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もし〇〇が仲間になったら(〇〇式異世界英才教育〜憎まれっ子よ、世に憚れ〜)  作者: 平泉彼方
第1章 7歳までの軌跡(〇〇式英才教育基礎編)
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48 ライくん、村を建てる。(その5)

 読者の皆様こんばんは。ブックマークありがとうございます。


 さてそれでは今週の不憫をどぞ!





 森の中を走りながら先ほどまで会議に出ていた若者たちの言動についてもう一度反芻していた。


 言葉の端々に感じられた傲慢さや普人族に対する侮蔑的な思考。他にも我々の恩人を侮っていることはしっかりと理解できていた。以前は。


 だがあの大規模魔術の後はどうであったか。


 さすがに実力差を感じ取ったのか認めたのか。とにかくもう逆らう気はないと、腹を見せんばかりの言動であった。同時にものすごく怯えていた…以前何か企んでいたのが露見した際と同様に。


 まああの様子だ、おそらくしていたのだろう…大方ラインハルト殿の築いてきたもの全てを分捕る気でいたとか。



「…再教育、だな。」



 一応一人前の許可を以前は出していたが、あれではダメだ。そんな性根していたら占いにせよ狩りにせよ戦闘にせよ、うまくはいくまい。せっかく素養があってもそれを生かしきれないようであれば半人前と言わざるをえない。


 愚かな連中だが、それでも一族の大事な子供達…今はまあ、可愛くない生意気な若造といえるが。



「まあいい。」



 だがそれとこれは別、俺の方できちんと落とし前つけんといかん。特にこれからお世話になる上司あたる人へあれほど無礼な振る舞いをしをしてしまった後だ。


 せっかくあの短時間で住みやすく長持ちする良物件を多量に作ってくれたというのに…自分の行動を振り返ると情けなくなった。



 どのような罰でも受けよう。それが己のできることだ。



 そう覚悟をして、今度は岩に掛かったはしごを上って行った…いや、正確にははしごをつかんだ瞬間足元に透明な板が現れたと思ったらそのまま昇って行った。


 …先ほど反省したばかりだというのに、しばし呆然としてしまったのはある意味仕方がないかもしれない。



「空を、飛んでいる…だ、と!?」



 我々は翼を持たない。まして、魔術式も空に属するものは普通扱うことはできない。だというのに…


 うっかり下を見て、全身の毛が逆立った。このまま落下したらおそらくぺしゃんこになる。いや、原型さえも止めないかもしれない。そのことへ恐ろしくなった。


 だがそんな懸念をよそに、絶壁の上方に存在するラインハルト殿の家へと到着した。



「これは、また…」



 そこにあったのは、巨大な館…いや、大規模な貴族屋敷だと言われても納得できない大きさであった。ラインハルト殿は自宅とか家と言う言葉を使われていたが、これは果たして家と呼べるかどうか…まあ本人からしてみれば家だろうが。


 とりあえず、これだけははっきりと言える。



 巨大な洞窟に佇むは、岩の巨城そのものだった。



 中央の立派な城に背後に聳える2つの塔。よく見れば、すべて一枚の岩から掘られたことがわかった。おそらく材料を持ち込んで建造したのではなく、この巨大な崖を形成する岩より一から掘り出したのだろう。


 造り自体はこの世界で見たことのないようなものであり、中央は何層にも建物が連なっているような建造物となっていた。そして塔は、驚いたことに綺麗な円柱形をなしていた。



「一体どうやって…」



 だが最も驚くべきことはこの屋敷改め城には窓が存在することだろう。それも、すべて正確な形と場所に設置されている透明な質の窓が。


 確かステンドガラスなるものを教会や一部の王宮は保有していると聞くが、それ以外は聞いたことがない。ただ、知っていることとしては、あれらは非常に扱いが難しく割れやすい割に値段が高いことであった。


 同時に、景観が非常に美しくなるということ。


 そのことに対して、普通なら所詮は金持ちの道楽と思うだろう。実際道楽以外の何物でもない。だが…



「経済状態や綺麗な状態を保持できると対外的にも見せて彼の持つ権威をはっきりと見せつけることができる…だが、」



 ここでそれをしても意味がないはずなのだが。確か家には信頼できない人間は誰も入れたくないし近づけないと言っていたはず。だからこそあの奴隷となった者を修行という名目で連れてこなかった。


 …まあいい、あまりお待たせするわけにもいかない。そうださっさと入らねば。



 玄関と思しき門のそばへと歩いて行き、首のない不思議と威圧的な格好をした門番に通されて中へと入った。




◆□◆◇◆□◆◇◆□◆◇◆□◆




 玄関は、広々としていたがある一定の場所からは段差があった。そこまでは綺麗な色目をした大理石のタイルが敷かれており、なんだか自分の汚れた靴でそこを通るのは躊躇われた。


 そうしておろおろしていると、いらっしゃいませお待ちしておりましたと声がかかった。


 見上げると、そこには凛とした女性が1人。仕立ての良い上品な給仕服、筋の通った綺麗な姿勢、きっちりと結われた髪に透けた足元…足のとが透けている?!


