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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第2章 波乱な8歳前半の歩み(〇〇式英才教育基礎レベル実践編)
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81 道中のアレコレはかっ飛ばされました

 読者のみなさまどうもこんばんは。ブックマークありがとうございます。


 それでは今週の不憫をどぞ!




 …トイレ渋滞事件もあったが、まあとりあえず出すもの出したらすっきりしたので早速出発することになった。なお、腹下しの原因作った親父はしばらく冒険者メシの刑に処すことにした。


 ついでだが、ここでギルマスとは一旦お別れである。



「ここに王子が囚われているらしい。」


「いいかライ君、しっかり誘拐してくるんだよ。」



 平凡な元変態野郎アランの集めたデータ。それを元にレミィリアさんが千里眼的な技で首都の情報をしっかり教えてくれた。どうも昨晩酒の入った勢いでやったらしい。最後の方大分深夜テンションが深くなっていたので思わず納得である。


 そんなコンディションで探ったのに相手が感知しなかったところを見る限りだと、やっぱり王都なのに警備はザルらしい。きっと王宮を囲っている結界の費用をケチっているのだろう。


 そんな状態だから術式が下手なミスティフコッカスに付け入られたのだろう。思わず納得である。


 きっと魔王が見たら切れて全員地獄巡りになるに決まっている…そしてそんな相手にしくじった日には私はどうなるか。モザイクならまだ良い。だが、おそらく花畑か"少々お待ちください"画面が本人へ被せるように映る惨状になるのは間違いない(=放送禁止状態)


 思わず4歳児の地獄の修行時代長耳族に敗北した後を思い出してしまった。同時に心拍数と息が上がって動悸がしてそして頭から血の気が引く…これは一体。膝まで震えてきた。風邪かな?



「ん?どうした?」


「不安があるのか?」



 とりあえず、やることは一国の王子を誘拐するというなんとも犯罪めいた、いや、犯罪そのものだが仕方がない。良心が痛まないのもきっと仕方がないことなのだろう。


 勝てば千金負ければ地獄巡り…今度こそおじいちゃんの飛び蹴りがあっても河原越えちゃうかもしれない。



「…いや、ちょっと思い出し武者震い。」



 うん、これは怖くて怯えて震えているわけじゃない。単なる武者震いである。武者震い。大事なことだから2回言った。


 気合を入れてことに当たらねば。



「じゃあそっちは任せました、ギルマス。」



 割と(自分にしては珍しく)真剣な顔でギルマスへお願いする。これからギルマスは一旦国へ帰るわけだがその際公爵の冒険者カード(身分証明書)を使って誘拐された子供を送り届ける役割があるのだ。それの成功次第では物理的にメテオで地形ごと戦争を潰すかどうかが決まる。



 すなわち、国境付近の土地の明暗はギルマスの手腕にかかっているということである。



「え、ええと…無理するなよ?」


「いえ、できる限り最善を尽くさせていただきます。」



 まだ死にたくない。そんな思いから今回はサクッと攫ってついでに王宮の宝物庫から迷惑料とか色々きっちりもらっていかないと。そんな決意を新たに、変態共と出発するのだった。




◆□◆◇◆□◆◇◆□◆◇◆□◆




 王都ドレズレーナ到着。



「…最初のグダグダは一体何だったのかな……」



 そんな風に思えてならないほど特に問題も起こらず淡々と道を歩んで。結果たった半日で首都に着いた。半日である。本当に明日は三千世界の鴉を焼き鳥に変える伝説の槍でも降ってくるだろうか。


 そう、あれだけ行き始めは道中イベントだらけだったのに、これが驚くほどあっさりと何も起こらなかった。


 本当なら盗賊とか刺客が出てきてもおかしくないはずなのに、何もなかったこと。本当に異常事態である。せっかく襲ってきたら逆に小遣いせびろうかと思っていたのに。とんだ肩透かしである。どうしてくれよう。


 本気で貴族ボンボンな世間知らない子息役を道中の揺れまくる馬車の中で頑張ったというのに。滅茶苦茶気持ち悪がられ、こちらも気分悪くなったのに。


 ま、まあ確かに馬車用の馬が入手できたなかったがために幽霊馬を馬ゴーレム(合金製)へ憑依させて2匹ほどに馬役やってもらった。ついでに幽霊馬は親父曰くスレイプニルと呼ばれる8本足の馬の血筋を引いていたそうだ。それがいけなかったのだろうか。


