師匠
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
『ギギギッッ!?』
両手に矢を持ち、華麗に舞うミルクの姿は弓使いではなく剣士そのものだった。
「おいおい! ミルクの本気やばすぎだろ!?」
ナナミとリンを壁によしかからせながら見守っていた俺は、荒れ狂う髪をも置き去りに次から次へとモンスターを倒すミルクの化け物じみた力に戦いていた。
「てかそんな力あるなら最初からやってくれよな!?」
なんでこのタイミング!?とツッコミを一応入れるが、もうこの際どうでもいい。そんな俺の声にごめんってぇ!! と言いながら矢を突き刺し続けるミルクは前方のモンスターを狩っては、背後、時にはギリギリまでモンスターを引き付け、モンスター同士をぶつけスタンさせる荒業まで披露していた。
「ちょっといい加減終わり見えてよっ!」
『グァァァァッッ!!』
次から次へと襲い掛かるモンスターに大量の汗を浮かべるミルクは、苦し紛れに笑顔を作り、自分をある人にトレースさせていた――
「師匠の力、借ります!!!」
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「この下手くそぉぉぉっっ!!!」
「ご、ごめんなさい!!!」
「謝る暇あったら腕立てしなっ!!」
「はいぃぃぃ!!」
チア王国王城庭――
ブロンズの髪を靡かせるエイリーンは、目を釣りあげながらミルクに激昂する。
そんな鬼教官エイリーンにお尻をぺちぺち叩かれ、ミルクは、はひ! はひ! と涙を浮かべながら腕を折る。
白を基調とした王城が太陽に照らされ輝く中、その隣にあるこの小さな庭はエイリーンの怒りとミルクの汗で地獄の格技場へと進化を遂げていた。
ちなみに、この庭はエイリーンとミルクが唯一会う事が出来る秘密の特訓場であり、王女候補のミルクにとって唯一自由でいられる空間だった。
誰にも見られては行けないこの関係を知る者はミルクの世話係であるチェイサーだけ。王族のミルクにとって特別で、とても幸せな時間――
「ひっ、ひっ、ひっ!」
「ほら、腰ぃぃ!! 尻が下がってる!」
「はひぃぃぃ!!」
もう無理ぃ! とふにゃふにゃになりながら腕立てを続けるミルク。その横でエイリーンは、全く……。と綺麗に的から外れた全ての矢を見て深いため息をつく。
「ったく、あんたはどれ程不器用なんだか……」
ミルク・サトー、年にして十二歳。
王女訓練の際に獲得した王家の能力は無属弓と無窮矢をいつでも召喚できる永遠の主。
多属性を操れるその弓と無限の矢は最強の能力と噂されたが、その噂も蜘蛛の子を散るように無くなった。
その命中率の皆無さによって――
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