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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter14 コロシアムの怪人
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†chapter14 コロシアムの怪人17

 自分の能力を不破に使用されていることに気付いた氏家うじいえは、何とも言えない表情でその姿を見上げている。


 「氏家くん、不破征四郎はね……」「ここにいる全員の能力を盗んだんだろ?」

 佐伯の言葉に、氏家はすぐさま返答する。頭の回転が速い。ただのマッチョではないようだ。


 「そうです。どうやらヘロインプラスを摂取した影響で『結界』の能力が変化が生じてしまったようです」

 「何だそれは? 麻薬には能力を変化させる力があるのか?」

 氏家は首を捻る。だが実際に今の不破の姿を見たら認めざるを得ないだろう。


 「それで、アレに勝つ算段はあるのか?」

 氏家はそう聞く。だが今のところ有効な手立ては見つかっていないため、誰もそれに答えることは出来なかった。


 「倒す方法が見つからなくて丁度困っていたんですよ。ただ若獅子は異形の持つ強力な力を恐れていたようでしたから、何とかして捕らえられている氏家くんたちを救助出来ないかとは考えていました」

 「はあ? 俺らを……?」

 氏家はみくるに目を向ける。だがみくるは、その目線が合わないように大袈裟にそっぽを向いてしまった。


 「成程な。けど助ける前に、俺らの方が勝手に出てきちまったわけか」

 「そうや。折角俺が、お前らが閉じ込められていた部屋の鍵を開けたんやで」

 上条に言われ、氏家はその開かれた扉に目を向けた。


 「まあ、お前らの命運を俺に託されても困るがな」

 そう言うと、氏家はわざとらしく大きな溜息をついた。


 確かに拓人も異形の2人が解放されたからといって、不破を倒す手段になるとは思っていない。ただどうすることも出来ない焦りから藁をもすがる気持ちで、異形を解放することに賭けただけなのだ。


 「ところで、ファンくんは異形じゃないよね? 何でこの2人と一緒に捕まってたんだ?」

 拓人が聞くと、ファンは抱えていた大きな巾着袋をドサリと床に置いた。

 「いえいえ。僕はデーンシングに捕まってはいません。ある人に頼まれて外からみくるさんを救出に来たんですよ」


 「ある人……?」

 それは琉王さんの事だろうなと拓人は思う。もしもクラウディが琉王で間違いないのなら、彼は若獅子の命を狙うためにこの近くに潜んでいる可能性がある。


 「まあ結局潜入したものの、入ってきた換気口を塞がれてしまって、最終的にはこんなところに出てきてしまいましたが……」そう言うとファンは、釣り上がった目で猫のように笑ってみせた。


 「何だ、そうだったのか」

 一瞬、脱出出来るかもしれないという希望を胸に抱いた拓人だったが、それを聞きがっくりと肩を落とした。


 「けどその代り、ここに来る途中のにあった別の部屋で皆さんの荷物らしき物を回収してきましたよ」

 ファンはそう言って、床に置いた巾着袋の口を開いた。


 「何?」

 すぐに反応したのは巡査だった。小走りで駆け寄ると、その大きな巾着袋を漁りだした。財布やらスマートフォンやらを手にしては次々と床の上に投げ捨てる。


 「找到了ヂャオダオラォ!」(見つけた!)

 巡査は欲しいおもちゃを目の前にした子供のように目を輝かせる。彼の手には愛銃であるベルギー製のオート拳銃、ブローニング・ハイパワーがあった。


 「それは巡査の銃だったんですね。モデルガンかと思いましたけど、まさか本物だったとは」

 ファンが言うと、巡査は立ち上がり蛇のような目で天井を睨みつけた。

 「これがあれば奴を倒せるかもしれん」


 「お役に立ちそうなら持ってきた甲斐がありました」

 目を瞑り頷くファンに、巡査は柄にもなく礼を言った。

 「謝謝シェシェ

 「不謝ブーシェ」語学堪能なファンは中国語で返す。


 「何や今日は随分素直やな。俺に礼を言う約束も忘れんなや」

 上条が言うと、巡査は上に向かって銃を構えた。

 「覚えているさ。だが貴様との約束は生きてここから脱出してからだ!」

 叫ぶように言うと共に銃声が鳴った。銃弾は黒煙の中の不破の顔面目掛けて飛んでいったが、キンッという音と共に何かに当たり弾かれてしまった。恐らく『障壁』の能力だろう。


 「障壁の能力は凄いですね。銃弾さえ跳ね返してしまうんですか?」

 佐伯は言ったが、その能力の持ち主である三浦は懐疑的かいぎてきな顔をしている。

 「障壁はその大きさによって強度が変わってくる。巨大なものにすれば強度は脆くなるが、面積を最小限におさえればより強固な盾になるだろう。だがさすがに銃弾を弾くまでの力があるとは思えないな」

 ということは、やはり奪い取った全ての能力がヘロインプラスの影響で強力になっていると考えて間違いないようだ。


 その後巡査は立て続けに3回発砲した。だがいずれの銃弾も、不破に当たる前に障壁によって弾かれてしまった。

 「銃弾の飛んでくる位置を見極め、それを掌ほどの小さな障壁で防いでいるみたいだ。人間技じゃない……」三浦はギリギリと奥歯を噛みしめる。


 黒煙と飛びまわるバッタの中から、化物と化した不破がその姿を現す。『人狼』の能力により灰色の体毛で覆われていた上半身が純白の毛に変わってしまっている。そして大きく口を開くと「グオオオオッ!! グオオオオッ!!」と2度、雄叫びを上げた。やはりどうにも精神的に不安定のようだ。


 「ようやく第2ラウンドの始まりか?」

 拓人は両足を力を込めると、天に向かって身構えた。

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