73 入国とは一体(その2)
読者の皆様投稿遅れて申し訳ないです。またまた行間とか直してなくてすいません。月曜に直します。
さてそれでは本編をどぞ!
ドラムレーン領ジャルダーク『関所の街』。
ここ最近隣国へ宣戦布告したドラムレーンでは、戦争需要のために経済がいつもに増して活性化していた。それ以前にこの国は位置的に幾つかの国に囲まれているため街道を整備しており物流の中心地となっていたわけだが。
しかし、現在この国で積極的に活動していたのは中級商人から商人ギルドにさえ属さない非合法な小規模商会。大型商会は一部以外あっさり国の行く末に見切りをつけて他国へ逃亡した後であった。
かの冒険者の国グラジュール王国に喧嘩を売ったのだから未来はないと。
ある意味彼らは賢かったのだろう…そのタイミングで出ていかなければエストレリータ商会のような目に遭っていたのだから。
それほど大きな商会がなくなった今、チャンスだと言わんばかりに台頭してきた小規模・中規模商会。彼らの一部はすでに食い物にされた後であったが、幾つかの商会は確かに利益を得た上頭角を表したように見えた。いや、見せたのだった…巻き餌として。
面白いほどそれに引っかかり、人が集まってきた。
だがそれに満足せず、彼らはもっと集めるたいと願った。餌をもっとよこせと言わんばかりに。
結果、奴隷商人を重用した。
それを見た商家共…どうせ戦争が始まるのだからどれほど非合法なことをしても隠れる。それに求めた方が悪い。そういう需要があったから商業として成り立つのだから。
そんなめちゃくちゃな理論でグレイギリギリな中小商会は次々奴隷商に転職した。
そうして人さらいが各国で横行し、人は強制的に集められる。次から次へと途切れることなくもはや荷物として運ばれてくる。地球人…それも中高でまともに歴史を学んだ日本人であれば、仮にこの様子を見たならスペイン・オランダ商人の奴隷船をイメージするかもしれない。
それだけ人が集まれば、一つや二つ争いごとが起こっても仕方がないのかもしれない。
「危ないですよ、ちゃんと列に並んでください!」
今日も順番を守らず割り込んで周囲と喧嘩になる人たちが出てきた、やれやれと慣れた様子で既製品の剣を片手に衛兵としての仕事を全うする若者。
仮に門番L、としておこう。
…決して名前を考えるのが面倒になったからとかではなく、プライバシーの侵害に関わるからである(※ライくんは関係者なのにでセーフとしておきます)
元から人が多かったにしても、ここ最近になるまではほぼ顔馴染みが礼儀正しく門前に並ぶことが多かった。それに、これほどの長蛇の列にはなっていなかったはず。
戦争が近々勃発すると言われていたが、本当かもしれない。
市民の中でも不安定な人が増え始め、なんとなく今まで平和だった町もギスギスしていた。特に街の安全を守る衛兵の立場だと、それが顕著に見えてしまう。
戦争になったら自分たちも戦場へ駆り出されるのだろう…嗚呼、あのタイミングで逃げとけばよかった。
ため息を吐くL氏。
Lは元々冒険者をしていたのだが、そろそろ馴染みになった娼婦を身請けする資金も溜まったので引退して定職に就こう。そう思って数年前にジャルダークの衛兵になった。
戦争をまさかするとはこの頃予想外であった。というか、未来視とか占いでもしていない限り誰もそんなこと想定できるはずもなかっただろう。
せめて妻子は逃がす…そう思って数日前隣国ルイン王国領の実家に送った。今頃は無事、生活しているだろうか。
茶目茶髪の可愛らしい犬獣人の妻と青髪茶目の息子の姿を思い浮かべる。数日前まで生活していたのに、もう何年も会っていないような錯覚をする…それほど彼らが去った後の日々は彼にとって暗いものであった。
