74 入国とは一体(その3)歴史書に記される馬鹿2匹と変態共
読者の皆様投稿遅れて申し訳ないです。
それでは今週の不憫をどぞ!
門番及び長蛇の列にいた旅客が青ツナギの餌食♂になっている(と思しき)頃、ラインハルトたちご一行は入国するための手順を踏んでいた。時間も限られているので彼らは皆必死であり、真剣であった。
出発の時点で開戦まで2週。彼らはすでに2日消費しているが、刻一刻と期限は迫ってきている。
最長で10日。だがもっと短いかもしれない。
国家間における緊張状態が国境付近でずっと続いている。傭兵の移動も終わり、水面下で諜報戦は始まっていると思われる。もういつ過激派が暴走して戦乱の火蓋が切られてもおかしくない状況であった。
だからこそ、1日でも早く王都にたどり着けなければ話にならない。
ゆえに、こんな関所でのんびり戦闘している時間はない。まして、捕まるなんて論外であった。
話が変わるが、とある異世界にある有り難い言葉の一つに『急がば回れ』という諺があった。意味は、急いでいる場合こそ遠回りになってもいいから慎重に行けということ。
確かに正論である。
急いでいる場合にこそ細かいミスが発生しやすく、その度に足を引っ張られて苛々してまたミス…ということの繰り返しをやりがちである。時間が足りない中でどれ程上手く管理し早急に進めることができるか、それが勝負の分かれ目となる。
いうまでもなく危機管理の概念を上手く活用することを求められるというものである。
ただ、ここでもう一つ程有り難き異世界の言葉を披露したいと思う。それこそが『過ぎたるは猶及ばざるが如し』である。
時間がなく、チェックをせず進めて逆に時間をかける。それで確かにミス乱発となればタイムオーバーからのアウトとなるのだろう。だがチェックをしすぎて時間がなくなるのも結果的に同等に見られることになるのも事実。
結局のところ、程々に留めておくのが一番無難であり時間が足らない場合に求められる。
今回の場合だってそうだ。
別にパーフェクトに進めなくてもいい。道中トラブルに見舞われようがなんだろうが、結局戦争さえ止められればいいのだ。
依頼人の要求通り主要人物共を誘拐して止めるのがベストである。だが、最悪時間がなければそれこそラインハルトのメテオでもいい…それによる被害、復興までにかかると予想される時間・労働力・カネを考えればなるべく避けたい未来だが。
けれど、依頼を受け持った側は(一部)自国も戦争に巻き込まれるというか人質取られ侮辱された挙句相手から一方的に敵対宣言された形となっている。裏では色々と思惑とかありそうだが、真相知られていなければさぞ完全に舐めた態度取られたなどと思うことだろう。
裏ギルドを仕切るギルマスやその関係者、それ以外の冒険者を含める大勢の人々は、愛国心の有無に関係なく自分たちも喧嘩を売られたと受け取った。
『冒険者の国』と謳っている国家へ宣戦布告するということはそういうことなのだろうと。
だからこそ、明らかにやりすぎた。
彼らは当初の予定通り囮を有効に使って静かに国境をスルーする準備を最初は行っていた。だが、いつの間にかついでに国境線で何かしようという企みが発生していたのだった。挨拶しておかないとな、などという誰かの煽り文句によって。
なお、発案者はギルマスとエリスさん。支持者筆頭はベルハザード公爵。悪ノリして色々アイディア出したのが某氷の貴公子(笑)と某悪ガ…自称無垢な8歳児。
だが、仮に後になって全員黒歴史と化し猛反省するような事態になったとしても誰を責めることができよう。
反対者がドワーフのうちっさい町内会とかにいそうな小心者のおっさんのソロである以上、誰も止めることが可能な者はいなかったのだった。普段止める側のラインハルトも旅の道中のストレスとか変態に夜警頼んだ結果視線を感じて睡眠不足になったこととかが手伝い、脳内がハイになっており冷静ではなかったのだ。
むしろ、ここいらで一度旅の元凶(=隣国)へ八つ当たりしたっていいよね?などと考えエスカレートさせてしまった。
「…よし、こっちに気づいていないな?やるぞ。」
ツルハシを持つは、テ○リストマスクを被った不審者風のチ…身長が小学生なおっさん一匹。顔の表面積が大きい上立派なガイゼル髭がはみ出ており、その恰幅の良さと身長よりどこからどう見てもドワーフ族だと明らかな姿であった。これでいて、本人は種族を隠した気になっているのだからある意味すごい。
だが、彼はまだマシな方であった…不審者であっても見られる状態なのだから。
では、まず一匹目。
そこにいたのは顔の原型が分からないほど化粧品を色々塗りたくったオカ…青年一匹。口の周りが真っ赤で頰もチークを塗りすぎた状態、その上アイメイクが濃すぎて既に剥がれ落ちてきていた。なんというか、道化師を目指したかったのか。それとも最初からゾン…ホラーを狙ったのか。
