57 ねえ、いい加減出発しないと日が暮れるよ。
読者の皆様どうもこんばんは。ブックマークありがとうございます!また行間申し訳ないですが後日直します。
それでは皆様今週の不憫第一弾をどぞ!
阿○さん改め怪談『青ツナギ』に埋められたギルマスをとりあえず掘り起こし、エリスさんに埋められ蹴られて喜んでいたトパーズさんをエリスさんに蹴り出してもらった。往復ビンタで2人とも正気に戻った所で合流したおっさんの呆れた表情にようやく気がついたようであった。
「…お前がまさかそんなしょうもない理由で埋まっていたとは思わなかったぞ!」
見損なったと言わんばかりにフンと鼻を鳴らしたおっさん。どうやら互いに旧知の仲らしい。それも、ギルマスがオネエ口調になる前からだろう。
なんせ、あのオカマ口調とどぎつい化粧に慣れないと愚痴をこぼしていたからな…ついでに私が女装させられかけたことを話したら頭を撫でられた。そら辛かったなと。
めっちゃ遠い目をしながら…
なんだろう。この世界の貴族の男は全員幼少期女性から女装を強要され変態から狙われるのだろうか?あれか、子供の頃は女性の方が男より強いから逆らえない的な何かか?男は黙って女装に耐えろと。
だとしたら、すごく嫌なのだが…
なお、同様に過去被害に遭ったらしい親父はいじけて膝を抱えたまま地面にゴハンという文字を何度も書いていた。どうやらクソ不味い冒険者飯は勘弁して欲しいようだ。
「いやいや、一応ギルマスなのにギルメンから雑な扱いされている方が問題だと思うが…」
さて。この発言を聞いてすぐ、ジト目をしてギルマスを眺めているのは果たして私1人だろうか。
周りを見ると、全員ジト目どころかこめかみあたりに青筋を立ててピクピクしていた。さらに背後にはゴゴゴゴゴォと音を立てて暗雲が立ち上っていた…あれか、溜まりに溜まった怒りとかやり場のない悔しさとか日頃の鬱憤とかそういうのが全部凝集されて魔力とともに具現化しちゃった感じか。おぉう、エリスさんに至っては稲妻まで見られる。
ギルマスは一瞬えっと静止したが、周囲を見て真っ青になって汗を全身に浮かべていた…地面にまで滴っているのでよっぽど焦ったのだろう。そしてぼそりと俺なんかやっちゃった?と、火に油どころかガソリ…ニトログリセリンや硝酸アンモニウム(もしくはピクリン酸でも可)をぶち込んだような発言をしてしまった。
もう、超新星爆発する未来しか見えねぇ…庇う気もないが、凹殴りなフクロにされる姿が見えた気がした。だがそれはすぐに払拭された。
ブチリ…そんな不穏な音が聞こえて。
そうして音の発生源はどこか瞬時に探ろうそする。なんせ、巻き込まれたらたまったものではない。確実に恐ろしいことが待っている。私これでも8歳なので保身に走るのは仕方がない、まだまだ自分が大事なお子ちゃまですしおすし。
だが、次の瞬間聞こえた穏やか過ぎる笑い声が響いてそれどころではなくなった。
「フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ…」
「!「「「!?」」」」
ミシミシと音がなるほど強くギルマスの肩を掴んだ手。薬草と思しき緑の残る爪のついた指と、それを守るように存在する革製の指貫グローブ。中二病らしく魔術式が中央に刻まれているが、それは実用性もありそうだと術式から判断できた。
指から先を見上げると、顔を俯かせてギルマスの肩に手をめり込ませた長髪美女が一人。なお、顔は影になっていて見えない。
それは、予想外なことにレミィリアさんだった。普段はギルマスのバカらしい言動にそれほど目くじらを立てたことのない。中二病だけど。大事だからもう一度言うが、いい歳した中二病患…なんでもないです。ハイ。
ギルマスは振り返って見えた彼女の顔に思わず固まっていた。いや、固まったのはギルマスだけではなかった。
私たちも思わず、いや、何も思う間もなく固まっていた。
「ねえ、さっきこんなもの見つけたのだけど、これって一体何かしら。」
「…な、何をみ、見つけたって?」
元から整った顔立ちをした端正な正統派美人のレミィリアさん。
普段の不敵な笑い方は正直似合わず穏やかな笑みを浮かべていた方がきっと似合う。そんな風にギルドではよく言われていた。かくいう私もそれに同意していた1人である。
