表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第2章 波乱な8歳前半の歩み(〇〇式英才教育基礎レベル実践編)
69/208

66 無粋だが、謎解きは焼肉中で(その4)肝心の焼肉未だ始まらず…

 読者のみなさまどうもこんばんは。行間は後日直します、見づらくて申し訳ないです。


 さて、それでは今週の不憫をどぞ!





 棟梁の出した炎たちは、小人族の奏でる祭囃子と共にその大きさを徐々に大きくしていった。


 力強い太鼓と笛の音は終盤になるまでボルテージと速度を上げていく。


 そしてそれは最後の音と同時にブワリと広がった。


 極彩色の閃光が、腹底まで響く振動が、夜の森を駆け巡った。まるで目の前で花火が弾けたかのような刺激。光と衝撃が一度に全身を襲い、己が一つの星、いや、銀河の一部として煌めいているかのような錯覚に陥った。


 だがその感覚は光と音共々一瞬にして消えた。


 辺りに静寂が訪れ、残された我々は高揚した心と妙な緊張感を感じた。まるで一幕目つの演舞が終わり、余韻に浸るように。そして新たな一幕が開ける瞬間を待つように。


 そう、まだ『火つけ』は終わっていない。


 誰かがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。私もまた、唾を飲んだ。



 瞬間、白色の炎が宙に浮かんだ。



 静寂を保ったまま燃えている白い炎は小さいが、だが、力強さを感じた。ゴォォオオオと唸り声を上げて回転するアレは、一体何度℃なのだろうかと考える。


 持っていた松明はすでに消え、魔導具も棟梁の指示なのか全て消されている。だというのに全員の顔が見える異常さ。ここは都内でも眠れぬ街でもなく、まして中世ヨーロッパらしく街灯は何一つ設置されていない。ゆえに、夜は完全な闇。


 そう、墨汁を垂らしたかのような完全無欠な暗闇が広がっているはずなのに、ちゃんと辺りが見渡せる。それは、それほどあの炎から光が出ている証拠だろう。



「…もうそろそろか。」



 同時に感じるのは、ピリピリとした感覚…まるで戦闘が始まるかのような、そんな感じだ。


 嗚呼そうだ、これは殺気。



 私を殺そう。私の命を刈り取ってやろう。首筋、右胸、腹部、関節、そして頭。確実に葬ってやろうという意思が見える。


 ゆえに私は思う、未熟者と。



 腰に下げておいた獲物を握ると、組んでおいた肉体強化と保護の魔術式を起動させる。同時に地面を蹴り、宙を舞いながら私を狙って投げられたと思しきナイフを弾いた。


 笑止千万、黒いナイフは闇でこそ活きるもの。


 光に照らされて次々と目に映るのは先ほどまで演奏をしていた小人族たち。だが、先ほどと違う点がいくつもある。特に顕著なのは彼らの目は。


 演奏中は爛々と輝ていた目は虚ろになっていた。



 一人一人は大したことないが、数が多いな…



 全員獲物は握られており、全員テントの方へと顔が向いていた。大方操られた状態で、操られていない生存者を襲えとかいう指令でも出されているのだろうか。


 とりあえず無事なのはテントの中で治療をしている組。それプラスギルド関係者、親父くらいか。


 …なんだ結構多いじゃんとか思うだろう?だが実際戦闘要員の数を考えれば次の通りとなる。



敵対側


ドワーフ族(棟梁):1人

ドワーフ族(親方級):6人

ドワーフ族(見習級):18人

ホヒト族:25人

一部の半獣族:2人



味方側


私、親父、ギルマス(負傷)、トパーズ(負傷)、レミィリア(高火力ウィザード、仲間に誤爆する可能性有)、エリス(鞭使い、森ではNG)、半獣族(実力は微妙…)




 なお、ホヒト族に関しては見習いか親方か見分けがつかないのでカットさせてもらった。全員幼稚園児から小学校低学年くらいの見た目で妙に大人っぽいというか整いすぎた容姿をしており、ドワーフみたいに顕著ではない。多分死ぬ間際に老化する一族なのかもしれないが、とりあえず今は割愛。


 まあざっくり全員ショタ爺であると考えればいいか。


 半獣族2人はすでに操られなかった側がすでに気絶させた上でぐるぐる巻きにした。修行、帰ったら大変だろうけど頑張れ。



 さて、目の前でナイフ片手に最初会った際には見せなかった剣舞を披露して来るホヒト族…アサシンぽく音のないステップでこちらの背後に回ろうとして来る。その度に宙へ舞い、上から延髄斬りをかけて行った。正直楽勝である。(※危険ですので絶対真似しないでください)


 そこへ味方を巻き込みつつタックルして来るは、うちっさいおっさん。本当に操られても猪突猛進の言葉が似合う、似合う。もう名前猪突でいいのではないかなどと思いつつ、相手の力を利用して地面に頭から埋めてやった。