 驚いて瞬きをしている間になにやら靴らしきものを段の上へ置いた。それは珍妙にもかかとを入れる場所がなく、足先だけが入る靴であった。彼女は足を入れる方向をこちらへに向けて置いた。



「旦那様のご意向により、こちらの館では外履きをこちらで脱いでいただきこの室内履きへと変えていただくことになっております。ご了承ください。」



 その言葉に自分の靴を見て納得する…なるほど確かに汚い靴で先に見える絨毯を歩けばたちまち汚れてしまうだろうと。おそらくあれらも値打ち物だろう。


 そこではたと気づくのは、この城がずいぶんと明るいこと。


 確か崖中腹やや上あたりを掘って作っているこの城、当然その構造上の問題で太陽光が時間によって入ってくるはずがない。なのに、これほど明るい。


 不審に思い、よくよく光のある方向を見てみるとそこには光る球体がいくつも並んでいた。それも、規則正しく。



「…まさか魔石、か……」



 思わずつぶやいてしまい、挙句目の前に人を待たせているのをついうっかり忘れていた。慌てて謝罪して靴を脱いでからうち履きなるものを履いた。


 そして再びあまりの心地よさに固まってしまった。



 そして硬直が解けた直後、見ると靴がすでに視界から消えていた。どうやら先ほどとは違う給仕がどこかへ仕舞ったらしい。同時に大理石の上にあったはずの靴跡はなくなっていた。


 …この時点ですでに驚きすぎて疲れていた。


 だがそれらは所詮、それよりさらに驚くことになる前途戦に過ぎなかった。そう、この時点だはおそらくまだまだラインハルト殿のことを田舎の小僧とまではいかないが所詮子供であると心のどこかで侮っていたのだろうと思う。


 まず、廊下を歩いている最中にこの城が本当に異常であると思い知らされた。



「壁が白い…それにこの絵画と花瓶なのかこれは、これらは一体どこの作だ?」



 給仕の女性は困った顔を一瞬した後、旦那様の趣味に御座いますれば我々には不明なことが多く申し訳ありませんがお答えできませんと返答した。


 こちらこそ困らせる気は無かったのだが…どうやら廊下一つでもこの城は妥協しないようだ。




 なお、真相としては集団食中毒事件のあおりで家を一気に浄化した結果純白になっていただけであった。どうも、それまで壁紙として使われていたもの自体が劣化していたため浄化する対象になっていたらしい。


 景観があまりに寂しかったので、勝手に旧い瀬戸物の茶碗もどきや長谷川等伯の墨汁画もどきを適当に設置した。復活した親父に配置やら何やらさせて、絶妙な侘び寂び空気を出すことにしたのだった。


 また、なぜ西洋屋敷で西洋式の生活を送っていたはずのギリアム(親父)がなぜ侘び寂びを理解できたのかは謎。だが、その素地となった事実は存在した。


 ギリアム氏本人は、元から地味で威厳に満ちた緊張感ある色調の高級家具を好むようである。その上で配置によって癒しの空間を作ることが生前の趣味の一つとしていたとか。見せる相手も掃除をする使用人と自分くらいだったのに…所詮は友達や恋人のいない非リア充だった。



 閑話休題。



 長い廊下を進んでいくと、巨大な扉の前に着いた。


 黒檀製の扉は威厳に満ちており、(オーガ)を芸術品にしたような顔がドアリングを咥えていた。そのドアリングからは魔が微弱ながら感知できるので、何かしらのマジックアイテムか魔金属を使っているか。あるいは両方か。


 本来ならそれらを前にいろんな意味で緊張し覚悟するはずだったのだが…



「これは随分と…」



 使用人女性はなぜかこめかみを押さえて私たちの仕事がまた取られたと落ち込んでいた。


 俺は、いつの間にか匂いに釣れられて尻尾が勝手にパタパタ動いていた…だが仕方がないと思う。



「いい香りだ…」



 甘い菓子の焼かれる香りなど、幼少まだ我が部族が森に住んでおり母さんが生きていた頃だった。あの日は6つの誕生日を迎えられたということで特別なパイを焼いてもらった。


 ふと、そのパイの味を思い出してよだれが垂れかける。


 そして顔を上げると、復活したらしい給仕の女性と目があってしまった。なんとなく気まずくなって目をそらすと、相手もまたそらしていた。



「先ほどは失礼いたしました…内部で旦那様がお待ちです。」



 そうして扉を開くと、お菓子の国が広がっていた。


 ショコラートと呼ばれる高価な菓子の芳香に始まり、クックベリーパイの焼きたての香ばしく匂い、極彩の新鮮な果実とクリームの繊細な香り、惣菜系と思しきキッシュなどの塩味のきいた香り。そしてそれらをうまい具合に高級そうな紅茶の香りが引き締めていた。


 盛り付けをしているのは驚いたことに、ラインハルト殿。



「旦那様、ディエゴ様がご到着です。」


「ああご苦労さん、このクッキー差し入れだから皆さんにあげといてね。それと…」



 そうして器具を一瞬全ておくと同時に俺の背後へと回って何かを掴んだ…見ると、そこには見知った黒い毛があった。



「無断で来るのは感心しないが、若干手薄となっているといえ結界をディエゴさんに気付かれずに通過できた点については賞賛しておく。


 さて、私に何の用だ?」



 …どうやら、我が一族の者がやらかしてしまったらしい。そしてそれを俺が見逃していた……これはまずいな。

 謝ろうとすると、手で制された。


 これはいよいよもって………そう思っていたのだが、さらに馬鹿者が予想外なことを言ってくれた。




「俺がここにきたのは自ら強き者へ挑みたいがため。代償はこの身一つ、どうか勝負をしてくれないだろうか。」




 なお、ディエゴさんはカジノのあたりで前述した通り渋めの凶悪面しています。なのに甘いお菓子とか幼少期のこともあって大好きな模様。今までは威厳あるボスを続けなけれならず隠れ食べしていたとか。そしてそれが数名の部下にバレていて生暖かい目で見守られていたことに本人だけ気づいていないとか。


 なんとなく魔王と意気投合しそう…いや、その前に菓子争奪戦になる可能性も。スイーツバイキングの帝王を賭けたライバル関係とかありそうですね。



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