幼い少女の冒険譚3
色々わかりづらいと言われたのでタイトル少しだけいじりました。
『グボォォォォッッッ!』
「くっ……!」
背後からの【エンシェントゾンビ】の攻撃を間一髪かわしたランは、まだ死ねないっ! と崩れていた足にムチを打ち走り出す。
「リンだけは死なせない!」
『グボォォォォッッッ!!!』
唯一の退路も絶たれたランが取れる手段は強行突破しかなかった。
幸い【エンシェントゾンビ】の耐久値は特に高くないため、魔法一発で戦闘不能まで追い込むことは出来る。が、圧倒的数のせいで魔力切れを起こしてしまうのも時間の問題だった――
「はぁぁぁぁっ!!!」
『グボッ!』
「……! くっそがぁぁぁ!!!」
『グボォォォォッッッ!!!!』
水の刃を飛ばしつつ、走っていたランの魔力がとうとう底をつき始めていた。
魔法行使を最小限に抑え、一回の攻撃で複数を倒すよう心がけているが、倒せば倒すだけ増える相手に息をつく暇すらない。
精神が乱れ魔力も無駄に多く使ってしまう。
(やばい、このままじゃ……)
ムクリムクリと起き上がる【エンシェントゾンビ】に顔を引き攣らせながらも、どうにか攻撃をかわしつつ通路まで逃げることに成功した。
が、
「いっ……!!!」
『グボォォォォッッッ!!!』
それは最初に見せられた天井を散々破壊した馬鹿力による強烈な右フック。一瞬にして吹き飛んだランは風魔法で受身をとろうとするが、魔力が足りず中途半端な受身をしてしまう。
「ちょ……まじでやばい……!」
『グボォォォォッッッッ!!!』
右手に持っていた短杖も吹き飛び、いよいよ生身の人間となったランは立ち上がることは愚か、声を上げることも出来なくなった。
(どうする……!)
今だとばかりに群がり始める【エンシェントゾンビ】を横目にランは頭を最高速で回転させる。
魔力は尽き、短杖も失ったランに出来ることは正直何も残されていない。
ただ鼓動が速くなり迫り来る死を実感しながら汗を流したランは、もうダメか……と目をつぶる。
(ごめんねリン……私もう――)
眩しい笑顔のリンを思い浮かべたランは、絶対生き延びてねと涙を流した――
その時だった。
モンスターだらけの巣窟にか弱い声が響き渡る――
「お姉ちゃんから離れろーー!! ウォーター!!!」
『グボ?』
「………………!」
どこからともなく降り注いだ少量の水に目を開けたランは、その姿に目を疑った。
「リ、リン……なんで…………」
そこには服をボロボロにしながらもニッコリと笑うリンの姿があった。
まだ一個しか魔法を使えない可愛い妹の姿が――
「なんか杖離したらそのまま逃げれた! ってうわぁ!!」
『グボォォォォッッッ!!』
「…………っ! やめろ!」
そんな双子の感動など知らないと【エンシェントゾンビ】は、容赦なくリンを襲う。
殺傷力のない魔法をくらい、拍子抜けだとばかりに高く持ち上げられた豪腕は、リン目掛けて真っ直ぐに振り下ろされる。
「お姉ちゃ――」
「リンっ!!!!」
『グボォォォォッッッ!!!』
動け! と起き上がろうとしたランは瓦礫に足を取られ転倒する。
せっかく出会えて、臆病でビビりの妹が笑いながら助けに来てくれたのに、私はっ! と歯を噛み締めたランは、体の底から打ち震える。
「くそがァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!!!!!!」
しかし、
グシャ――
「…………………………あ」
そんな悲痛の叫びも虚しく、ただただ鈍い音が鳴り響くだけだった――
この世界に神なんて居ない――
お読み下さりありがとうございます!!




