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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第2章 波乱な8歳前半の歩み(〇〇式英才教育基礎レベル実践編)
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84 秘密の契約は王宮の片隅で

 読者のみなさまどうもこんばんは。ブックマークありがとうございます!


 今回は割とシリアス回です。それでは今週の不憫をどぞ!




「本人に殺されかけたのだ…父親、現国王陛下にね。ある日密室に呼び出されて、ね。」



 殺されかけたかぁ…まあやっぱりそうなるだろう。内心そんな状態なのではなどと半ば予想していたので特に驚きはなかった。


 ミスティフコッカス共はそれで一度失敗しているのだからそりゃそういう行動に出てもおかしくはない。


 感染できそうにない者へ無理矢理感染しようとした結果免疫機能と思しきカウンタープログラム(魔力)が発動からの大破。そのまま連鎖して全滅。前回大規模感染で滅んだ旧ダンガローダ王国で奴らが一気に死滅したのはそんなオチなのではないかと考えた。


 だが、それを抜きにしてもそりゃ仮にも感染できない相手を生かしておこうとは思わないだろう。



 …予想外といえば、またもや(・・・・)王族が『感染しない者(免疫を生まれつき持つ者)』であったことである。そっちの方が正直驚きであった。


 それとも各国の王家血族にはそんなプロテクトか何かがかかっているのだろうか。ここが剣と魔法(ファンタジー)の異世界である以上はあり得る。科学中心に発展した地球でさえも日本ならば探すと未だファンタジー案件?はあったりなかったりするのだから。



「…なんというか、頑張ったな……」



 思い出して涙目になっていた5歳児…本当に頑張ったな。そんな思いを込めて頭を撫でた途端、今までの感情が爆発したのかワンワンと泣き出してしまった。


 しゃくりあげながら必死に言葉を続けた。



「そのあと兄上は無関心になりあれほど仲睦まじく在られた婚約者を…私は庇護してくれる者が誰もおらず、そのうち武の心得もないような給仕の者にまで殺されかけた。」



 親に甘えたいような年頃だろうに、不憫でならない。その親の中身がある日変わって命を狙われ、庇護してくれた兄もある日豹変し…



「護衛・給仕の連中も異常、か…」



 だが、言われなくとも状況を見れば確かにそれはその通りであると言えた。さっき王子を保護した際見たメイドを思い出して再度納得する。


 なんというか…ここで見た全員機械仕掛けの人形みたいな印象を受けたのだ。


 表情は全員同じで口角を上げているだけの笑顔。歩く幅は足の長さが違うというのに幅は揃っているように感じた。加えて一貫性のあり過ぎる動作。何やら気持ち悪いとひどい違和感を感じ失礼を承知で観察した結果、恐ろしいことに呼吸のリズムから目の瞬きに至るまで全員同じだった。


 だが、それだけではなかった…


 まずすでに気づいているかもしれないが、エリスさんとトパーズさんの変態行動や奇声に対するリアクションが一切(・・)ないこと。王宮勤務の連中は基本身分も貴族階級出身が多くあんな状態を知れば後で陰口叩くことはむしろ普通なのに。子供であるこの身を最大限り利用して忍び込んでもそんな連中はいなかった。


 どころか、眉をひそめた連中まで皆無…全員同じ笑顔のまま。これはどういうことか。


 人形(ゴーレム)ならば無いはずの体温があるので全員生き物ではあるが、なんだか同じ"生きている"人間であるとは思えなかった。


 そしてその血の通っていないかのような対応は、王子を飢餓状態になるまで放置していたことへも通じている。


 確かに王から通達されれば王の子供とはいえ直接害を加えずとも放置することは仕方がない。王の権力は絶対の世の中である。表立って助けることは当然できないだろう。だが、それでも食物をこっそり隠れ与えることは可能だ。それ以外でも、方法はいくらだってある。


 だが、王は殺害するように通達は出していなかった。


 いい大人、それも王宮に出入りするような教養や礼儀の行き届いた基本上品な環境で生育された連中。そいつらがまさか王に嫌われたからという理由だけで王の子供を完全放置どころか手出しすることは、まずありえない。確かに王が殺そうと態度に示したが、始末するよう直接指示は出していないのだから。


 まして、王子の親である王妃様のご実家から来たはずの使用人・側近から何のフォローもない。せめて王妃のご実家に逃がすことはできたはずなのに、一緒になって殺しにかかってきたと言っていた。


 何度も言うようだが、王は直接害すよう指示(・・)はしていない…おそらく王自身の意識が残留しており抵抗した結果なのだろう。


 あれだけの側室の数から察するに女癖は悪いのだろうが、身内には今まで割と甘かったことは依頼受諾の際得られた情報で知っていた。特に自分の息子が起こした上位貴族とのトラブルを何度かもみ消しているところなど見ると、本気でそうとしか思えない。


 …だからこそそんな王の甘さに付け込んで王宮で王位争いとか勃発していたのだろう。そして分かっていても罰しなかったらしい。


 案外それが原因で今回のことにつながったのかもしれない。


 しばらく泣き止みそうにない様子の子どもの鼻水を拭いてやり、再びみかんもどきを剥いて絞り始めた。脱水症状も出ていたのにこうも泣けば色々危険だ。



「…全部とは言わんが、なんとかするか。」



 さすがに口調とか態度は海千山千魑魅魍魎はびこるこの恐ろしき場所で生存してこられただけある。口は立つし対応や頭の回転速度も大人並、親下手な大人顔負けだろう。それでも子供である以上はできることに限界がある。


