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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter14 コロシアムの怪人
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†chapter14 コロシアムの怪人05

 宮益坂病院を後にした拓人と雫は、スコーピオンの蛭川ひるかわ英二と共に公園通りを代々木公園に向けて歩いていた。蛭川がついてくることに関して雫はあまり良い顔をしていなかったが、当の蛭川は「黒髪が一緒なら百人力だよ。ハハハハハッ」などと笑いながら半ば強引についてきてしまっていた。


 「けど頭が痛かったらまともに戦えねえだろ? 頭痛薬とか持ってないのか?」

 拓人が言うと、横にいる雫が背負っているキャンバスリュックの両方の肩ベルトをぎゅっと掴んだ。頭痛薬は持っているが渡さないという意思表示だろう。


 「はぁ? 俺、鎮痛剤アレルギーじゃんか。頭痛薬とかマジ無理だから」

 「いや、知らないけどさ。ていうか、片頭痛持ちなのに頭痛薬飲めないのかよ。凄いジレンマだな」

 拓人が少しだけ同情すると、蛭川は何故か誇らしげに顔を上げた。

 「まあ、能力が覚醒したばっかの頃、胃が荒れるほどロキソニン呑みまくったからな。しゃーねぇよ」

 過ぎたるは、なお及ばざるが如しということのようだ。


 「それにしても、鎮痛剤が呑めないんなら医者に行ってもしょうがなくないか?」

 「点滴でも打って貰えるかなっと思っただけだよ。それに病院に行った本来の目的はお見舞いだしな」

 「お見舞い? 知り合いが入院してたのか?」


 「ああ。ニュースにはなってないから知らねえかもだけど、うちにいる犬塚ってメンバーがスクランブル交差点でデーンシングに背中を銃で撃たれたんだよ」

 「……へぇ」

 それを聞いた拓人の瞳孔が僅かに開く。そうか、犬塚の奴もあの病院に入院していたのだな。


 「それでその犬塚って奴は無事なのか?」

 「さあな。ICUだかなんだかに入れられて面会謝絶だってよ。まあ、丈夫だけが取り柄みたいな奴だしそのうち治るだろ」

 蛭川は楽観的にそう言って笑った。ただその笑っている目の奥には、微かに悲愴感が滲みでていた。面会にも来ているくらいだから、蛭川に取って犬塚は大事な友人なのかもしれない。


 「そうか、治ると良いな……」

 拓人はドレッドヘアーが暑苦しい犬塚の顔を思い出す。あいつとはもう一度しっかり決着を着けなくてはいけないからな。


 渋谷市役所前交差点の横断歩道を渡り、代々木公園の敷地内に入る。この辺りで上条たちと待ち合わせているのだが……?


 「だいたいさあ、あそこの医者はおかしいんだよ。でかい病院のくせに『メビウス』の1つも設置してないんだから。普通置いてあるだろ? メビウスがあれば俺の頭痛もある程度治まるってのに……」

 蛭川の言うメビウスとは特殊な高周波で、その干渉を受けると亜種は人外の能力が使うことが出来なくなってしまうのだ。


 「あっ」

 何かを思い出した拓人が雫に目を向ける。

 「どうかしたの?」


 「今ふと思ったんだけど、メビウスが設置されてる医療機関なら琴音ちゃんのこと助けることが出来るんじゃないか?」

 人外の能力が使えなくなれば、琴音を覆う氷塊もきっと溶けるのではないか? 拓人はそう考えた。


 「いやそれはどうかな?」

 「なんで?」

 雫にそう聞き返したその瞬間、目の前から黒いスーツを着たがたいの良い集団が物々しい雰囲気を漂わせ歩いて来た。あれは、デーンシングの連中か?


 振り返り逃げ道を確認しようとすると、後ろからも同じような集団がぞろぞろと集まっていた。囲まれてしまったようだ。

 「やばいな。ありゃあ、デーンシング東京支部の構成員だ」

 蛭川が小声で言うと、正面にいたサングラスの男がいきなり大きな声を上げた。


 「お前らさっきの2人組の仲間だな? 悪魔の能力者について聞きたいことがある。黙ってついてきて貰うぞ」

 拓人のこめかみかに冷たい汗が流れた。悪魔の能力者とは竹村亜樹のことだ。そのことを聞いてくるのだから、男の言う2人組というのは、ここで待ち合わせていたのに姿が見えない上条とみくるのことで間違いないだろう。


 「……2人は無事なのか?」

 それを聞き男は首を傾げる。ライトミラーコーティングのサングラスが冷酷な青い光を宿す。

 「言葉が通じないのか? 黙ってついてこいと言っているのだ」


 互いに牽制し合い、数秒の沈黙が流れる。拓人自身、1対多数の戦いは得意とするところなのだが、今回の相手はざっと見て50人は下らない。あまりにも人数が多すぎる。果たしてどうやって乗り切ったら良いものか?


 その時、蛭川が動いた。ぐるりと回転し周りを睨みを効かすと、黒いスーツを着たデーンシングの構成員たちが皆一様に頭を押さえだした。彼の持つヘッドクエイクの能力だ。

 「ここは俺が食い止めておく! お前らは先に進めっ!!」


 「この人数相手に1人で大丈夫か?」

 拓人が聞くと、蛭川は青白い顔でにやりと笑った。

 「片頭痛の時の方が、ヘッドクエイクの調子が良かったりするんだよ」


 「馬鹿なっ! この程度の能力でひるむ我々ではないっ!!」

 サングラスの男が叫ぶと、蛭川は腕を伸ばし男に掌を向けた。

 「俺が背負った原罪げんざい、お前たちにも味あわせてやるっ!」


 「キンッ!」という金属がぶつかりあうような音が鳴る。

 「ぐあっ!!」

 サングラスの男は両手で額を押さえると、胃の中の物を吐き出しながら地面に倒れた。


 蛭川自身も苦しいのか、口を押さえると目を真っ赤に腫らしながらゆっくりと何かを呑みこんだ。

 「はぁ、はぁ。敵であるお前らに頼むってのも癪に障るが、背に腹はかえられねえ。不破さんのこと頼むっ!」


 「……ああ、わかった!!」

 拓人と雫は共に疾風の能力で前に突っ込んで行くと、顔を歪めている構成員たちを素手と特殊警棒で殴り飛ばしそのまま北の方角目指して駆け抜けていった。

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