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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第2章 波乱な8歳前半の歩み(〇〇式英才教育基礎レベル実践編)
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64 無粋だが、謎解きは焼肉中で(その2)

 読者の皆様どうもこんばんは。


 それでは今週の不憫第二弾をどぞ!





 BBQの準備をしていると、テントの中から疲れた顔をしたギルマスが出てきた…多少老けたように見えたのはきっと幻視ではないのだろう。大方親父から事のあらましを聞いたか。


 まあ黙って決断したことは悪かったと思うが、敵のことを知るためなので多目に見て欲しいところである。それに、ギルマスとしても道中これ以上足止めされるのは疲れるだろうからいい機会のはずだ。


 でもとりあえずだ。



「ギルマス、そこの肉捌いておいて。特に魔道木菟はまだ完璧にできないからでよろしく。」



 立っている者は上司であれ、親子であれ、それこそ無機物有機物構わずこき使えというとてもありがたい御言葉がある。この言葉、実はもう我が家では常識もいいところである。


 どれくらい常識かというと、街中のチンピラは歩く財布(カモ)であるというくらいには。あるいは賭け事ではイカサマを咎めずやった相手はいろんな意味で折るべし、というほどには。


 ちなみにこの間これを堂々と怪談組に言ったら2パターンくらいに反応が別れた。平安口調な武士組はだいたい同意してくれた。逆に現代口調組には号泣された…外道が増えたと。もちろんお仕置きした。食事とかにちょこっと親父のやつを加えたり、魔王に配膳させたり。


 約1時間でわかってくれたとっても物分りの良い連中である。


 そんなわけで我が家の常識であるので、少なくともこの世界の常識だと思っていたのだが…まあいいや。



「!!?〜〜〜〜〜!!」



 なんか言っているが、あいにく私の聴力は今休暇満喫中(バカンス中)



「…まあいいや。もうなんか、いいよ……」



 諦めたようにため息をつくギルマス。そうそう、人生何事も諦めが肝心である。いつやるの、ではなく、いつ諦めるかが人生おもしろおかしく生きるための全ての鍵だ。



 例えばお金がないそこの君。そう、君だよ君。


 本屋で偶々買いたい本があったとしよう。ジャンルはまあ、ご想像に任せる…一応私は8歳なので18禁はやめておこう。


 その本を手に取り、いざ買おうと値札を見る。すると1円、そうだ、立ったの1円玉ぽっちりが足りなくて買えないことに気づく。君はきっとカバンの中をヒックリ返してまで最後の1円分を探すだろう。だが見つからない。


 絶望した君は本棚に本を戻し、友人が欲しいと言っていて本がふと目にはいる。ああ、この前布団をこっそり干していたあの友人だ(57話参照)


 本は思ったほど、値段は張らなかった。どころか結構安い。予算の約半分以下ほど。


 そこで君はこう思うだろう…



『あの本はこの本の見返りに友人に買わせればいいや。』



 などと。


 そうして君は妥協して本を買い、買いたかった本はとりあえず諦める。いいのだ別に、後日手に入るのだから。


 牡丹餅とは降ってくるのではない、降らせるものだ。偶然降ってくるなどものすごく低い確率なんてあてにしてはいけないのだ。気づいたら人生が終了なんてことになりかねない。だから棚そのものか所有者を直接ゆらせばいい。


 そう、そうやって諦めて妥協してこそ人生何事も円滑に進む。有名な某軍記物の有名な一説にもあるではないか。弱きものも強きものも淘汰されると。だが、妥協したものはしぶとく生き残るものである。


 結局諦められる人は不滅、ということである。


 この前それを切々とギルに語ったら頭大丈夫かとと心配された。だが、むしろそんなことも知らないのかと逆に私は驚愕した。思わず本気で心の底から心配になってしまった。主に弟の人生その後が。


 弟よ、それでは確かに実兄もさぞ心配することだろう。


 けど、もう大丈夫だ。


 魔王が扱…修行してくれればきっと今までの古い価値観は打ち壊してくれる。なんてったってあの魔王だ。


 鬼畜な所業と暗器のデパートで君を心身ともに絶望と希望の間へ追い詰めてくれるだろう。壁ドンならぬ技ドーンである。さらにさらにお星様になっても親父(外道様)が拾ってくれるというアフターケア(保険)までついてくる。


 今ならお得用で三途の川スキューバーダイビングコースwith鬼さん’sも半額だ。


 …ま、それでトパーズさんみたいな扉を開いたら全力で(ギルの)命を賭ける覚悟でつれ戻す必要があるが、そこは手加減してくれるだろうから大丈夫。ひどい悪夢と連続攻撃の数々できっとそんなところに開拓している暇なんてないだろう。


 なお、諦めたらそこで…えっとなんだっけ?人生終了?とか怖いこと暑苦しく叫んでいた幽霊がいたが、そんなことないから大丈夫。安心して。もしそれが本当ならたった1日で全人類がログアウトしているから。生命体どころか原子もきっと存在してないから。


 何より人生を途中退出した経験者が語るのだから信憑性は十分だろう?



