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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第2章 波乱な8歳前半の歩み(〇〇式英才教育基礎レベル実践編)
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56 ※この間、門番などは森から伝わる謎の威圧?に混乱しておりました。

 読者の皆様どうもこんばんは。


 さて、それでは今週の不憫第二弾をどぞ!




 裏ギルドを出て別行動でもって街を出た後、門の外の森で待機していたレミィリアさんと合流した。彼女もギルマス同様冒険者らしい格好をしていた…ただ、2人とも素材はともかく3流冒険者程度に見えるよう調整しており、一見すると実力がわかならない状態になっていた。


 もちろん相応の実力を持っていればまあわかるだろう。むしろ、相手の実力が読める相手はこの2人を相当なことでも起こらない限りは手出ししないだろうとは思うが。


 親父と私が合流してしばらく、エリスさんとトパーズさんが合流した…同じく豪商人風の格好をして。雰囲気も、そしてよく見れば顔の特徴や目・髪の色、背の高さをはじめとする骨格(・・)まで変わっていた。


 なるほど、とそこで納得した…そういった特殊な能力があるから今回の任務に抜擢されたのだろうと。


 しかし変身能力……確かトルティニア連合王国の三ノ国にそんな一族がいたような気がした。まあでもその血をうっすら引いているだけで関係ないかもしれない。きっとそうだ、そのはずだ。


 …深入りしたら泥沼にはまりそうな気がするし、そういうことにしておこう。



「あとはあのおっさんか…」


「でもその前にライくん…フフフ」




 嫌な予感がして、咄嗟に飛び退く。すると私のいた場所にはエリスさんの放った縄がバチンと空を切った。チッという舌打ちが聞こえたが、冗談じゃない。


 思わずヒュンとする…どこが、とは聞いてくれるな。




「あなたも変装してもらうわ!」



 その声と同時に再び嫌な気配を感じた。全身からブワリと冷や汗が滲み出てきた。


 後ろを見ると、背後霊のように張り付いていたはずの親父はいなかった。すでに緊急退避、もとい私の影へと避難したらしい…相変わらずの危機察知能力だ、さすがは元貴族。死んでも腐っても白骨化しても幽霊になっても黒歴史さらに築いても、貴族なだけはある。


 …囮にしようと思ったのに。などと自分の父親に対して安定のクズっぷりを心の中で発揮しつつ、相変わらずピンチは変わらない。さてどうするかと頭を切り替え周囲へ視線をやる。


 四面謳歌、と言っていいだろう。


 振り返ると、なぜかニヨニヨしているギルマスがスカートを複数用意していた。小悪魔ゴスロリ調から清純系まで全種類揃っており、ギルマスがオネエ風を装う変態である前に◯リコンであることを疑ってしまった。


 そんなことを一瞬でも思っていたせいなのか、目が合うと同時にニタリと笑みを浮かべ。


 そして、オカマ口調で恐ろしいことをおっしゃる…



「ライくん?おネエさんの特殊な教育を受けない?」



 手をワキワキさせながらジリジリと近寄ってくるギルマス。思わず後ずさるととんでもない色をしたレース付きのフリフリワンピースをポケットから取り出してこちらへ掲げてきた。



「そうね、まずはこの空色のエプロンドレスに可愛らしいリボンついのヘッドドレス、それから…そうよ、下着もドロワーズに変えましょう?可愛らしいから全身コーデ私がしてあ♥げ♥る♥」




 ・・・・・・・


 ギャー



 思わず後ずさり、このギルマス(変態)の暴挙を止めてくれる希望のある人物たちへと目を向け…次の瞬間盛大に後悔した。


 レミィリアさん、そこで櫛とか鏡のセットなぜ出した。いや、私は絶対使わんからな。エリスさんもノリノリで化粧セットを出して、ついでに先ほど私へ放った捕獲用と思しき投げ縄をピシリとならして張っていた。


 危ないからそんなもの下ろしてというかトパーズさん貴方以外をいじめようとしているけどいいの?


 唯一パーティーでまとも()な男であるトパーズさんを見ると、目をそらされた挙句サムズアップされた。なになに、姐さんが女王様でいる姿なら相手が誰であっても興奮する…自分もついで狙われてみたいだと?


 あはははは、さすがは変態…畜生ゥ。



「逃げても無駄よ?」


「そうそう、大人しく捕まる。」


「年貢の納め時でしてよ?」



 いやいやいや、そんな迫られたら逃げるって。それに大人しく捕まってやる道理はないから!それと、年貢って…私これでも一応貴族長子で本来なら年貢収められる側だが?国民領民1人も収めてくれる相手はいないけどな、親父も含めて!


