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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第2章 波乱な8歳前半の歩み(〇〇式英才教育基礎レベル実践編)
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54 外道様の救済

 読者の皆様どうもこんばんは。ブックマークありがとうございます!


 さて、今話はシリアスっぽい回となっております。それでは本編をどぞ!




「…何が聞きたい?」



 いつになく真剣な親父の問いに、私は答えた。



「親父の死後、親父が見つけた一つの事実について。特にそれを対処した方法について…なるべく詳しく話して欲しい。」



 親父は、殺気や威圧を抑えると渋い顔でわかったと答えた。そして、ついてくるように言われた。



「この話も機密に含まれる…だから少し特殊な傍聴をさせてもらう。」



 どうも、魔王や他の幽霊をはじめとするうちの連中にも聞かせられる話ではないらしい。特に、私と契約関係にある魔王へは十分警戒しているとか。


 薄々勘付いではいたが、やはり親父は魔王を信じていないらしい。逆もまた然り。


 方や『悪辣』、『外道』と称されようとも貴族として貴族らしく模範でありながら領民の生活を守護し、身を尽くして国と王家へ忠義を尽くした者。生前は特に、魔人族・魔族との闘争で人族生存圏を守りきった実績もあるそうだ。


 方や異種族の中で突出した戦闘能力を持って産まれたがために簒奪と守備両方の意味で先陣を切って行っていた国の長。恵まれない地にて同族を食わせ守るためといえど、侵略行為を幾度となく繰り返してきたのは事実。


 たとえ互いに同じ戦場で争った仲ではなくとも、蟠りというのはどこかで残るのだと思う。そういう理由もあって信頼していないのではないかと私は推測する。


 残念ながら推測の域を出ない。なんせ、人外に育てられた私では到底理解できないことが多い。まして中身も日本という伝わる神話も国民の気質も割と外部へ寛容な民族だ。領土問題や国が舐められるなどの沽券にかかわること以外、そういった人種宗教絡みの争いみたいなものを理解するのは元から難しいところがあることは理解して欲しい。



 親父は森の中を進んで行く。


 音を立てず、されど人外らしく薄く輝いて闇より暗い道なき夜道を歩む。その光景に改めて親父は霊であり人ではないのだと認識しつつ、その背を追って行く。


 そうしてしばらく歩いていると、開けた場所に到達した。


 そこは以前親父が黄昏ていた場所とは違い、完全に何らかの事情で不毛となった土地であった。


 空は広く、よく晴れた夜空。普段は星々が埋め尽くす漆黒の空は今日に限って満月の独壇場らしく、堂々と輝いていた。月を儚い光優しい光などと表現する詩人たちには、是非一度この自己主張強すぎる月を一度見せてやりたい。


 冷たい風がオオオォォォォォと声を上げて砂埃を立て、遠くでは月に向かってなのか遠吠えが響いた。家で私を待つ炬燵と半纏がすごく恋しくなった。



 親父は荒地を少しだけ進むとコンコンと杖で何かを確かめるように地面へ突き立てた。そして納得したような顔をしたと同時にポケットから4色に輝く水晶を取り出した。何時ぞやに商人から買い取った商品だとぼんやり思った…確か結構な値段したはず。


 親父はいきなりそれを地面の四方に向かって投げた。途端にパリンと音を立てて割れた水晶。唖然とそれを見ていると、次に上空四方に向かって同じ様に投げた。それらを空中留まらせた状態で唱えだした。



〈…我が四方に客は在らず、我が天井には客は居らず、我が床下には客は入らず、我が言葉は秘極され候〉



 …珍しい、親父が久々人外の声で詠唱している。



 四方からはそれぞれの色が漏れ出て、それらが薄い立方体を作った。同時に地面に無残にも散らばっていた水晶の破片から芽が出る。それがニュルニュルと光の蔦を次々形成していった。


 蔦には葉が生えており、見た目はアイビーみたいだった。


 その蔦は数分もしないうち、あっという間に立派に成長した。茎が太く、弱かった光も強くなって輝いている。それらが次第に立方体を成している光の壁を囲むように被さっていった。


 最後に光る蓋が上から被さり、いつの間にか強い光を放つ大きな箱が出来上がっていた。



「さて、それでは中へ入るか。」



 こちらの質問を含んだ視線はことごとく無視し、扉を開くとあっさり入っていった。私もそれに続く。入った瞬間何かを追い出す音とともにカシャンと閉まった。


 中へ入ると、先ほどと変わらない風景が広がっていた。



「さて。もうそろそろ話す頃合いだと思っていたのだが、どこから話そうか「悪いが、急いでいるのでなるべく簡潔にお願い。」…まあ詳しくは今度話すか。」



 ならまあ始めるか。そう親父が呟いた。


 そこから語られた親父の話は確かに眉をひそめるようなことばかりだった。魔王にも、ましてや元配下にも聞かれたくはなのだろう。もしかしなくとも、私へも本当は語りたくなかったかもしれない。



「…農場…国民……魂…吸収…進化…そして不老不死、ね。確かにこれらは語れない事実だな。」



 親父亡き後暫くして親父のような王を諌められるほどの気骨ある貴族が段々と姿を消していった頃。貴族社会は力を失い、王宮へ権力が偏る、正に王族にとっての黄金時代。そんな時期を各国が迎えていた。