 第一、こうして生き残っただけ十分すごいことだ。



「本当、こんな場所でよく生き残ったな。」



 ジュースをあげながらポツリとそんな言葉が出た。だが実際それは紛れもない本心であった。


 この子供は私のような転生者でもなければチート超えて理不尽に強い親父や魔王みたいな庇護者…かどうか別として、守ってくれる大人や守れるだけの実力へ鍛えてくれる大人は皆無だった。


 逆に大人全員から命を狙われ物陰に隠れ、こうして私へ接触してきた。


 ひもじく寒い、そして怖いし寂しい…だが何より王宮から逃げ出さなかった。普通ならばさっさと王宮を抜け出して何とか逃げそうなものだがそれをせずに王宮で何とかしようとしていたのだ。


 その証拠に、ほら来た。



「…こんなこと頼むのはおかしいとわかっているのだが「王宮の連中を元に戻してほしいってところかな?いいよ、報酬もらうけど」…やっぱりだめ、へ?」



 驚いた顔でこちらを見上げる子供。鼻水が垂れていたのでハンカチで拭ってやった。



「いやだから、王宮の宝物庫からいくつかくす…永久に借り出してもいいよってことなら正常にしてあげてもいいよ?もちろんその際には一筆もらってから血胤ももらうけど。」



 え?自力で盗まないのかって?


 そこはほら、やっぱりもらえるなら正式にもらったほうがいい。正確には『もらっていい』という公認の許可書さえいただければ後は勝手に欲しいものを欲しいだけ亜空間の鞄へ詰め込むだけだ。


 そうすれば追っ手とかつかないし面倒がないだろう?詐欺?きっとそれは君の気にしすぎだ。


 内心そんな下衆らしいことを考えながら相手の様子を伺ってみると…どこからともなく契約書出して既に契約を済ませている、だ、と……



「はい、よろしくお願いします。」



 マジで?いいの?本気?


 取り消しは効かないし後から無かったことにしたら間違いなくメテオの餌食になるよ?いいのか本当なのか…というか本物である。



「…わかった、ならそうだな……この王宮を体力回復したらまず案内してくれ。何がどこにあるかわからないとどうにかできることもどうにもできない。」



 それから…これ結構重要だが。



「感染が始…いや、豹変が始まった時期が今からどのくらい前であるか、それと豹変前後で王宮に変わったことがあったか…それくらいかな?ともかく情報が必要。場合によっては手遅れかもしれないし。」



 そうだ、その可能性があった。



「…手遅れならどうしてほしい?」



 王子は眉をますますハの字にしながら答えた。



「……その場合は息を止めてあげてください。」



 間があったのはおそらく本心としてはそんなことが起こってほしくないからなのだろう。だがそう言っていられないかもしれない。残酷なようだがこの辺はこちらも依頼受諾者として聞いておかねばならんのだ。



「なら依頼内容を確認する…



 王族の面子をなるべく元に戻す。


 手遅れなら苦しまないよう眠らせる。


 報酬は王宮のすべての宝物庫からの永久借用権。



 後の細かい部分ははまあ情報をもらってぼちぼち決めていけばいいとして、これでいいな?」



「ああ、フロレンシオ・パウロ・ドミニク・アルベジオ・カルロス・ゴザレス・デ・ドラムレーンがこのことを我が先祖と我が家を加護する神"バルボッサ"の名の下誓う。」



 (微妙にみかんもどきの汁が混じったかもしれないが)血胤が押された。


 すると、空間に歪みが生じた。




"汝の言葉、聞き届けた。"




 その言葉と同時に契約書が発光し、霧散した。見ると、光は王子の右頬に何らかの印を形成するかの如く集まりだした。唖然と見ていると、光は一瞬強い輝きを撒き散らした後綺麗さっぱり無くなった。


 残ったのは、黒色の印。


 王子はこちらを見ると、頭を下げてきた。



「頼む、これで王家を、いや、家族を救ってくれ!」



 ため息をついて頭を掻く…やれやれ、元は真面目に助ける気は無かったのに。仕方がないか。


 契約で、真剣な気迫がこちらに伝わった。


 だからそれに当てられたのか、こちらもこう、本気を出されたなら応えてやらんといかんなどと思ってしまった。そういう空気に中てられたと、言うより日本人らしく空気を読んだというか。



「了解したよ。その依頼、この『ラインハルト・レイン・フォン・フォウスティウス』が引き受けた。」



 名前の最後に気づいたようで、軽く反応を示した…よく勉強をしているようだな。まあどうでもいいが。


 とりあえずフォウスティウス家としてもミスティフコッカスと因縁があるし、依頼と依頼ついでに滅ぼしてもいいよね?誰も文句言わないよね?



 よし、明日から本気出す。




 思えば、ライくんのフルネームしばらくぶりに出ましたね。


 そしてスペイン語名は結構長いことが判明…フロレンシオくんの名前を決めるのに一番時間がかかったかもしれないです。スペイン人の名前の規則として彼の父、祖父、曽祖父…までの下の名前を考えることになってあまりに可哀想な名前は悪いと思い、考えてました。


 調べたのですが間違っていたり変だったりするかもしれないです。すいません。発見した方々、できればやさしく指摘していただければ幸いです(_ _;)

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