 …心の中で言っていて哀しくなっていた。



 と、今なそれどころではなかった。



 大柄なギルマス含めた3名の影が私の影に被る。全員目も口も三日月みたいにつり上がっており、それぞれが金棒を持ってこちらへ迫ってくる…その姿にちびりそうになりつつ、先ほどさらに三歩下がった。滅茶苦茶怖い。


 そこで大木に背中が当たり、背後が森であることを知る。


 …まずい、追い詰められた。



 そして視界の隅に映る青いツナギ。このタイミングで現れるとは…というか出没範囲は家ではなかったのだろうか?阿◯鬼は家から出られないのではないのか?


 ま、どのみち状況は変わらない。最悪だ。


 森に溶け込む青いツナギへ目を向ける。ギルマスたちは…気づいていないなこれは。


 ツナギの男はこちらの視線に気づいたのかクルリとこちらへ向く。そして白い歯を見せてサムズアップしながらあの妙な腰つきでこちらへブラブラと迫ってきた。ナニがとは、私はコメントしないったらしない。



 思考を巡るは後悔。


 嗚呼、やっぱりゴンザレスを連れてくるべきだった…こういう事態では、逃走用のあしがなければ積む。正に現在のように。後悔先に立たず。



 前方の(変態)に後方の(変態)…一方は私を女装させたいらしい漢、もう一方は私の尻を普段から執拗に狙ってくる漢。正直今から逃げ切れる自信はない。というか実質逃げるのは不可能。絶体絶命。崖っぷちの、貞操と黒歴史開拓の危機。


 だが、万事休すはまだ早い…まだ窮鼠猫を噛むが残っている。



 スー、ハー。よし、覚悟は決まった。



 斯くなる上は…












「おお、ここが集合場所か!って何があった?!」


「いや、気にしないでくれ…本当に、本気で……」


「お、おおう?」



 思わぬ援軍により、なんとか女装という黒歴史構築フラグを折った。だがその後、味方のはずの援軍に貞操を狙われるという…おっさんのおかげでなんとかなった。



「興が削がれた、帰る。」



 青いツナギ姿の背中が暗い森へ消え去る。こう、いつも自分から去るときなぜかっこよく去るのか…しかも、引っ掻き回してカオス形成したまま。


 やっぱりゴンさん出番ですよやっちゃって下さいセンセイ!が一番いい対応なのかもしれない。


 後に残されたのは凹られ埋まっている犬神◯なギルマスとそれを人差し指でどこぞをチョンチョンするレミィリアさん。それからエリスさんにピエロメイクされた挙句、埋められ足蹴にされて喜んでいるトパーズ(変態)であった。


 まともな奴は誰一人、私のそばにいないらしい…もう泣いていいだろうか?


 というかおうちかえりたい(切実)



〈おう、終わったな。よし〉



 親父が影から生えてきてため息を吐く。そしてやれやれと肩をすくめた。人の苦労も知らないで何を一体と少しイラっとしたが、顔を見てドン引きした。



「俺も現役時代(存命中)、特に幼少期は苦労したな…親戚の強い姐さんに連れられて、そのせいで◯リコンにストーキングされたり奴隷商に狙われたりとか……」



 遠い目をしており、哀愁が加齢臭と同時に冷たい空気へと漂っていた…思わず鼻水が出た。



「ライは俺の若い頃に似ているからな…」



 じゃあ年取ったら親父みたいになるのか…つまり、頑張ればちょいワル風の綺麗系イケメンになれるということか。けどそのせいで貞操の危機というわけであり、嬉しいような嬉しくないような。



「…まあ気をつけておく。」


「…そうしておけ、貞操奪われたくなかったら。」



 遠い目通り越して死んだ目をした親父。現役時代(存命中)実際にいろいろ奪われたかどうかはついでにノーコメントとしておく。


 さて。



「親父」


「…おう、なんだライ?」



 全身から冷や汗を流す親父。ブリキの人形みたいにギギギとこちらへ振り返って、そして真っ青になった。



「親父、しばらく食事は冒険者栄養バーと冒険者缶ジュースで十分だよね?」



 ピシリと固まった親父。


 今回は本気ですよ?許されると思っていたの?今一番上手く作れる満面の笑顔を作り、思った以上に平坦な声でそう伝えておいた。


 生贄にして逃げ出したことについてはもちろん容赦しません、悪い子にはお仕置きである。慌てて土下座する親父を無視して、さて今日は夕飯何作ろうかと思案する私。


 ああそうだ、今日は焼肉にしてやろう。


 そんで冒険者印の食事を1人寂しく摂っている親父の目の前で、うちはで存分にあおごうか。仕方ないよな?焼肉では煙でるから。それと、思い切り食べてやろう。


 そうだ、そうしよう。



「えっと…とりあえずどうすればいいんだこの状況?」



 混乱するおっさんは、結局ギルマスが正気に戻るまでそのまま放置されたのであった。




 なお、ギルマスはライくんをツインテ◯リススタイルにしようと企んでいた模様。正直着せるかどうするか迷いました…ライくん、きっと似合うだろうし。下手な美少女よりよっぽど傾国なれることでしょう。


ラインハルト:「だ、断固反対させてもらうからな!?」


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