 それとちょっとだけ足が速くなるようにと願って馬ゴーレムへ多めに霊力込めた。あれがダメだったのか。

(※道中の敵は不幸な玉突き事故で全員仲良く空の彼方へ吹っ飛びました)



 むしろ嵐の前の静けさだったのではと疑っている…さすがはミスティフコッカス。人類の敵。恐ろしい子(※誤解です)


 どんな罠が待っているか今から楽しみである(※だから違います)



 ひっそりと今まで陰に潜らせレベル上げをしていた私の部下(・・)2匹。戦闘がなくとも魔物をちょこちょこ食材回収ついでに狩っていた。スーパーのポイントカードみたいに塵も積もれば山にも経験値にも化ける。今では私の定めた目標レベルに達している。


 面白い能力も生えており、色々戦力は期待している。


 嗚呼、実に楽しみだ…いつの間にか宝物庫がスカになって真っ青になる王侯貴族の姿が。待っていろよ、私の金銀財宝と未知の食材…ついでに誘拐予定の王子。



「いざ、ゆか「落ち着けライ!まだ後続が追いついてないから。」…早くしなよ。」



 ここにきて一旦ストップ。というのももうそろそろ本気で潜入するためエリスさんとトパーズさんが変装ならぬ変態するそうです。なぜに馬車で済ませなかった。わざわざそのことを考えて仕切りある広めの馬車買ったというのに…ギルマスの財布で。


 なお、変態は変態でもエッチな方の変態ではなく骨格バキバキやって姿形をいじる方の変態だとは、トパーズさんの言葉である。私から言わせてもらうとどちらも等しく変態である。もちろん18グロの方で。



 バキバキ、グシャ、メキメキメキ…そういう系統の音が林の奥から聞こえ、戦慄を覚えるノーマル組。うちっさいオッサンに至ってはかわいそうに馬車の揺れと相まって戻してしまっている…3日連ちゃんで食道と胃袋に大ダメージである。


 今夜のお酒は控えましょうねと真顔で言えば、真っ青な顔が真っ白になって燃え尽きた様子。ドワーフにとってお酒は娯楽ではなく生活必需品、無いと起き上がれないとか。


 その前に、たまには消化器へ優しくしよう。スマイル0円でそう伝えると、灰になった。よし、これで食事を豪勢にできる。お酒代は結構するので財布役(ギルマス)がいない今、なるべく自分の金は出したないでござる。公爵は身分証持っていないのでギルドから預金を引き出せないし。


 ギロリと涙目で見てくる哀れな酒なしドワーフ…いやいや本当に健康のためにも心を鬼にしたのは事実だ。


 この間に親父はさっさと陰に隠れ、ベルハザード公爵は貴族らしい能面フェースでじっと耐えていた。おそらく私もそんな顔で耐久レース中。


 耐えねばならんのだ。



「そういえばライ、聞いておきたかったんだが…その作法、どこで身につけた?」



 ふと思い出したかのように尋ねてくるベルハザード公爵。だが目には何処か剣呑な光が宿っている。こちらを警戒しているようだ。


 思わず呆れたように見返したことは言うまでもない。



「…優秀で動作の雅やかな父親は私の昔からの自慢です。」



 これでわかるよね?ね?さすがにわかる…はず。


 いや、こめかみを今度は押さえながら胃のあたりを押さえる公爵。どうやらみなさん今日は消化器の調子が悪いらしい。



「…今夜は鶏鍋にするか。」


〈いやなぜにそっち…〉



 大丈夫、親父の分はないから。


 そう伝えると、途端にしょんぼりする親父。『自慢です』は『自慢だった』と過去形に直して言った方が良かっただろうか。まあ仕方がない、過去は変えられないのだから。


 ついでにほぼトパーズさんとエリスさんの素性が確定してしまった件についても…アカン、これ絶対巻き込まれるやつだ。



「さて、どうしたものかな…」



 空を見上げると少しだけ灰色、きっと明日は雨後々雷雨後晴れ。



 ライくんにとっての重要度。


 命>モフツル>食事>家族>財産>>魔王や親父の折檻から逃れること>>>(超えられない壁)>>ギルドの依頼>>ゴミ>クズ>>聖光教会


 さて、王子は無事誘拐による生存フラグが立つかな。


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