71 やっとグダグダ出発
読者のみなさまどうもあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
さて道中初っ端からグダグダである上変態や刺客との遭遇とか焼肉未満とか焼肉とか拾ったもの腐ったもの親父からのものは食うなという教訓とか色々あったが、一晩経って先に進むことになった。キャンプやすでに仕舞い、生存しているホヒト・ドワーフの小人族一向と拾った幽霊は半獣族に任せた。
なお、出発時刻はやっぱり遅れた…うちっさいおっさんがなぜかお腹を壊したらしく、朝食後のトイレ休憩を少し長めに取ることになったからである。げっそりしていたのが視界に入ったが、特に罪悪感は感じなかった。
と言うより、なんでスピリッツ(タバスコ味)瓶1本分飲んでおいてあの程度の症状で済んだのか。やっておいてなんだが、あれって親父レベルな劇物のはずなのに…かつて罰ゲームで飲んだやつが病院送りになった程度には。
(※実話、提案した本人が飲むことになり食道と胃を洗浄しました。良い子も悪い子も実証実験しないことをお勧めします)
ドワーフってやっぱり頑丈?胃袋が私や親父並にミスリルアマンダイト級なのか…
なお、案内役として幽霊はピエールさんのみ残し、吟遊詩人は次の街まで一緒に行動することになった。
「そういえばあんだけ昨日は慌ただしかったのにベルドはずっと空気だったな笑」
「…うるせぇ」
実は一緒に、というか、今回の依頼人兼同行人?護衛対象?であるベルハザード・フランツ・カイル・ド・ラ・ローレンハインツ…ローレンハインツ公爵家前当主。実は山道に慣れていなかったことに加えて度重なる襲撃による緊張感で体に余計な力が入ったこと、加齢などが原因で疲弊していた。幸いかどうか知らんが、とりあえず筋肉痛は出ていなかったので旅は続行。
まあそんなわけでキャンプ設営して早々就寝したそうだ。つまり、小人族のイベントも焼肉大会とかも参加していなかった。
「まあ足手ま…役ただずが余計なことしなかった分良いのでは?」
あんまりな親父のはっきりとした言い分。視界の隅にプルプル震えるおっさ…公爵の姿が入ってしまったので、一応フォローすることにした。だって可哀想だし
「それ言い直しても意味ないから…本音でも本当のことでも本人の目の前で言っちゃダメだろ。」
「ガフッ」
吐血して倒れるベルハザード公爵。
むむ…敵襲か?だとしたら不覚にも気配が察知できなかった。これでは修行不足と親父や魔王から後で折檻ががががががががが…
「おい大丈夫か、ベルド?!ベルド!!!」
慌ててギルマスが公爵に近寄り肩を揺する…号泣している公爵は、なぜかひどく傷ついたような顔をしていた。つまり精神攻撃か、いったいどこから…遠隔攻撃か何かか?
気配を再度探ると昼食の雉肉確保。昨日大量放出して残りはまだまだあるが、念のため回収して解体。
「ライ、止め刺したらダメだろ?」
すると、親父が変なことを言い出した。
「?昼食親父はいらないのか??」
疲れた表情をする親父。その横でなぜかトパーズさんがハァハァしていた。後ろにいたエリスさんがなぜかイライライしており禍々しいオーラ(女王様オーラとでも言っておく)を発しており、もうそれだけで納得してしまった。私はまだ正常だよな?
「親父、私は普通だよな?」
思わず尋ねると、親父は悩ましげな顔を一瞬してからこう答えた。
「まあ普通…いや、普通ってそもそもなんだろうな?それと昼食は食べます。というか、なんでこんな話になったんだそもそも?」
頭を抱えて胃を抑える親父…そうか、そういえばギルマスも胃を抑えていたし頭もよく抱えていた。加えてさっき公爵も吐血ってことは最悪胃に穴でも空いているのか?