もはやあれはかおではない、『がお』である。
なお、小さな子供が見たら確実に号泣した上でトラウマになるレベルであることを語及しておく。
二匹目。
がおの隣には、騎士がいた。
…もう一度言おう、全身黒甲冑の厳つい格好をした騎士がいた。ただ、全身金属が重すぎて動けないらしくプルプルしていた。形状からして女性であることは確かなので、このままではきっとオークの餌食となり『くっコロ』になってしまうだろう。
しばらくして何か決断したらしい甲冑は突然動きを止めた。そして、数秒後何かしらの魔術式が間関節から放出した。次の瞬間楽々立ち上がり、勝利の雄叫びを上げるかの如く全身ガチャガチャ音を立てながら小躍りし出した。
三匹、四匹目。
そんな様子の2人の横で、さらに異様な格好の2人がいた。
方や紙パックへ目のところへ穴を開けだだけのものを被った粗末な腰巻のみつけた首輪の男。方やゴージャスな真紅のドレスに身を包み鉄扇を片手にオーッホホホと高笑いしているツインドリルな髪型の美女。なお、顔はドミノマスクで半分隠れていた。
豪華美女は鉄扇と反対の手には鎖を持っており、その先には男の首にかかる首輪が繋がっていた。真っ赤なピンヒールで足蹴にされるされるたびに首輪の男は恍惚な表情を浮かべていた。
五匹目。
彼らを冷たい目で眺めていたのは、これまた不審人物であった。
質の良い帽子を目深にかぶり、質の良いコートの裾を上げて顔が完全に隠れていた。それだけならまだ許されるだろう…季節は冬であり、寒かったからであると言われればなるほどと納得することはできる。
けど、その下の顔をどこぞのモンスターみたいに包帯でぐるぐる巻きにする必要はどこにあったのだろうか。
しかも素人がなんどもやり直したらしく包帯自体にもその巻き方にも微妙にほつれが出ていた。そこまでならまだ新人に手当てでもしてもらったのかなくらいに思わなくもないだろう。
あろうことか、包帯が黄ばんでいるのだ…しかも所々血痕の乾いたものがある。どこからどう頑張っても街へ侵略しに来たミイラにしか見えないが、街では多少怪しい傭兵、スラム街なら浮浪者として余裕で潜り込めると思っているらしい。
だた、彼らもきっとまだマシな部類だったのだろう。確かに非常識の部類には入るだろう。街中だったら絶対関わり合いになりたくない状態であることは否定しない。
けれど、彼らを上回る非常…いや、もうある意味勇者()二匹がいた。
「親父チェック終わった、いつでもいいぞ。」
「なら起動するぞ。」
…白銀の両手足の装甲は陽光に照らされ煌々と輝いており、胴体と兜を飾る群青と紅と黄金色はその存在感をこれでもかというほど発揮していた。
これはロボットではない、断じて違う…これは、モビツスーツ。
〔システム起動…認証完了、各チェック項目クリア〕
〔これより■■■■■番------星の重力へ機体を調整…終了しました〕
無機質な声が次々と流れ、チェック項目は着々とクリアされていく。
もはや国どころか世界観へ喧嘩を売り、■■への挑戦をしているとしか思えない2匹の愚か者。だが、わからなくはない…確かに作れる技術と乗れる技術が揃っているならやりたくもなると。
本来、人間が2足歩行の機体を操縦することは不可能である。機体の揺れに対応できないからである。操縦席に吐瀉物撒き散らす程度なら可愛いも。気絶からの怪我、脳への障害とかにに繋がる可能性だってある。
だけどこの世界、物理法則を無視する夢の技術が存在する…そう、魔術である。
簡単なこと、外部の揺れを内部へ伝えないよう法則を『書き換え』すれば済むのだ。
こうして前世からのオタク1匹と伝染したオタク1匹が、実家に置いてきたヲタク魔王の作った物をちょろまか…ちょっと拝借して今回使うことにしたのだった。
姿隠せるしちょうどいいね、と。
なお、2人乗りできないこととか著作権とか製造者の希望とか色々ぶん投げての無茶振りである。当然それに伴うリスクとか色々覚悟はしていたりした…ほとぼり冷めるまで逃げ切ろう、と。
そして、彼らは憧れの言葉を言った。
「「ガン●ム発進!」」
数秒後、ドラムレーンとグラジュールの国境ジャルダークでは、突如出現した白銀の超巨大ゴーレムにより一部、壊滅的な被害を受けたのだった。
なお、壁が壊れた後ゴーレムとそのお供と思しきモンスター達は街中へ入り、しばらくして消えたという。
死者こそ出なかったが、心的外傷を追ったものは数知れず…後に、『変態-ゴーレム襲撃事件』として歴史書に載ったのだった。
ガン●ム出す理由:かっこいいから、出したことに反省も後悔もない
ただ、私的にあれは宇宙空間だからこそ力を発揮できるのであって地上では魔法とかなければ無理では?などと思ったりします。なお、反論は認めます。




