら大したものだと自分自身で驚く。今なら何をやってもうまくいくのかもしれない。雫が傷つけられたというのに、何故だか少しだけ気持ちがワクワクとしてきた。

 拓人の目の前で不破が立ち上がった。怪物のような顔が怒りで更に禍々しいものになっている。今は普通の喧嘩なら負ける気がしないが、相手は20もの人外の能力を使う亜種の化け物だ。疾風の能力が使えると言っても、これでもまだこちらが不利なことは変わらないだろう。


 「ところで、何で拓人は能力が使えるようになったんや?」上条はファンに聞いた。

 「さあ? 詳しくはわかりませんが、ただ精神力が高い人は人外の能力の干渉を受けにくくなるっていう話です」


 「そういえば聞いたことあるわ。操作系の能力を持った奴がキョージンとタイマンになった時、奴には全くその能力が通用せえへんかったって」

 キョージンとは渋谷の住人が皆恐れている最強のセキュリティガード、ウエスタン警備保障の警備員の名だ。


 「つまり拓人くんはスターイエローが現れたことによってキョージンさん並に精神力が上昇したのかもしれませんねぇ」

 ファンは嬉しそうに笑ったが、上条は苦笑いを浮かべた。

 「キョージン並か。もはや怪物同士の戦いやな……」


 その間も拓人と不破の戦いは続いている。怒り狂った不破が砂塵さじんを撒き散らしながら襲いかかる。拓人は身を屈め不破の爪を避けると、懐に入り込みみぞおちに肘打ちをぶつけた。カウンター気味に急所を打ったが、不破には全く効いていないようだ。

 目の前に不穏な空気が張り詰める。するとその瞬間、不破は腹から衝撃波を放ってきた。至近距離でまともに喰らい、拓人は受け身も取れずに卒倒する。やはり能力が使えるようになっても不破に方が一枚も二枚も上手のようだ。


 不破が高く飛び襲いかかる。まだ起き上がれない拓人は仰向けのままつむじ風を起こすと、目の前に迫ってきた不破を天井近くまで跳ね返した。

 「ぐぐぐっ!」

 空中浮遊の能力で不破は高さ10メートルの位置で留まる。落下は防がれたようだ。拓人は立ち上がり天を見上げた。割れた窓の外からまた無数のバッタが集まりだし、不破の周りをぐるぐると飛び回っている。


 上に逃げたようだ。さてどうしよう? この超感覚状態がいつまでも続く保証はどこにもない。このまま空中で時間稼ぎをされるなら、風の力で飛び上がり奴の領域で決着を着けるという選択肢もある。


 拓人の周りに風が吹き、砂塵が巻き上がる。膝を軽く曲げ宙を見据えた時、天井付近を旋回していたバッタの群れが一気に降下してきた。同時に拓人の足元から強い上昇気流が生まれる。風とぶつかったバッタの群れは、脱穀機に入れた麦粒のようにバチバチと踊り次々と弾け飛んでいった。


 「そんなこけおどしが通用するかっ!!」

 拓人が吠える。弾かれたバッタの陰から、黒煙こくえんに包まれた不破が風を逆流し下降してきた。

 「グオオオオオオオオッ!!」


 更に風を強めても不破はひるまず突っ込んでくる。風で跳ね返すのが無理ならば、こちらから仕掛けるまで。拓人は飛び上がると、自ら不破を包む黒煙の中に飛び込んでいった。

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