幼い少女の冒険譚13【ホログラム】
「マイン……本気で乗っ取られちゃったのね……」
数百メートルほど離れた場所にある岩陰に隠れていたリナはそう呟いた。
「あれ私が行ってても死んでたわ……」
リナが見る先には根気で作りあげたホログラムの自分が切られる姿。
マインの渾身の一撃によりホログラムは消えてしまったが、心から自分が行かなかったことに安堵する。
「嫌な予感して一応使っといてよかった……。でも、どうすれば元に戻るの……」
手元にあるもう使えなくなったホログラムの自分とを繋ぐ魔法陣をパッと手で消しながら、今も尚無言で剣を構えるマインの背中を見る。
そんな苦悩もつゆ知らず、優雅に空を飛び続けるガンドレアクは、次は何処を破壊しようかと模索しているように見えた。
「でもマインの意識は戻りかけてたし、きっと声は届いてるよね……」
一瞬素に戻ったマインを思い返し、心に訴えかけて戻ってきてもらう……? と色々な案を考えるがどれも成功確率が低く、あっけなく死ぬ未来が容易に想像できた。
それに、周りで倒れている冒険者の中に息をしているものはいない。完全に孤立したリナが出来ることは本当に限られていた。
「これなら眠らせれるけど……。ガンドレアクには届かないし……」
バックから投擲アイテムである眠り玉を取り出したリナは、マインだけなら眠らせれるかもと投擲を試みる。
「ふんっ!」
とりあえずマインさえ落ち着いてくれればと全力で投げた眠り玉は、綺麗な放物線を描きマインに向かって飛んでいく。
「よし! 当たる!」
背後から飛んでくる眠り玉に気づかないマインは剣を構えているだけで、当てるのは簡単だった。
はず、
「…………っ!」
「え」
スパンッ!
直後、目にも見えない速さで紫紺の短剣で一閃され、眠り玉は効力を発することなく地面に落ちた。
それどころか、
「……ッ!」
「やばい! 気づかれた!?」
視線をリナの方に向けたマインは、一瞬で加速し、リナが隠れる岩の前まで到達する。
リナはというもの、何一つ反応速度が勝ることなく、目の前に現れたマインに目を丸くするだけ。
リナの脳裏に死がよぎる。
完全本体の自分は切られたら即アウト。もう未来がない。
「ま、マインっ! しっかりして! 私よ!!」
「……………」
直後リナが隠れていた大岩を切り払ったマインは、無言でリナの前に足を進める。
「ね、ねぇってば!」
「……………………」
それでも歩みを進めるマインは、今度こそ殺すと言わんばかりに、紫紺の短剣を思いっきり振りかぶり、リナの首に向かって振るった。
「……っ!!! マインのバカァァァァァァッ!!!!」
もうダメだと涙を流しながら震えるリナは、その短剣が自分の首を切り裂くのを待ち――
「これじゃ、街の勇者じゃなくて街の反逆者じゃねぇか……」
「っ!!」
キーーーンッ!!!!
と、鉄の音を鳴り響かせたのは、マインの持つ紫紺の短剣とギルドマスターの大剣だった――
「嬢ちゃん、大丈夫かい」
今話もお読み下さりありがとうございます!!
実は私昨日誕生日を迎えました。
晩ご飯は丸美屋の麻婆豆腐という普通な一日でした!!




