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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第2章 波乱な8歳前半の歩み(〇〇式英才教育基礎レベル実践編)
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75 入国とは一体(終)無垢な8歳児を巡る…なんだろう?

 読者の皆様投稿遅れて申し訳ないです。ブックマークありがとうございます。


 さて、入国()は今回で最後です。それでは今週の不憫をどぞ!





 …案外なんとかなるものだな。


 達観した様子でため息を一つ吐く。そして、ため息をまた一つ吐いた…さっきからその繰り返しであった。


 衛兵や奴隷商の騒ぐ様子や派手に壊された国境の壁を眺めながら黒茶をすすった。ああいつも通り苦いな、と。


 本来だったら今ごろ同志たちとともにこの国の犬共や悪徳商人の護衛共と争っているか、あるいは下手をするとブタ箱にぶち込まれていたかもしれない。


 だがそれも、あの怪物共が国境に現れ運命は変わった。


 白銀に輝くゴレムを中心として、後続に続くミイラ男とゾンビとデュラハン…そしてあれは吸血鬼か悪魔か。確か、女性優位で男を奴隷の如く侍らすのは女悪魔だった気がするがどうだったか詳しくは覚えていない。


 ただ、とりあえずわかっていることは奴らがとんでもない存在であることに加えて…



「殿下、念のためです…『ポケットの中』」


「全く、外では『アレンさん』だろう…まあいい、『粉々のビスケット』。」



 皇太子アレン・ゲラルド・クライブ・ド・ラ・ブラッドハイムズの恩人である。



「無事で何よりだ、ディーナ」


「殿下もご無事で…」



 …襲撃を受けて散り散りに逃げることになった後、せめて護衛である私だけでも彼の元へ向かおうとした。だが、殿下はすでに森の奥へと精霊に連れられ逃げた後であった。すぐに再び的が襲ってきたこともあり、それどころではなくなってしまったのだった。



「いやぁ驚いたよねそれにしても、まさかこんなところで■■■■■■家の0歳期に行方不明になったお子さん(・・・・)に会えるなんてね。」


「え…」



 あまりに意外な人物の名前が出たことで固まると、殿下は満面の笑みを浮かべた。それはそれは嬉しそうな表情で。いつも家臣や親族(皇帝陛下含む)へいたずらを仕掛けて成功したら浮かべている顔だ。


 なんというか、楽しそうで無邪気な…普段の大人っぽさというか威厳が半減するような……



「チムニー、見せてやってくれ。」



 殿下の契約された精霊…チムニー・フロスト殿が取り出したのは似顔絵の描かれた紙。


 そこに写っていたのは銀髪紅目…いや、辛うじて緑髪紅目の端正な顔つきをした少年だった。


 彼らの色を持ってはいるが、おそらく近いうちに完全に抜け切るのだろう。面影はどちらかといえば少年にとっては祖父母…いや、もっと古い先祖にあたる人物に似ている気がした。


 なるほど。


 そう考えると却ってこうして離れ離れになってよかったのかも知れない…自分たちの祖父母を酷く嫌悪する夫婦の姿を思い出し、ふと思った。仮に、彼らに育てられていたならば…そもそもちゃんと育っていたかどうかも怪しい。せいぜい育児放棄された上で成人しないうちに放り出されていたかどうか。


 数年前の視察で彼の領の孤児院で見つけた夫婦の色を持つ男児の姿を思い出し、そしてすぐに忘れることにした。私がどうこうできるような問題ではないのだ。下手に首を突っ込んではいけないと言われたのだから。



 それに、今はそれどころではなかった…私は現在別の意味でその絵画から目が離せなくなっていたのだ。



「ア…アラン様、この少年ネクロマンサーですか?」



 ネクロマンサー…それは人外の扱うような魔導を単身で使うほどに極めた者であり、それ以上に亡者を従えられるほどの武力と生命力、そして不運に呑まれず生き残るだけの天運を有する者。


 ゆえに、精鋭ぞろいの配下を持ち下手な騎士団より強力な軍事力を個人で有する存在。何よりそれを完全に従えており、なおかつその軍は不死身である。いや、すでに死んでいる者たちなのでこの言い方はおかしいのか?


 ともなく、攻撃を喰らおうが何だろうが相手を殲滅するまで止まない一国の軍事力並みかそれ以上に強力な軍を持つ者である。


 聖光教会の進行では悪者として扱われているも表立って争わないようにしている。それほどまでに恐れているのだ。


 というか…そんな恐ろしい者を相手にしていたのですか殿下。



 戦慄とした表情を私が浮かべると、ニヤリと笑う殿下。



「さぁね。でも相当な実力者だったよ…だって測りきれなかったもん、実力。」



 え、殿下がですか?かのフロストドラゴンを得意属性であるはずの雪や氷の術式で跪かせたアラン殿下がですか?