よし、糖質コルチコイドの放出を抑えるのと血液浄化効果をねらって山菜を多く入れるのと胃に優しい食べ物…そうだ、雑炊を作るか。
さすがに公爵様に同じ鍋囲いましょうやとは言えないからな。護衛として現在立場関係なく雇われているとはいえ。
「そうだ、おっさんこれ飲んどけ。」
「ん?わかった。」
公爵のおっさんには親父の特性ポーションを渡しておいた。あれならすぐに止血してくれるだろう。特に胃などを含めた体腔出会っても内蔵であっても血液が巡回する限りはどこでも修復してくれる優れものである…味を無視すれば。
ついでにそれは、くも膜下出血とか起こしていても修復してくれるってことである。まさに夢みたいな話である。(この世界の)聖職者及びポーションの味としては悪夢だろうが。
「…毒、ではないよな?」
「これは紛れもなく毒ではないな、毒使って作っているが。」
えっなどとドンびく公爵だが、ポーションの作成において毒を使わないということはまずありえないということをここに記しておく。
「まぁ確かにな…ギルドで売られているような低級ポーションの素材である数種類のハーブは単品で摂取すると腹下すだろうし、幻覚作用あるやつなんかもあるにはある。ベルドは確か紹介で一気にランク上げたよな?」
「ああ。」
それだけでまあ大体把握した。
「ならまあ低級の依頼受けてないだろうから薬草の知識とかは多分それほどだろう?」
「まあそこまで興味なかったからなそういえば。」
…ダメじゃん、それ冒険者としてアウト。試合だったら退場レベル。なんせ、この知識がないとあるでは生存率が変わるので大事なことだったりするのである。
さて、突然だが皆は冒険者の仕事ってどんな仕事だと思うだろうか。
討伐、採取、運搬、仕事代行、護衛、場合によってはもしかしたら街の防衛戦なんかに参加することもあるかもしれない。他にも特殊技能を用いた鑑定だったり調査や情報収集なんて仕事もあったりする。
まあ簡単に言うと便利屋であると言えるだろう。
そしてこれはもう一般常識だが、冒険者の仕事の中で一番多いのは討伐と採取…そして護衛である。理由はそれほど外回りの仕事には危険が伴い、冒険者の資格を持っている人に頼んだ方が自分一人で行くよりは安全であるからだ。それ以外に、危険なので冒険者のある一定の級を超えていなければ入れない地区や森も存在する。
ゆえに冒険者は危険が伴う仕事であり、生存率を上げるためにもある程度森の中で数日間生きられるだけのサバイバル知識が求められるのである。
ゆえに、正座で説教をしているギルマスの行動はある意味正しい。
だけど正直“前”とつこうが相手は身分が公爵なのに、不敬罪とか大丈夫なのか気になる。こっちの世界中世なので、身分制度とか何気にうるさいからな…まあ基本弱肉強食で証拠隠滅すればいいじゃねとは魔王の言葉だが。
ごもっともなのに、なぜか納得できないのはきっと本人の日頃の行いが悪からなのだろう。
実行してしまっているあたりもうなんと言えばいいのか私にもわからんが、まあ魔王なので仕方がないと諦めるしかない。前も言ったが諦めることは人生において重要なのである。
「う、マズッ…このポーション、不味い!う、オェ」
「聞いているかベル!!だから…」
遠い目をする親父の横に並ぶ。
「…なあ、この依頼って時間ないはずだよな?」
「……そうだな。だがライよ、耐えねばならん日もあるのだ。」
親父は投げ捨てられたポーションの瓶を拾い上げ、手元で見ながらしょんぼり肩を落とした。そしてこんなことをぼそりと…
「いや、な…センスないことはわかっていたんだよ、いや、自覚は前からあったんだよ。だけどあんな風に言うことはないだろう?それにだ。」
一呼吸置いた親父。
「一応これは俺の中で自信作だったんだけどな、そっか、まずかったのか、そんな投げ捨てられるほど…あははははは」
影をズドーンと背負う親父。
いや、あれ自信作だったんだ。あのゴーヤに色々下水道とか肥溜めの香りとかするアレが…いや流石に何も言わないけど。というより言えない。
そうして、出発早々なぜか足止めを食らうのだった。
正月企画ですが、アンケート結果特に希望がなかったので通常通り投稿いたしました。今年も頑張っていきます。
今年もみなさまにとって実りある一年であることをお祈り申し上げます。