だが、それが完全な間違いであることにこの場で気づくこととなった。
綺麗すぎる微笑みは美しく…そして恐ろしい、と。
さて、皆さん幼少期に人形を抱えて寝ていたことはあっただろうか?もしかしたら現在も人形を愛でて一緒に寝たりしている寂しい男もいるかもしれない。あるいは汚してはいけないと棚に飾ってたまに下から眺めてはムフフと笑う男が。
…別に個人の趣味は否定も肯定もしない。フィギュアとか精巧な出来のものは確かに凄いしあれもあれで一種の芸術品である。実際、あれらはおそらく2000年経たずして保存状態が良ければ未来の博物館に古代日本人の愛でていた偶像?として飾られ専門家によって当時の宗教が〜、これは〇〇派の〜などと語られることになるのだろうと容易に予想がつく。
未来人が古代人の崇めたのは某ブ○ダ教やア○○ハム3大教などではなくアニメ教やマンガ教であり、また聖地も秋葉原や高田馬場や境港(鳥取県の某国民的アニメ妖怪ロード)。そんな認識になるのではなかろうかと愚考する。
(※個人の意見であり、筆者の意見ではありません。)
まあそれはそうとして、個人的にこけし人形に関しては集めるのはどうなのかと思ったりする。確かに形は可愛いしバリエーション豊富だが、由来を知っているのでとてもではないが恐ろしいことをするものだと常々思う。
と、まあ完全に脱線どころか最終的に瞑想ならぬ迷走していたので話を戻すとして…
人形、ぬいぐるみではなく人の形をしたものを寝床近辺に置いておいた幼少期、ふともよおして目をさますと真っ暗闇で目と目が合う瞬間。特に都内在住なら夜は比較的明るいので外の街灯とかで虚ろな目がキラリとさぞ綺麗に写し出されることだろう。
西洋・東洋問わず、私はわざわざ子供用の人形で醜く作ったものを聞いたことも見たこともない。逆に、常々整いすぎていると感じるほどだ。特に西洋組。
だから、夜の闇に慣れた寝起きの目でそんな人形と目があって仕舞えば…
仮にこれを読む君の周囲で翌日こそこそと布団を干している君自身や君の友人を見つけたとしよう。そんな場面に立ち会ったらとりあえずそっと見ていなかったことにしてあげよう。
そして干し終えてふっと息を吐いた直後に堂々背後から声をかければきっと相手は泣いて喜んでくれることだろう。
これをやれば、間違いなくその友人も自身の趣味のために借りた君の金とか金とか色々返してくれるだろう。利子付きで。
さて、結局私は何を言いたくてこんな話をしたのだったか…ああそうだった、だからこそ綺麗すぎる微笑みは美しく…そして恐ろしいといいたいのだった。
レミィリアさんは青を通り越して土気色になったギルマスをニコニコと穏やかに不穏に笑みを浮かべてこう言い放った。
「あらあら、しらばっくれてはダメよ?」
脱色するギルマス。
「もちろん説明、いただけるのでしょう?」
返事はない、既に白く燃え尽きたギルマス。相変わらずニコニコ穏や(以下略)
「あらあらあら?この場に及んでごまかせると思っていたのね〜うふふふふ。」
そうしてそのままの状態でレミィリアさんは顔だけこちらに向けた。
「ちょっと…そうね、1時間だけこのヒトとお話ししてきますね、すぐ済むのでちょっとだけ待っていてくださいませんか♪」
『「どうぞどうぞ!」』
語尾に音符の見えそうな声で我々に向けてかけた声とは裏腹に、止めたらわかっているんだろうなアァ?と、すごむような雰囲気があった。もちろん満場一致でギルマスを売ることにした。示し合わせたわけでもないのにタイミングも一緒。全員クズらしく、安心…いやその前にギルマスの自業自得だった。
正直ギルマスの何がバレたのかは不明だったが、レミィリアさんにとっては譲れない何かがそこにはあったのだろう。まるで隠れ賭博や隠れスイーツ食べを小遣いちょっと超えたのをごまかしてこっそりやっているのをカミさんに見つかってしまった世のお父さんみたいに連行されるギルマスを見てそんな風に思った。
そのきっちり1時間後、ギルマスは片言で『ゴメンナサイ』『モウシマセン』を呟いた状態で戻ってきた。やけにつやつやしたレミィリアさんとげっそりしたギルマスが印象的だった。
結論として、女性の逆鱗に触れないことは大事だと思った。
次回、やっと出発なるか…というかこのテンションでこいつら戦争止めるために誘拐…人を二人ほど回収しに行くらしですよ?