 ブワリと全身から嫌な汗が出る。


 ただでさえ名ばかりの護衛なのに、これでは殿下の身を守れないではないか。こんな実力者相手に私が敵うはずがない。おそらく時間稼ぎにもならず、殿下を安全に逃がすことさえ…



「あぁ、ディーナ?別に今回は彼、こちらの味方だから大丈夫だよ?それに戦争を僕らの代わりに止めに来てくれたみたいなんだよねぇ。」



 いやー助かる本当に、これで安全に帰れるよ。


 あははははと穏やかそうな顔で笑ってはいるも、目の奥には警戒するような色が見えた。



「なにはともあれ、僕らは僕らのやることやんないとね。まあおかげさまで危険もなくこの国境越えられたわけだし。」



 先ほどのゴーレムと思しきものを脳裏に浮かべると、自然と体が強張った気がした。その後ろから付いてきていた連中も警戒対象であるが、それ以上に少年…確かラ…レイだったか?8歳児でアレってことは、将来一体どんな戦士に成長するのか…



「今回はスカウトしなかったっけど、そのうち誘ってみるかな…例えば最近になってうちの国で設立した王立学院の途中入学とかどうかな?弟は頼りにならないけど、その友達ならなんとか彼を篭絡できるんじゃないかなぁ?」



 あわよくば、将来僕の下で働いてくれないかなぁ…なんてね。



「あは、もちろん冗談だヨ?」



 口ではそう言いつつ、目が割りと本気(マジ)なのですが…そんな疑問が伝わったらしく、殿下は目を細めながら答えてくださった。



「本人が拒否するでしょ?そしたら下手すると我が祖国が潰されちゃうからね。さすがにそんな案件を強引に進めることなんてできないよ。」



 それに今はどのみち保護者がついて(・・・)いるから無理だしね…しかも複数みたいだし厄介だ。実体のない相手って本当に面倒だよ。攻撃されても反撃電気ないとか本当に反則じみているよね。


 でもだからこそ、今回知り合えたのは運が良かったというべきか…あるいは、ね。



 殿下は、口調こそ困惑した様子であったが表情は何かまた面白いものを見つけられた際の笑みを浮かべていた。幼少の頃より護衛を勤めているが、こう言ったところは変わらないのだろう。



「さてと、ラインハルトくんは今後どんな風に歴史書に描かれるか、楽しみだねぇ」






◆□◆◇◆□◆◇◆□◆◇◆□◆




 何とか壁を壊して突き進み、なるべく早急にガン●ムへのを術式を解除して亜空間バッグへ仕舞った。傷はパッと見たところなかったから多分大丈夫だろうけど、勝手にお持ち出した件についてはやっぱり怒るかな…魔王。


 そう思いながらこちらの様子を伺う以上に影の薄い男へと配下の幽霊を数人放った。まだ押さえるな…そうだ、出てきた瞬間口上を述べている最中にやれ!



「さて、とりあえず侵入おめでとう?でいいのガボっ?!」



 突然現れた男はあっという間に幽霊に張り付かれ、地面に押し倒された。妙な術式を発動させないよう口元と手の指、そして足の指を重点的にホールド。



「…何者?」



 涙目でフー、フーと何かを訴える男…そしてその気配にそういえば一度ならず何度か自宅を嗅ぎ回ろうとしている奴がいたことをふと思い出した。魔王の配下?ファン?が撃退してはお仕置きでお尻ペンペンしたあとどこぞの空へとパイしていると聞いたのだが。


 それにしてもよく生き残ったな、あの容赦ない連中相手にして。



「離してやって…彼はギルドメンバーよ。」


「え、このショタ●ンストーカーの変態野郎が?」



 次の瞬間男は吐血し、倒れた。それはもうパタリと。


 これ胃潰瘍か?ストレス性かもしれないな。


 きっとギルマスのとばっちりで哀れな目にあったことのある野郎なのだろうと思いながら、慌ててポーション瓶を口にくわえさせて飲ませた。すると、今度は白目をむいてピクピク痙攣しだした。


 あ、親父のクソマズポーションだった。


 …なんだか前世見たことのある、ヤバい薬をキメてしまった哀れな入れ墨入りのオッサンたちの姿を思い出した…そう、こんな感じで唸って体をよじって……



「ほい。」


ドゴーン


・・・・・・



 確かこんな感じで良かったはず。



「電化製品はこうやって斜め45度に叩いてやれば大体直るもの…」


「「「「「いやいやいや、逆に壊れるから!!?」」」」」



 …こんな純粋無垢な8歳児捕まえてなんて酷いことを言う大人だ。そんな、人を撲殺するようなこと8歳ができるわけなのに人のことをそんな目で見るなんて…あんまりじゃないか!



「…いいもん、それなら目覚めの往復ビンタをしてやる!」



 次の瞬間、顔の腫れ上がった男が横たわっていた…これだけ顔が腫れて特徴的になったというのになんの特徴もないというか影が薄いとは、哀れな男だな。



「…後をつけられた恨みはそのくらいにしてやれ。」


「しょうがない…ただ今度やったら、」



 ゴクリと息を呑む一向に対して黙っていたら、逆に怯えられたのだが…ただ魔王親衛隊に今以上の目にあわされた上でパイされるだけなのに、今更何を恐れるというのだろうか。


 確かにリリースする場所は色々問題ありそうだがそもそも不法侵入者(犯罪者)に人権などない。こんなか弱い8歳児をつけ回してブタ箱に収められなかっただけでも感謝しなさいよね。


 …自分で(心の中で)言っていてなんだか鳥肌が立った。口に出なかっただけセウトあたりかな?



 さぁて、こいつ適当な宿に収めたら適当に小遣いでも貰いに行くかな…裏街に。



 なお、ラインハルトくんはネクロマンサーではありません。そして彼の両親は…ネタバレになるので秘密です。


 後日、俺のガン●ムに何してくれとるんじゃぁ(怒)!と魔王に凹りまわされるライくんと親父さんの姿がライくんの自宅では見られるでしょう。さてどんなお仕…修行が待っているかな。

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