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後者への願い


「けほっけほっ」

『ケケケケケケ』

「ちょっとやり過ぎじゃないですか……」


 爆音の割に無傷なダンジョンの壁に手を当てながら、煙の中をムクリと立ち上がったルカは、ケケケと目の前で浮くピエロではなくその奥に向けて声を発した。


「悪ぃ悪ぃ、そんくらいしねぇとアイツ逃げねぇと思ってなぁ」


 路地の奥の部屋(ルーム)からコツコツと足音を鳴らしながら現れたのは赤毛の男、ガランディアだった。

 そんな己の主に勘弁してください……。と苦笑を浮かべたルカは槍を地面に突き刺し、再び膝を折る。


「てかよぉ、お前ら遅すぎなんだよ」

「すみません」

「まぁいいけど、例のモノさえ手に入れればな?」

「はい。しっかりと回収してきました」


 そう言って忠実に接するルカは懐から赤い石を取り出し、今も立ちこめる煙の真ん中で掲げた。


「それだそれぇ! よし後はあの女を殺すだけなぁ! 行くぞミカルゲ!!」

『ケケケッッ!!』


 そう言ってルカから赤い石を受け取ったガランディアは、その腕に使ってやれ、と高等回復薬(ハイポーション)の入った試験管を手渡し、鼻歌交じりに足を進める。

 それに連なってミカルゲと呼ばれたピエロは、ケケケと笑いながら後ろを着いていく。


「あの、ガランディア様……私はこの後……それに約束は……」

「わぁってるわぁってるって! とりあえずあいつを殺したら約束は果たしてやる、それに今火竜を使っててよぉ、ちょっと俺もギリギリなんだわぁ」

「……!」


 火竜という言葉に驚きを隠せないルカは、試験管の口を開けたまま固まった。


(どういう事なの……? あの火竜を使う程の……。リクさんが?)


 冒険者ですら無く、今の今まで荷物持ちならぬ人持ちだった彼の何処にそんな価値があるのか分かり兼ねる、とルカは目を細める。

 そんなルカの表情一つ見落とさないガランディアは、あっけらかんとした声でその答えを口にした。


「くくっ、なーんも不思議な事じゃねぇ、お前も分かるだろ? 俺と同族なんだからさぁ。ウザイ奴、死んで欲しい奴はいたぶって殺すのがセオリーだろぉ?」

「私は……!」


 そう言って目を背けるルカに苛立ちを覚えたガランディアは、口をぽかんと開けながら首を傾げる。


「はぁ? 今更いい子ちゃんぶる気かよ、誰がお前らを孤児院から引っ張ってきたと思ってんだぁ? お前みたいな人殺し俺じゃねぇと引き取らねぇぞばぁか!」

「……」


 ぐうの音も出ないとばかりに口を紡ぐルカを見て、くははっ!! と上を向きながら笑ったガランディアは、いいからさっさと着いてこい奴隷! とルカに手招きしたあと、今度こそ振り返ることなく足を進めた。



「違う……私は…………っ!」



 その後ろを着いて行く事しか出来ないのは、過去の自分の行いのせいなのか、今も腕に装着されている腕輪のせいなのか、ルカの頭の中で後者であって欲しいとただ願うばかりだった――

 


 


 

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