 ピクピクしていたが、無視して斧でもって攻撃してきたドワーフも同様に沈めた。犬神家2号、3号…と、私の去り際地面にドワーフ(下半身)が生えた。


 そうしてホヒト族とドワーフのタワーが出来上がった頃、今まで何の反応も示さなかった親方が急に苦しみ出した。



「ん…うぅ!ぅ、ぅ…」



 何かへ逆らうように身じろぎ、そして自分の手で自分の首を締め出した。だんだんと顔色変わって行く。



 まずいな…



 慌ててレミィリアさんの真似ごとをする。目に魔力トレース(レミィリアさんが私に掛けたものを魔王が引っぺがして写した術式)を描いて、そこへ魔力を流した。正直ぶっつけ本番で心配しかないが、まあなんとかなるだろう。大丈夫、大丈夫…多分。


 カッと光が目の中に入り、某大佐の如く目がァ!状態になる。


 慌てて見える魔力?魔素?の範囲を狭くして再び目を開くと、親方に絡みつくようなミミズ状の魔術式が見えた。色はどす黒く、そして洗練されていない汚らしいものだ。魔王が見たらきっとキレるだろう。


 それは別の人たちにもつながっており、まるでたこ足配線のコンセントみたいに絡み付いていた。なるほど、操られた人はプラグにつながっているわけだ。


 そして親方のものに関してはプラグが微妙に外れており、なんとか入ろうとしては押し出されているといった様子…よし、こうしてはおられん、援護しよう。



『ここから出て行け!』



 魔力を声に乗せて吠えてみると、面白いように畝る魔術式はひるんだ…やっぱりあれ、ただのプログラムではなく何かしらの意思があるとみた。ということはあれが親父の言う『ミスティフコッカス』なのか?


 いや、これは違うな。


 プログラムにしては無駄な命令文が多くごちゃごちゃしていた。その上発動段階で必須の式がいくつか欠けている…このままだと絶対発動しないはず。


 それが意味するのはどこか近くに本体があるということ、か。


 他の連中へつながっているコードは棟梁めがけて全て集まっている。だから一見すると棟梁が元凶ぽく見えるのだが、おそらくこっちは囮。



 ならば、どこに隠れているか。



 一瞬だけ魔力・魔素への感度を引き上げる…先ほど同様に目が焼き切れるんじゃないかと言わんばかりに光の波が襲ってくる。特に、棟梁が現在純粋な魔力でもって燃やしている炎がある以上眩しくて死にそうだ。


 裸眼で太陽をじっと見るようなものといえば、わかりやすいだろうか?


 なんとかその光を避けながら汚らしい濁った黒の術式を探す…いくら黒色を使っていると言え、魔王と比べると雲泥の差だ。あの魔王(理不尽)の弟子として、こんな…こんなきちゃないのに負けてたまるか。


 そんなくそ根性と見つからなかった場合考えられる魔王の魔王な笑みと修行(私刑)を想像して到頭見つけ出した。



 細く、目視できるギリギリの太さでもって流れる線。



 全く意味をなさいないが、ただ繋げるだけなら確かにこの術式で十分ではあるのだろう…ただ、これやるとなに無駄遣いしている!などと魔王ならブチ切れるのだろうが。そうだ、魔王ならおそらく遠隔操作の命令文を加えて人を10人くらい介した上で操るだろう。


 一人一人が送る術式は意味をなさないが、全員分のが集まるとドカンとか…それで敵対していた魔王候補を忠実な側近諸共吹っ飛ばしたことがあるらしい。眉唾と思っていたが、おそらく事実。


 とまあ、無駄なことを考えて現実逃避しつつ現実に向き合う。



「やっぱりそうか…」



 テントへ入り、救護スペースへと向かう。


 テント内部は空間拡張の術式を含めているので外観と内部の広さは違うものとなっている。現時点で使っているこれは、外観はサーカス(小規模)のテントであるが内部は体育館2つ分くらいか?


 空間以外の術式及び添削は魔王作。ゆえに、名前は『魔王の秘密道具シリーズ』にしておいた…面倒ごとは全部魔王になすりつけるスタイル。


 どうもこう言ったテント?などは王族でも持っていないらしい(幽霊情報)。なので、ばれた時に魔王のものなら権力ふりかざして強奪しようとしないかなぁと少しばかり期待していたりしなかったり。


 …『魔王グルジオラス』のネームバリューがそれほどでもないことが悔やまれる。言うと怒るから言わないけど。



 さて、下手人…いや、してやられて下手人に仕立てられてしまったドラムレーン王国領所属エストレリータ商会元財務部長『ピエール・スピカ』。今助けてやるからな。


 いくつか候補があったがために今までわからなかったが相手がこうやって尻尾を自分から晒してくれたのだ。黙って見過ごすわけがない。



 私の素敵焼肉タイムを邪魔した罪は大きい。いつの時代も、食べ物の恨みとは、それはそれは恐ろしきものである。




 果たしてドワーフの鼓とライくんの腹の虫、どちらが凄まじい音を出すか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