閑話休題。(話を戻すとして)



 ギルマスは肩を落としてそのまま肉を捌き食べやすいサイズに切りわける作業に入ってくれた。今回のBBQは人が多いので、今まで死蔵されていた魔物の下今まで大放出大会である。それも、使う魔物はどれも解体が難しい一級品をわざわざ選んだ。


 …あくまで被害者たちとここまで旅した自分たちをねぎらうためである。べ、別に女装させようとした件でギルマスへ嫌がらせするつもりで出したけわけではない…筈?きっと私が今日、偶然、気分的に食べたいと思ったからだ。


 影を背負いながら解体作業を始めたギルマスへ、そっと寄り添うのは妻のレミィリアさん…人妻、なんだよな。中二病だけど。


 そして2人は良い雰囲気を周囲へと醸し出しながら作業をしだした。くそゥ、リア充なんてみんな爆発すればいいのに(血涙)



「ところでわしらはなんか手伝うことあるか?」



 ドワーフ棟梁っぽい人が話しかけてきたので、とりあえず日を起こしておいてもらうことにした。本当は自分で全部できることだがこれから少しだけ仕込み(・・・)作業があるので時間稼ぎしたい。そういう点では渡りに船だった。


 好々爺然としたドワーフは老獪に、だが相変わらず穏やかに笑う。おそらくこちらの思惑全てを把握しておらずとも、何かしら必要があって動いていることを察しているのだろう。そういうのって本当に助かります。


 それを抜きにしても鍛冶などで火と相性の良いドワーフの起こす炭火には興味があったので楽しみである…特に彼らの主食である(ただ)肉(を焼いて塩をかける)料理において、肉を美味しくするためにその肉の状態や種類、その日の気候などに応じて非常に細かい調整を行うと聞く。いったいどんな方法でそれを行っているのか。鍵は火起こしにあるということだけは知っているが、非常に興味深い。



 彼らの作業準備の横で、5台目のBBQセットを組み立て出した。さて、時は金なり。もう夕方からだいぶ経つ…正直滅茶苦茶お腹は空いている。何せ、8歳。成長期でとにかく胃袋が∞ではないのかと思われるような時期である。


(※正確には男性は11歳前後から成長期です)


 正直、間食用の自家製ジャーキーなどを親父にバレないようにこっそりかつちょこちょこ移動時齧っていたが、それだけでは間に合うはずもなかった。1日の運動量や筋肉量保持に消費されるエネルギーの合計を考えれば足りないのは無理はとは思う。



 親父と魔王の手以外だったら猫の手でも借りたいくらいに今は夕飯作成を急がねばならない。特に、明日の出発時間が早いのでなるべく夜は早めに就寝する必要もある。消化してから睡眠に入るのは常識なので、当然そのためには最低でも食後2時間は空けなければならない。


 それプラス、犯人への対応もあるのだから睡眠時間がちょっとでも確保できたらいいなぁと強く思っている。というより確保できないとわかればきっと犯人へ優しくはできない…文字通りお仕置きしちゃうかもしれない。



 この間にも、焼肉用のタレを作る手は止めない。


 本日は塩レモンとニンニク生姜卵黄、柚子ポン酢おろし、特製野菜ソース…本当はこのラインナップに味噌と醤油が入れば完璧な布陣となるのだが、残念ながら今回は見送る。いずれ加えるつもりだ。


 グフ、麹を早急に探さねば…日本人の記憶が叫ぶ、私を味噌と醤油が呼んでいると。



 ここで、うちっさいおっさんの騒がしく親方を呼ぶ声が聞こえたので目をやる。すると、どうやら木材をセットしたということがわかった。ついでにBBQセット全10台分において、各台で別々の種類の肉を焼くそうだ。


 そのためにだけ木材の種類を使い分けしているのだから、彼らの肉への執念には脱帽ものだ。同じ、元とつくも食文化を異様にこだわる民族のでなので、どこか親近感が湧いた。



「ではやるかの、離れておけ。」



 おっさんたちは、BBQセットから十分に距離をとった。それに従い私も少しだけ作業台とともに下がっておいた。


 ホヒト族の若者(全員幼く見えるので年齢不詳)?が最後に離れていくのを確認すると、どこからともなく絨毯を取り出して円形に並べたBBQセットのちょうど中央にあたる部分へ敷いた。そして、なぜか絨毯に座らずその横に正座するように座った。


 遠目からだが、あの絨毯には魔術式が組み込まれているのがわかった…素材から魔術スクロールと同じような波長を感じる。色は赤く、おそらく金糸と一部黒白の糸、それと緑の糸を使っていた。だが成金趣味になっていない上品な美しさがあった。



「〜〜〜〜〜♪」



 ボッ、ボッ、ボッ、ボッ、ボッ、…



 棟梁の歌に合わせて絨毯から炎が次々と上がった。赤、白、黄、緑、青、そして紫…挙句に透明や黒な炎まであった。


 金属による炎色反応で炎の色が変わることは知っていたが、これはまた違う要因で火の色が変わっていることはわかる。なんせ、記憶にある色とはまったく違う色を呈しているので。青はどちらかといえば藍色、緑は濃い絵の具みたいな色で、紫はピンクに近い。挙句、スタンダードっぽいはずの赤、白、黄も赤茶色、乳白色、卵色だが、その原因は何かわからない。


 なお、わからないのはドワーフ棟梁の歌の歌詞も同様であった。



ライくんの格言『人生とは、諦めである』


 なお、彼はのちに魔王や親父の理不尽かつデタラメな存在との模擬戦を例に出して全員納得させたそうです。あの二人を引き合いに出されたらそりゃあもう、納得するしかなかったとか。

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