日々の激務と無茶振りを要求する上司、そして使えない部下…いくら地方の関所でも、中間管理職は厳しい。某トィニー・ガワード氏には賛同した。
「危ないですよ、ちゃんと列に並んでくださ…!?」
だが、彼は別に妻と息子が無事だったら別に自分はどうなってもいいと割り切っていた。元は貴族階級だったといってもそれほど地位は高くなければ三男で家を継ぐことはまずないと言われていた。冒険者としておそらく死ぬまで働くのだろうと思っていた。
だから冒険者として剣士としてまさかあれほど大成するとは思わなかったし、娼館で諦めていた幼馴染に再開するとは思わなかった。まして、定職…それも子供に誇ることのできる人を守る仕事に就職して平和な生活を送れるとは。
「…嘘、だ…ろ?」
だから仮に彼らが無事なら戦争で自分が死ぬことはどうでもよかった…一生分の幸運を味わったから。
けど、まさか奴隷狩りに自分の妻と息子があっているなんて予想外もいいところだった。
「おい、ローレントどうした?よせ、暴れんな!」
「黙れ、あれは俺の妻と子供だ!なんで奴隷になっているんだ!離せ!!」
でっぷりとした腹を抱える悪趣味な成金男の乗る馬車の後ろ、そこには鎖で繋がれた者数人が存在した。そこ中に、自分の家族がいれば取り乱すのは当たり前であった。
「ん?衛兵がワシの、サルバーコ伯爵の後ろ盾を持つこのドロレス商会に剣を向けるか?」
見捨てる同僚・部下と囲まれるL氏。捕まった妻と子供は必死におりを出ようとするも、見張りの者に鞭で叩かれ皮膚がめくれた。Lはその姿に憤るも、絶体絶命状態は変わらない。
そんな状況で…なんか来た。
突然ビームがどこからともなく放たれた。そしてその光線に当たった男たちは、皆『アッー♂』という叫び声をあげると同時にケツを天に向けた状態で倒れ、異臭を放ちながらピクピク泡を吹いた。
幸い上手くかわしたLはとっさに奴隷商の檻へ近寄ると倒れた男からこっそり拝借した鍵を使って檻のドアを開けた。
「あ、商品を盗むな捕まえ…アッー♂」
次々ビームの餌食となる下っ端…細身で一見すると女にも見える容姿であり、もしかしたらそういう風になる星の下に生まれていたのかもしれない。どうでもいいが。
そうしてLが妻子を連れて逃走した頃、謎の青いツナギ姿のいい漢がビームや男子トイレを出現させながら襲ってきたのだった。
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拝啓、名も知らぬ旅客や門番よ…すまない。本当に申し訳ない。いや、悪気はなかった。本当に。それだけは主張しておく。
だからなんというか、強く生きろ。
♫「YA☆RA☆NA☆I☆KA?」
ギャークルナー
オレハノンケダー
アッチイケー
アッーーー…
さぁてと、鬼もとい衛兵がいぬ間に壁こわすか。
え、切り替えが早すぎる?さっきの反省とか相手への同情?いやもうさっき十分したからもういいだろ。それにこれからどのみち彼らへ不利益を生じさせることになるわけだし。
「じゃあこっちは国境に穴を変えてさっさと不法入国しますか。」
おー
「…うん、まあ運が悪かったって諦めろ。」
衛兵の密集する場所へ軽く拝む公爵…だが私同様にすぐに切り替えて現在積極的に壊す箇所を探してくれている。小さい頃から悪ガキで家出非行少年というか立派な不良だったらしく、門のほころびとかピッキング技術、他諸々得意だと言っていた。
…当時勤務していた衛兵さんと先代公爵へ敬礼。
本来ならこの後この門番奴隷商人殺して指名手配犯→(略)→殺人鬼になるんですが、青ツナギの出現で未来が変わりました。実家に帰って家出したお説教受けることからまずスタートですかね。