 そんな、中央集権時代のこと。


 ダンガローダ王国とかつて呼ばれた土地には賢王と名高い王がいた。その王は、だがしかし寿命には耐えられなかった。


 彼の息子娘には確かに普通程度に賢い者はいた。仮にこれが平穏な世の中だったら大丈夫、任せられるとすぐにでも隠居しただろう。


 だが不幸にも、すぐそこまで戦乱は迫ってきていた。


 同盟国が別の国と揉めた影響で物価が上がり、経済上の理由で侵略戦争をしなければならないかも知れない…状況はそこまで追い詰められていた。


 自分ならばともかく、今の息子娘には荷が思い。もっともっと長生きして自分がやらなければ。そうしなければ国民が食べていけなくなり息子娘たちも困ることになる。


 老体に鞭打ってまで働く本当に優しい王様だった。


 そんな思いから王様は、延命の手段を知っていると主張する胡散臭い詐欺師の連中を招いてしまったようだ。年をとって既に耄碌仕掛けていたのかもしれない。


 そして、彼らは王へこう主張したようだ…




『魂を喰らうのが延命の近道』






「いやいやいや、そんな馬鹿な冗談に騙されるわけないだろだって賢王って言っていたじゃ「それが冗談だと思わなかったんだよな、この王様」…いや、マジで?!」



 馬鹿なの死ぬのと言いたくなるが、既に死んていたことを思い出して続きを促した。



 王様はその戯言を本当だと信じ込み、彼らには不可能なので東の賢者を探すとよいという助言をもらった。彼らの望む通り褒美とそして財宝を与え、彼らは去っていった。


 王様は東の賢者と呼ばれる者を探すも、当然そんなものは存在せず見つからなかった。だが彼は諦めない…きっとあると信じて探し続けた。


 その結果、別のものを見つけてしまった。



「それが寄生型魔力結晶蟲…ミスティフコッカス。」



 捜索していた冒険者か兵士か今となっては不明だがある日意識不明となった者が帰還し、意識を戻した頃には人格が変わっていた。だが同時に致命傷を負っていたはずなのにあっさり治っていた。


 これに目をつけた王様は、彼を王宮へ招いたそうだ。



 そして、その日を境にして次々王宮に飾られた美しい結晶…中でも最も輝いていたとされるのは、王様だったのだろうか。今となっては不明だが。



「国の中枢から外れていたはずの私の領地だった場所で人が次々失踪してあっという間にいなくなる事件が起こった…それはね、ルイン王国がその難から逃れるためにもフォウスティウスを今は亡きダンガローダへ売ったんだよ、領民ごと。」



 親父が死した後、あの領地は長く王族が管理しており代理の者が担当していたという。親父は王族へ不信感を持っていたがためにいつも領民を、土地を心配で見守っていたそうだ。


 領民は重税や役人の不正に耐えてその地で暮らしていた。親父存命の時代家臣だった者たちの子孫も、そして家臣だったご老体もまだまだ存在し、皆必死に暮らしていた。


 その人々を攫いに来る寄生された人々。


 寄生している連中は意識があるらしい。人の体意識ごと乗っ取り、魂を記憶ともに喰らうようである。



「そんで、次々寄生される元部下やその家族に耐えかねて親父は皆殺しにしたのか…」


「ああ、おかげさまで悪霊に進化した。」



 さらっと言ってのける親父だが、結構とんでもない内容だったりするのだが…


 死者は生者へ手出ししてはならいという明確なルールはないものの、それをした途端にステータス上では悪霊となる。そしてバッドステータスが付いてくる他様々な呪いや制限を受けることになるという。例えば運の値がマイナスになるとか。


 親父も元はそういう存在だったらしい…今では全然違う存在となっているが。



「喰われかけていた連中も含めて一部はなんとか失わずに済んだんだが、ダンガローダに近い側の幾つかの集落は全滅した。」



 苦み走ったような顔で救えなかった、存在ごと食われて失われたと悔いる親父。手段については思うところがあるものの、存在ごと消滅し利用されるか自分のまま死ぬことになるか選ぶなら、圧倒的に後者のほうがマシかと思われる。


 特に、食われた存在は食われる前親しい間柄だった者まで巻き込もうとする傾向にあると聞いた後は特に…



「食らわれた連中を殺したところ、魂が既になくなっていたから確実だろう…なんせ、致命傷を負った瞬間肉体と魂が同時に溶けて無くなったのだから。」



 後に歴史書へ記されたのは、ダンガローダがフォウスティウスの民を拉致したがそこに住まう悪霊によって呪われてある日フォウスティウスごと消滅したという話であった。フォウスティウスの件はあながち間違いではない。


 だが、ダンガローダで発生した集団消滅事件はまた別だったと親父は話す。



「ダンガローダに関しては奴らのエサが尽きたのと、彼らに対抗する魂の質を持った連中が出たことだろう。」



 ダンガローダの集団失踪事件には、歴史書には記されなかったある事実がある。それは生き残った王族の話であった。


 王宮で最後まで食われることなくなんとか隠れていた王子が1人いたらしい。そいつが見つかり食われかけた。だが無事に生還した。


 どうも、寄生しようと中へ進入してきたものは弾かれくたばったそうだ。


 そのあとその死亡した寄生物へ他の寄生物が近寄って食ってはくたばるを繰り返したそうだ…死亡した寄生物が水晶に似た輝きを有していたらしく、勘違いしたらしい。そうしてその波は10年ほどかけてダンガローダへ広がっていった。


 ほとぼりが冷めたか視察に来た偵察隊が見つけたのは、誰もいない王宮で1人暮らす世捨て人みたいな人だったとか。



 なお、歴史書に出てこなかったのはその人物が殺されたからなのか養生のためにどこか田舎で暮らしたのかは知らない。ただ、そのあと旧ダンガローダ王国は領地をバラバラに裂かれた各国が取り込んだという結果しか残っていない。




 シリアス先生はライくんの親父さんによって駆逐されてしまった…親父さんはやっぱり見事、完全無欠な外道でした。


 G「いや、冤罪じゃねそれ?!」


 

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